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Ryzen 7 8845HSのベンチマーク
ここでは、AMD Ryzen 8040シリーズプロセッサーの1つの「Ryzen 7 8845HS」の各種ベンチマークスコアを掲載します。
基本的にはゲーミングノートPCに搭載されるCPUですが、一般的なノートPCにも割と採用されているプロセッサーです。内蔵グラフィックス性能も高いので、外部GPUを搭載していなくても、ある程度ならゲームなどもできるでしょう。
なお、今回は薄型の一般向けノートPCでテストしています。ゲーミングノートPCに搭載された場合は、もっとパフォーマンスが高くなる可能性があるのでご了承下さい。
プロセッサーの仕様
AMD Ryzen 8040シリーズプロセッサーを、TDP毎に分けると、下表のように3つに分けられます。いずれもCPUはZen4世代、GPUはRDNA 3世代、NPUはXDNA世代のアーキテクチャが採用されています。
Ryzen 7 8845HSは、現時点で発表されているプロセッサーの中では最上位のRyzen 8045シリーズに含まれます。デフォルトTDPは45Wで、NPUも搭載しています。ただ、現時点でRyzenプロセッサーのNPUを活用できる一般向けアプリはほぼありません。
デフォルトTDP | cTDP | NPU | |
Ryzen 8045(HS)シリーズ | 45W | 35-54W | ○ |
Ryzen 8040(HS)シリーズ | 28W | 20-30W | ○ |
Ryzen 8040(U)シリーズ | 28W | 15-30W | ○ / × |
Ryzen 8045シリーズのプロセッサーはいくつかありますが、Ryzen 7 8845HSはRyzen 9に次ぐ性能で、コア数は8、グラフィックスはRadeon 780Mと、Ryzen 9と大きくは変わらない性能です。
Ryzen 9 8945HS | Ryzen 7 8845HS | Ryzen 5 8645HS | |
コア / スレッド数 | 8 / 16 | 8 / 16 | 6 / 12 |
最大クロック | 5.2GHz | 5.1GHz | 5.0GHz |
デフォルトTDP | 45W | 45W | 45W |
cTDP | 35-54W | 35-54W | 35-54W |
グラフィックス・モデル | Radeon 780M | Radeon 780M | Radeon 760M |
グラフィックス周波数 | 2800 MHz | 2700 MHz | 2600 MHz |
GPUコア数 | 12 | 12 | 8 |
ベンチマークの計測に利用したノートPC
今回、ベンチマークに使用したノートPCは、次の機種です。
このノートPCに、CPU使用率が100%になる高い負荷をかけたときのCPU電力は、次の図の通りです。なお、高いパフォーマンスが出る「エクストリーム・パフォーマンス」の設定で計測しています。
デフォルトTDPが45Wのプロセッサーですが、初動のブースト時を除くと、CPU電力は約60Wで推移しています。やや高めのCPU電力で動作しています。ただ、ゲーミングノートPCに搭載された場合も、もう少し高いCPU電力で動作するかもしれません。
CPU関連のベンチマークスコア
以下、各種ベンチマークソフトのスコア、および他のプロセッサーと比較したグラフを掲載します。
なお、棒グラフについて、Ryzen 7 8845HSのスコアは緑色にしています。また、CPU関連のベンチマークスコアについては、Core i7-13700Hのスコアをオレンジ色にしています。
CINEBENCH R23
まず、定番のCINEBENCH R23のスコアを掲載します。
マルチコアのスコアは、インテルのPBP:45WのCore i7-13700Hよりも若干低いものの、PBP:28WのCore Ultra 7 155Hよりは高いスコアが出ています。Ryzen 7 8845HSが一般向けノートPCに搭載されていたら、かなり高い性能であることが分かります。
また、Ryzen 7 8845HSは、従来のRyzen 7 7735HSと比較すると、約16%高いスコアで、上位のRyzen 9 8945HSと比較すると5%ほど低い程度のスコアでした。
ただし、シングルコアのスコアに関してはやや低めで、Core Ultra 7 155Hよりも低かったです。
CINEBENCH 2024
次は、CINEBENCH 2024のスコアです。
マルチコアに関して、Ryzen 7 8845HSは、Core i7-13700Hよりも高いスコアが出ていました。ただし、シングルコアについては、CINEBENCH R23と同様にやや低めでした。
Geekbench 6
続いて、Geekbench 6のスコアを掲載します。先のCINEBENCHは、処理を開始してから10分経過後にスコアを計測するのに対し、Geekbenchはすぐにスコアを計測し始めるので、最初のブースト時のCPU電力が高めのプロセッサーのほうがスコアが出やすくなっています。
こちらの結果は、Ryzen 7 8845HSよりも、Core i7-13700Hのほうが、マルチコアおよびシングルコアのスコアとも高い値が出ていました。ただ、Ryzen 7 8845HSのシングルコアのスコアはそこまで低くありませんでした。
グラフィックス関連のベンチマークスコア
次はグラフィックス関連のベンチマークスコアを掲載します。
なお、グラフィックス性能はメインメモリの速度にも影響され、メモリの帯域が広いとグラフィックス性能も高くなります。今回のPCに搭載されていたメモリは、LPDDR5X-6400で十分な帯域があります。
なお、ここでは、内蔵GPU性能が高いCore Ultra 7 155Hと主に比較したいので、Core Ultra 7 155Hのスコアをオレンジ色にしています。
3DMark Night Raid
3DMark Night Raidのスコアは以下の通りです。「グラフィックスのスコア」の部分が、グラフィック性能を評価する指標となります。
Ryzen 7 8845HSの内蔵グラフィックス「Radeon 780M」は、内蔵GPUとしては非常に高い性能で、Core Ultra 7 155Hとほぼ同じスコアが出ていました。
~ グラフィックス性能の評価 ~
ゲーミング性能
以下、ゲームをしたときのフレームレートを掲載します。比較的軽めのゲームを選んで検証しています。
今回、テストに用いたPCの画面比が16:10だったので、解像度は1920x1080ではなく1920x1200で計測しています。また、CPU内蔵グラフィックスでゲームをする場合、数分経つとフレームレートが大きく落ちるケースがあります。そのため、10分くらい普通にゲームをしたりベンチを回したりした後、実際にフレームレートを計測しています。
なお、ここでも、内蔵GPU性能が高いCore Ultra 7 155Hと比較したいので、Core Ultra 7 155Hのスコアをオレンジ色にしています。
ファイナルファンタジー 14 暁月の終焉
「ファイナルファンタジー 14 暁月の終焉」のベンチマークのスコアは下の通りです。
標準品質であれば、58 fpsの平均フレームレートが出ているので、なんとかゲームができるでしょう。ただ、Core Ultra 7 155Hよりは大分低いスコアでした。
ファイナルファンタジー 14 暁月のフィナーレ
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解像度 | 品質 | 平均 fps |
1920x1200 | 標準品質 | 58 fps / 8119 |
高品質 | 49 fps / 6971 | |
最高品質 | 39 fps / 5753 |
ブループロトコル
ブループロトコルは、1920x1200にできなかったので、1920x1080で計測しています。低画質の設定であれば、92 fpsと比較的高めの平均フレームレートが出ていました。この画質で構わなければ、十分ゲームができると思います。
また、Core Ultra 7 155Hよりも若干高い平均フレームレートが出ていました。
ブループロトコル
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解像度 | 品質 | 平均 fps |
1920x1080 | 低画質 | 92 fps / 13643 |
中画質 | 50 fps / 7168 |
原神
原神は、1920x1200であれば「中」のグラフィック品質でも、60 fps近い平均フレームレートが出ていました。このゲームはフレームレートの上限が60 fpsなので、十分高い数値です。2880x1800の場合は「低」のグラフィック品質であれば、十分プレイすることができます。
原神
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解像度 | グラフィック品質 | 平均 fps |
1920x1200 | 最低 | 60 fps(上限) |
低 | 60 fps(上限) | |
中 | 59 fps | |
2880x1800 | 最低 | 60 fps(上限) |
低 | 58 fps | |
中 | 37 fps |
ARK: Survival Evolved
ARK: Survival Evolvedも低設定であれば、96 fpsと比較的高い平均フレームレートが出ていました。ただし、中設定にすると60 fpsを切ります。
なお、Core Ultra 7 155Hよりもやや高めのフレームレートが出ていました。
ARK: Survival Evolved
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解像度 | 品質 | 平均 fps |
1920x1200 | 低設定 | 96 fps |
中設定 | 55 fps |
PSO2 ニュージェネシス
PSO2 ニュージェネシスは、「最低」のグラフィック品質であれば、60 fpsを超える平均フレームレートが出ていました。
ただ、こちらに関しては、Core Ultra 7 155Hのほうが高い平均フレームレートが出ていました。
PSO2 ニュージェネシス
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解像度 | 品質 | 平均 fps |
1920x1200 | 最低 | 74 fps |
中 | 59 fps | |
ウルトラ | 28 fps |
フォートナイト
フォートナイトについては、レンダリングモードを「パフォーマンス - 低グラフィック忠実度」にして計測しました。
Core Ultra 7 155H搭載PCでゲームをしたときは、よくカクつくことがあり、あまり快適にはゲームができませんでした。一方、Ryzen 7 8845HS搭載PCであれば平均フレームレートが123 fpsと高めで、今回ディスプレイが120Hzであったこともあり、割とプレイできました。たまにカクつくことはありますが、エンジョイ勢であれば、なんとかゲームができるかなと思います。Switchよりはやりやすいです。
フォートナイト [チャプター5 シーズン2]
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解像度 | その他設定 | 平均 fps |
1920x1200 | 3D解像度:100% メッシュ:高 描画距離:最高 |
123 fps |
VALORANT
VALORANTについては、低設定であれば、100 fpsを超える平均フレームレートが出ており、こちらも割と快適にプレイすることができました。
VALORANT
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解像度 | 品質 | 平均 fps |
1920x1200 | 低設定 | 164 fps |
高設定 | 73 fps |
ドラゴンクエストX
ドラゴンクエストXについては、1920x1080で計測しています。Core Ultra 7 155Hを大きく下回るスコアしか出ませんでしたが、軽いゲームなので、十分プレイ可能です。
ドラゴンクエストX
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解像度 | 品質 | 平均 fps |
1920x1080 | 最高品質 | 12027(すごく快適) |
クリエイターソフトの処理時間
次に、クリエイター向けソフトで計測した各種処理時間を掲載します。
なお、ここでも、Core Ultra 7 155Hのスコアをオレンジ色にしています。
Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間
Adobe Lightroom Classicにおいて、100枚のRAW画像について、現像処理をして、書き出した時の時間を計測しました。
2024.4.2 計測し直したら数値が改善されたので訂正しました。
まずまずの速さですが、Core Ultra 7 155Hよりは遅かったです。昔からそうですが、Lightroomの書き出しは、ノートPC向けのCPUの場合、AMDプロセッサーよりインテルプロセッサーのほうが速い傾向があります。
現像処理自体は、外部GPU搭載PCよりはややもたつきがあるものの、十分利用できる範囲です。
Adobe Premiere Pro CCによる書き出し時間
Adobe Premiere Proで、FHD/30pの動画を簡単に編集して書き出した時の時間は下表の通りです。
CPU内蔵のグラフィックスとしては書き出しは速いです。Core Ultra 7 155Hとほぼ同等の速さでした。FHD動画の簡単な編集であれば使えると思います。ただし、アニメーションを多用したり、分析処理が入るエフェクトを使ったり、4Kなどの高解像度動画を編集するなら、もう少しグラフィック性能の高いノートPCがおすすめです。
Adobe Photoshopの処理時間
Photoshopでは、AIを使ったニューラルフィルターを実行してみました。
「スーパーズーム(x2)」に関しては、Core Ultra 7 155Hよりもかなり速く、RTX 3050の外部グラフィックスを搭載したノートPCと同じくらいの処理時間でした。GPUを使う処理はかなり速そうです。
「JPEGのノイズを削除」に関しては、ほぼCPUで処理しますが、そこまで速くありませんでした。
TMPGEnc によるエンコード時間
TMPGEnc Video Mastering Works 7によるソフトウェアエンコードにかかった時間は次の通りです。なおこの処理は、CPUで行います。
エンコードについては、Ryzen 7 8845HSは、Core Ultra 7 155Hよりも速く、Core i7-13700Hに近い処理時間でした。
(ソフトウェアエンコード)
次に、ハードウェアエンコードの処理時間は、Core Ultra 7 155Hと同じくらいの時間で、こちらも高速でした。
(ハードウェアエンコード)
バッテリー駆動時間
ここでは、ボディなどがほぼ同じでインテル Core Ultraプロセッサーを搭載した兄弟機種「IdeaPad Pro 5i Gen 9」とバッテリー駆動時間を比較しました。
下表の(1)~(3)はメーカーの公表値で、(4)当サイトの計測値です。
(1)のアイドル時や、(3)のかなり負荷が低いときはインテル Core Ultra プロセッサー搭載モデルのほうが長いバッテリー駆動時間でしたが、(2)の動画再生や(4)の動画編集作業時のプレビュー再生のようなやや負荷がかかったときは、Ryzen 7 8845HS搭載モデルのほうが長いバッテリー駆動時間でした。
使い方にもよりますが、一般的な使い方をした場合、Ryzen 7 8845HS搭載モデルのほうがバッテリー駆動時間は長いかもしれません。
IdeaPad Pro 5 Gen 9 | IdeaPad Pro 5i Gen 9 | ||
Ryzen 7 8845HS | Core Ultra 5 125H | Core Ultra 7 155H | |
(1) JEITA3.0(アイドル時) | 約17.3時間 | 約22.7時間 | 約24.9時間 |
(2) JEITA3.0(動画再生時) | 約12.7時間 | 約10.5時間 | 約10.4時間 |
(3) JEITA2.0 | 約19.3時間 | 約 23.4時間 | 約23.4時間 |
(4) 動画編集時のプレビュー | 5時間52分 | 5時間33分 | 未計測 |
(4) Premiere Proで480x320の動画をプレビュー再生(リピート)させたとき。画面輝度は約120cd/m2
まとめ
今回、AMD Ryzen 8040シリーズプロセッサーの1つの「Ryzen 7 8845HS」のベンチマークスコアなどを計測しました。
CPUのマルチコア性能はCore i7-13700Hに近いですが、シングルコア性能についてはやや落ちるようでした。
グラフィック性能は、3DMarkを見るとCore Ultra 7 155Hの内蔵GPUとほぼ同じで、ゲームによってはかなり高いフレームレートが出るケースもありました。
クリエイティブワークは、処理によっては遅いものもありますが、基本的には速いです。特にGPUを使う処理は速かったです。
デフォルトTDP:45WのCPUですが、バッテリー駆動時間も比較的長かったです。
AI機能については、一般ユーザーが試せる環境が無かったので、今回は未検証です。
総合的に見ると、Core i7-13700Hに近いCPU性能で、Core Ultra 7 155Hと同等のグラフィック性能を持つ優秀なプロセッサーだと思います。
1975年生まれ。電子・情報系の大学院を修了。
2000年にシステムインテグレーターの企業へ就職し、主にサーバーの設計・構築を担当。2006年に「the比較」のサイトを立ち上げて運営を開始し、2010年に独立。
毎年、50台前後のパソコンを購入して検証。メーカーさんからお借りしているパソコンを合わせると、毎年合計約150台のパソコンの実機をテストしレビュー記事を執筆。
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