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Ryzen 7 8840HSのベンチマーク
ここでは、AMD Ryzen 8040シリーズプロセッサーの1つの「Ryzen 7 8840HS」の各種ベンチマークスコアを掲載します。
一般向けノートPCに搭載されるプロセッサーですが、CPU性能および内蔵グラフィック性能が高く、品質がやや高めのノートPCに搭載されることが多いです。なお、今回、ゲームのフレームレートの測定は、AFMFを含めたHYPR-RXを有効にした場合も計測しています。
プロセッサーの仕様
AMD Ryzen 8040シリーズプロセッサーをTDP毎に分けると、下表のようになります。いずれもCPUはZen4世代、GPUはRDNA 3世代、NPUはXDNA世代のアーキテクチャが採用されています。
今回検証するRyzen 7 8840HSは、プロセッサー名の末尾に「HS」が付き、デフォルトTDPは28Wで、NPUを搭載しており、下表の3つの中では中間の性能です。
デフォルトTDP | cTDP | NPU | |
Ryzen 8045シリーズ(末尾HS) | 45W | 35-54W | ○ |
Ryzen 8040シリーズ(末尾HS) | 28W | 20-30W | ○ |
Ryzen 8040シリーズ(末尾U) | 28W | 15-30W | ○ / × |
Ryzen 8040シリーズ(末尾HS)のプロセッサーは、記事執筆時点では2つありますが、今回テストするRyzen 7 8840HSは上位のプロセッサーで、コア数は8、内蔵グラフィックスにはRadeon 780Mを搭載し、デフォルトTDP以外は、上位のRyzen 8045シリーズのRyzen 7 8845HSとほぼ一緒です。
Ryzen 7 8840HS | Ryzen 5 8640HS | |
コア / スレッド数 | 8 / 16 | 6 / 12 |
最大クロック | 5.1GHz | 4.9GHz |
デフォルトTDP | 28W | 28W |
cTDP | 20-30W | 20-30W |
グラフィックス・モデル | Radeon 780M | Radeon 760M |
グラフィックス周波数 | 2700 MHz | 2600 MHz |
GPUコア数 | 12 | 8 |
ベンチマークの計測に利用したノートPC
今回、ベンチマークに使用したノートPCは、次の機種です。
このノートPCに、CPU使用率が100%になる高い負荷をかけたときのCPU電力は、次の図の通りです。なお、高いパフォーマンスが出る「パフォーマンス」モードの設定で計測しています。
デフォルトTDPが28Wのプロセッサーですが、初動のブースト時を除くと、CPU電力は約34Wとやや高めの数値で推移しています。そのため、他のノートPCだと、今回の結果ほどいい結果にはならないかもしれないので、ご了承下さい。
以下、各種計測結果を掲載していますが、棒グラフについて、Ryzen 7 8840HSのスコアは緑色にしています。また、インテルの競合CPUとなるCore Ultra 7 155Hと、上位のAMDプロセッサーのRyzen 7 8845HSのスコアをオレンジ色にしています。
CPU関連のベンチマークスコア
まずはCPU関連のベンチマークソフトのスコアと他のプロセッサーと比較したグラフを掲載します。
CINEBENCH R23
まず、定番のCINEBENCH R23のスコアを掲載します。
Ryzen 7 8840HSのマルチコアのスコアは、上位のRyzen 7 8845HSより20%程低いものの、Core Ultra 7 155Hとほぼ同等でした。一般的なノートPCに採用されるプロセッサーとしては、かなり高いスコアです。
シングルコアのスコアに関しては、Core Ultra 7 155Hよりは低いものの、Ryzen 7 8845HSとほぼ同等でした。
CINEBENCH 2024
次に、CINEBENCH 2024のスコアを下に掲載しますが、こちらもCINEBENCH R23 と似たような傾向です。
Geekbench 6
続いて、Geekbench 6のスコアを掲載します。先のCINEBENCHは、処理を開始してから10分経過後にスコアを計測するのに対し、Geekbenchはすぐにスコアを計測し始めるので、最初のブースト時のCPU電力が高めのプロセッサーのほうがスコアが出やすくなっています。
Ryzen 7 8840HSは、マルチコアのスコアはRyzen 7 8845HSよりもやや抑えられていますが、シングルコアのスコアはRyzen 7 8845HSとほぼ同等でした。
グラフィックス関連のベンチマークスコア
次はグラフィックス関連のベンチマークスコアを掲載します。
なお、グラフィックス性能はメインメモリの速度にも影響され、メモリの帯域が広いとグラフィックス性能も高くなります。今回のPCに搭載されていたメモリは、LPDDR5X-6400で十分な帯域があります。
3DMark Night Raid
3DMark Night Raidのスコアは以下の通りです。「グラフィックスのスコア」の部分が、グラフィック性能を評価する指標となります。
Ryzen 7 8840HSには、内蔵グラフィックスに「Radeon 780M」を搭載していますが、Core Ultra 7 155HやRyzen 7 8845HSとほぼ同じスコアでした。CPU内蔵グラフィックスとしては非常に高いスコアです。
~ グラフィックス性能の評価 ~
ゲーミング性能
以下、ゲームをしたときのフレームレートを掲載します。比較的軽めのゲームを選んで検証しています。
今回、テストに用いたPCの画面比が16:10だったので、解像度は1920x1080ではなく1920x1200で計測しています。また、CPU内蔵グラフィックスでゲームをする場合、数分経つとフレームレートが大きく落ちるケースがあるので、10分くらい普通にゲームをしたりベンチを回したりした後、実際にフレームレートを計測しています。
また、今回、「HYPR-RX」モードと「画質」モードで計測しています。このモードはAMD Software : Adrenalin Editionのソフトから変更することが可能です。
「HYPR-RX」モードでは、Radeon Super Resolution(RSR)の設定は1280x800から1920x1200へアップスケーリングし、AMD Fluid Motion Frames(AFMF)を有効にしています(下表参照)。
AFMFとは、フレーム生成技術のことで、DLSS 3などのフレーム生成機能とは異なり、 ゲーム側が対応していなくても利用できるのが大きなメリットです。ただし、DirectX 11やDirectX 12で動くゲームであることと、フルスクリーンで実行していることなどの制限があります。また、レイテンシ(遅延)が増大するのと、ApexでAFMFを使ったらBANされた人がいることから、競技性の高いゲームでの使用には向いていません。
ファイナルファンタジー 14 暁月のフィナーレ
「ファイナルファンタジー 14 暁月のフィナーレ」のベンチマークのスコアは下の通りです。
今回、標準品質で平均フレームレートを計測しましたが、「画質」モードの場合は51 fpsで、Core Ultra 7 155Hより低いスコアでした。
ただし、「HYPR-RX」モードにすることで、平均フレームレートが2倍以上に上がり、GeForce GTX 1650とほぼ同じスコアが出ていました。
ファイナルファンタジー 14 暁月のフィナーレ
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解像度 | 品質 | 「画質」モード | 「HYPR-RX」モード |
1920x1200 | 標準品質(ノートPC) | 51 fps | 115 fps |
ファイナルファンタジー 14 黄金のレガシー
記事が完成したと思ったら、「ファイナルファンタジー 14 黄金のレガシー」のベンチマークソフトが公開されたので、急遽計測しました。
暁月のフィナーレに比べると大分重くなっていて、「HYPR-RX」モードにしても49 fpsしか出ませんでした。
ファイナルファンタジー 14 黄金のレガシー
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解像度 | 品質 | 「画質」モード | 「HYPR-RX」モード |
1920x1200 | 標準品質(ノートPC) | 37 fps (5240) |
49 fps (6813) |
黄金のレガシーでは、AMD FSRが使えるので、RSRは無効にし、ベンチマークソフトのAMD FSRの設定内容を変更して、平均フレームレートを計測したものが下の通りです。これでも、60 fpsを上回ることはできませんでした。
3Dグラフィックス 解像度スケール |
適用するフレームレート のしきい値 |
平均 fps |
100% | 常に適用 | 38 fps (5339) |
66% | 常に適用 | 50 fps (6842) |
原神
原神は、「画質」モードでも、低または中のグラフィック設定で十分なフレームレートが出ています。
なお、原神はディスプレイ本来の解像度(今回は1920x1200)でしかフルスクリーンにできないので、RSRが使えません。また、AFMFも使えませんでした。そのため、「HYPR-RX」モードにしても、フレームレートはほとんど伸びませんでした。
原神
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解像度 | グラフィック品質 | 「画質」モード | 「HYPR-RX」モード |
1920x1200 | 最低 | 60 fps(上限) | 60 fps(上限) |
低 | 60 fps(上限) | 60 fps(上限) | |
中 | 57 fps | 60 fps(上限) | |
高 | 52 fps | 53 fps |
ARK: Survival Evolved
ARK: Survival Evolvedは、「画質」モードでも低設定なら92 fpsの高い平均フレームレートが出ていました。中設定に上げても60 fps出ていました。低設定だと画質があまり良くなので、できれば中設定でプレイしたいところです。
「HYPR-RX」モードにするとさらにフレームレートが伸びて快適になります。ただ、高設定だと60 fpsを切りました。
ARK: Survival Evolved
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解像度 | 品質 | 「画質」モード | 「HYPR-RX」モード |
1920x1200 | 低設定 | 92 fps | 176 fps |
中設定 | 60 fps | 85 fps | |
高設定 | ― | 52 fps |
フォートナイト
フォートナイトについては、Direct X12にすると、「低設定」でも60 fpsを切り、とてもプレイすることはできませんが、「HYPR-RX」モードにすることでフレームレートがかなり伸びます。
レンダリングモードを「パフォーマンス - 低グラフィック忠実度」で「HYPR-RX」モードにすれば、さらに高いフレームレートが出ていました。
ただ、「HYPR-RX」モードにすると、振り向きでショットガンを打つときなど、視点を速く動かすと映像が荒れて、遅延もやや感じるので、エイムしにくさを感じます。個人的には「パフォーマンス - 低グラフィック忠実度」で、「画質」モードにするのが一番プレイしやすかったです。
フォートナイト [チャプター5 シーズン2]
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解像度 | 品質 | 「画質」モード | 「HYPR-RX」モード |
1920x1200 | 低設定 | 53 fps | 128 fps |
※バトルロワイヤル ソロで計測
解像度 | その他設定 | 「画質」モード | 「HYPR-RX」モード |
1920x1200 | 3D解像度:100% メッシュ:高 描画距離:最高 |
117 fps | 178 fps |
VALORANT
VALORANTについては、いずれの設定も低くすれば、「画質」モードでも高いフレームレートが出ます。「HYPR-RX」モードにすれば、さらにフレームレートは上がりますが、AFMFは競技性のあるゲームに向いていないので、AFMFはオフにしてもいいと思います。
VALORANT
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解像度 | 品質 | 「画質」モード | 「HYPR-RX」モード |
1920x1200 | 低設定 | 160 fps | 202 fps |
パルワールド
パルワールドは重いゲームで、さらにディスプレイ本来の解像度でしかフルスクリーンにできなかったのでRSRが使えません。それでも、「HYPR-RX」モードにすれば、 60 fpsに近い平均フレームレートが出ていました。ただ、視点を速く動かすと40 fpsくらいまで下がるので、ややプレイしにくさは感じます。
パルワールド
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解像度 | 品質 | 「画質」モード | 「HYPR-RX」モード |
1920x1200 | 低 | 35 fps | 55 fps |
クリエイターソフトの処理時間
次に、クリエイター向けソフトで計測した各種処理時間を掲載します。
Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間
Adobe Lightroom Classicにおいて、100枚のRAW画像について、現像処理をして、書き出した時の時間を計測しました。
Core Ultra 7 155HやRyzen 7 8845HSよりは遅いですが、一般的なノートPCに採用されるプロセッサーの中ではかなり速いです。
Adobe Premiere Pro CCによる書き出し時間
Adobe Premiere Proで、FHD/30pの動画を簡単に編集して書き出した時の時間は下表の通りです。
Ryzen 7 8840HSは、CPU内蔵のグラフィックスとしては書き出しは速いです。
Adobe Photoshopの処理時間
Photoshopでは、AIを使ったニューラルフィルターを実行してみました。
「スーパーズーム(x2)」の処理は、Core Ultra 7 155Hよりもかなり速かったです。
一方で、「JPEGのノイズを削除」に関しては、Ryzen 7 8840HSはそこまで速くありませんでした。インテルCPUと比べて得手不得手がありそうです。
TMPGEnc によるエンコード時間
TMPGEnc Video Mastering Works 7によるソフトウェアエンコードにかかった時間は次の通りです。なおこの処理は、CPUで行います。
Core Ultra 7 155Hには及ばないものの、TDP(またはPBP(プロセッサー・ベース・パワー))が28W以下のプロセッサーの中では、Ryzen 7 8840HSはかなり速いです。
(ソフトウェアエンコード)
次に、ハードウェアエンコードの処理時間ですが、Core Ultra 7 155Hなどと比べると、やや遅いですが、他と比べると速いです。
(ハードウェアエンコード)
まとめ
今回、AMD Ryzen 8040シリーズプロセッサーの1つの「Ryzen 7 8840HS」について、各種ベンチマークなどを計測しました。
CPUやグラフィクス関連のベンチマークスコアを見ると、Core Ultra 7 155Hとほぼ同等のスコアで、TDP(またはPBP)が28Wクラスのプロセッサーとしてはかなり高い処理性能です。
また、ゲームについては、AFMFを含むHYPR-RXが使えるので、フレームレートが大きく伸びるゲームも多かったです。ただ、今回、1280x800の低解像度からアップスケーリングさせたこともあり、映像はやや悪く感じます。視点を速く動かすと画質が粗く感じるときもありました。ゲームによって、設定を調整するといいと思います。
クリエイティブワークの処理については、得手不得手があると感じますが、概ね高速です。
さすがに、GeForce RTXシリーズなどの外部グラフィックスを搭載したPCと比べると、ゲームもクリエイティブワークも快適度は劣りますが、仕事などの合間に、たまたに軽いゲームをしたり、かんたんな動画編集や画像編集をする程度にならベストなプロセッサーだと思います。
1975年生まれ。電子・情報系の大学院を修了。
2000年にシステムインテグレーターの企業へ就職し、主にサーバーの設計・構築を担当。2006年に「the比較」のサイトを立ち上げて運営を開始し、2010年に独立。
毎年、50台前後のパソコンを購入して検証。メーカーさんからお借りしているパソコンを合わせると、毎年合計約150台のパソコンの実機をテストしレビュー記事を執筆。
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