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Core 5 120Uのベンチマーク
ここでは、ノートPC向けのインテル Core プロセッサー(シリーズ1)の1つの「Core 5 120U」の各種ベンチマークスコアを掲載します。
Core 5 120Uは、Core Ultra プロセッサーとは異なり、第13世代Coreの"Raptor Lake"のRefresh版なので、そこまで大きく性能が向上しているわけではありません。ただ、PBPが15Wでも、割と十分なパフォーマンスが出ていたので、一般ユーザーには十分な性能のCPUです。
プロセッサーの仕様
まず、Core プロセッサーとCore Ultraプロセッサーの違いは以下の通りです。なお、Core Ultraプロセッサーは、HシリーズとUシリーズとで分けて記載しています。
Coreプロセッサーは、低消費電力版Eコア(LP-Eコア)および、AI専用プロセッサーのNPUがありません。グラフィックスについては、Intel Arc Graphicsではなく、従来のIntel Xeと同じ性能で名前が変わったIntel Graphicsを搭載しています。また、Processor Base Power(PBP)は15Wと低めです。
Coreプロセッサーは、高性能ノートPCではなく、主に一般向けのノートPCに採用されるプロセッサーです。
Core Ultra H | Core Ultra U | Core | |
Processor Base Power | 28W | 9W 15W |
15W |
Maximum Turbo Power | 64W or 115W | 30W 57W |
55W |
LP Eコア | あり | あり | なし |
NPU | あり | あり | なし |
GPU | Intel Arc | Intel Graphics | Intel Graphics |
2024年3月20日執筆時点で発表されているインテル Coreプロセッサー(シリーズ1)は以下の3つで、今回テストするCore 5 120Uは、真ん中の性能です。Eコアが8つ、キャッシュも12MBあり、上位のCore 7 150Uとそこまで変わらないことが推察されます。
Core 7 150U | Core 5 120U | Core 3 100U | |
P / Eコア | 2 / 8 | 2 / 8 | 2 / 4 |
Pコア最大クロック | 5.4GHz | 5.0GHz | 4.7GHz |
Eコア最大クロック | 4.0GHz | 3.8GHz | 3.3GHz |
キャッシュ | 12MB | 10MB | |
GPU | Intel Graphics | ||
GPU最大クロック | 1.3GHz | 1.25GHz | 1.25GHz |
実行ユニット | 96 | 80 | 64 |
PBP ※1 | 15W | ||
MTP ※2 | 55W |
※2 MTP:Maximum Turbo Power
ベンチマークの計測に利用したノートPC
今回、ベンチマークに使用したノートPCは、次の2機種です。
sRGBカバー率100%のディスプレイを搭載しつつも安いノートPC。
人気機種の後継。キーボードが比較的打ちやすいのと、コスパの高さが魅力。
このノートPCに、CPU使用率が100%になる高い負荷をかけたときのCPU電力の推移は、次の図の通りです。なお、どちらの機種も、パフォーマンスが最も高くなるモードで計測しています。
IdeaPad Slim 5i Gen 9は、安定動作時は、約28W前後のCPU電力で推移しています。PBPが15WのCPUなので、高めのCPU電力で推移していることが分かります。放熱性が良いPCや、性能を引き出すような設定のPCは、IdeaPad Slim 5i Gen 9くらいのパフォーマンスが出ると思います。
Inspiron 14 5440は、最初は高めのCPU電力ですが、徐々に落ちてきて、17Wくらいで推移しています。普通の放熱性能のPCや、CPU温度があまり上がらないように設定されているPCは、このくらいのCPU電力で動くと思います。
CPU関連のベンチマークスコア
以下、各種ベンチマークソフトのスコアおよび他のプロセッサーと比較したグラフを掲載します。
なお、グラフは、Core 5 120Uのスコアを緑色にしています。また、従来のインテル第13世代のCore i5-1340P(PBP:28W)とCore i5-1335U(PBP:15W)のスコアについてはオレンジ色にしています。
CINEBENCH R23
まずは、CPUレンダリングを行いCPU性能を評価するベンチマークソフト、CINEBENCH R23のスコアを掲載します。
Core 5 120Uのマルチコアのスコアは、IdeaPad Slim 5i Gen 9であればCore i5-1340Pとほぼ同等の値が出ていました。Inspiron 14 5440でも、Core i5-1335Uよりは高いスコアでした。
シングルコアに関しては、どちらのPCのCore 5 120Uも、Core i5-1340Pより高いスコアが出ていました。
CINEBENCH 2024
次は、CINEBENCHの最新版、CINEBENCH 2024のスコアです。
こちらも、マルチコアはCore i5-1340PとCore i5-1335Uの間のスコアで、シングルコアはCore i5-1340Pよりも高いスコアでした。
Geekbench 6
続いて、拡張現実や機械学習などの最先端の処理を取り入れているクロスプラットフォームのベンチマークソフト、Geekbench 6のスコアを掲載します。先のCINEBENCHは、処理を開始してから10分経過後にスコアを計測するのに対し、Geekbenchはすぐにスコアを計測し始めるので、最初のブースト時のCPU電力が高めのプロセッサーのほうがスコアが出やすくなっています。
マルチコアは、2台のPCのCore 5 120Uとも、Core i5-1340Pに近いスコアが出ていました。Core i5-1335Uと比較すると、Core 5 120Uは30%以上高いスコアが出ていました。
シングルコアについても、Core 5 120Uは、Core i5-1340PやCore i5-1335Uよりも10%ほど高いスコアが出ていました。
PassMark Performance Test 11
続いて、圧縮、暗号化、物理シミュレーションなどを含む数学的計算を行うPassMark Performance Test 10.0のスコアを掲載します。
2台のPCのCore 5 120Uとも、Core i5-1340Pとほぼ同じスコアが出ていました。また、Core i5-1335Uよりも15%以上高いスコアでした。
グラフィックス関連のベンチマークスコア
次はグラフィックス関連のベンチマークスコアです。
なお、グラフィックス性能はメインメモリの速度にも影響され、メモリの帯域が広いとグラフィックス性能も高くなります。今回のPCに搭載されていたメモリは次の通りです。
IdeaPad Slim 5i Gen 9・・・LPDDR5X-5200
Inspiron 14 5440
・・・DDR5-5200
どちらもDDR4よりも帯域が広くなっています。
3DMark Night Raid
3DMark Night Raidのスコアは以下の通りです。「グラフィックスのスコア」の部分が、グラフィック性能を評価する指標となります。
Core 5 120Uの内蔵グラフィックスはIntel Graphics、Core i5-1340Pの内蔵グラフィックスはIntel Xe Graphicsとなっていますが、Intel GraphicsはIntel Xe Graphicsの名称を変更しただけなので、基本的に性能は同じです。実際のスコアを見ても、Core 5 120Uは、Core i5-1340Pとほぼ同じスコアでした。
~ グラフィックス性能の評価 ~
ゲーミング性能
以下、ゲームをしたときのフレームレートを掲載します。比較的軽めのゲームを選んで検証しています。
今回、テストに用いたPCの画面比が16:10だったので、解像度は1920x1080ではなく1920x1200で計測しています。また、CPU内蔵グラフィックスでゲームをする場合、数分経つとフレームレートが大きく落ちるケースがあります。そのため、10分くらい普通にゲームをしたりベンチを回したりした後、実際にフレームレートを計測しています。
ファイナルファンタジー 14 暁月の終焉
「ファイナルファンタジー 14 暁月の終焉」のベンチマークのスコアを掲載します。標準品質で、50 fps前後の平均フレームレートが出ています。Core Ultra 7 155H内蔵のIntel Arc Graphicsと比べると、スコアは落ちます。このゲームをするなら、Intel Arc Graphicsを内蔵したCore Ultraプロセッサーのほうがいいかなと思います。
ファイナルファンタジー 14 暁月のフィナーレ(DX11)
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解像度 | 品質 | IdeaPad Slim 5i | Inspiron 14 5440 |
1920x1200 | 標準品質 | 51 fps / 7350 | 47 fps / 6657 |
ブループロトコル
ブループロトコルについては、35 fps前後しか出ておらず、ゲームをするにはやや厳しいフレームレートでした。ちなみに、Core Ultra 7 155HのIntel Arc Graphicsであれば、80 fps以上出ていたので、そのくらいの性能のPCがおすすめです。
ブループロトコル
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解像度 | 品質 | IdeaPad Slim 5i | Inspiron 14 5440 |
1920x1200 | 低画質 | 35 fps / 4741 | 34 fps / 4738 |
原神
原神は、グラフィック品質設定を「最低」にすると最大の60 fpsが出ており、なんとかゲームが出来そうでした。ただし、「中」に上げると40 fps前後になり、ややカクつく感じがありました。
原神
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解像度 | グラフィック品質 | IdeaPad Slim 5i | Inspiron 14 5440 |
1920x1200 | 最低 | 60 fps(最大) | 60 fps(最大) |
低 | 50 fps | 44 fps | |
中 | 41 fps | 36 fps |
ドラゴンクエストX
ドラゴンクエストXについては、比較的高いスコアでした。
ドラゴンクエストX
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解像度 | 品質 | IdeaPad Slim 5i | Inspiron 14 5440 |
1920x1080 | 最高品質 | 5977(快適) | 6026(快適) |
クリエイターソフトの処理時間
次に、クリエイター向けソフトで計測した各種処理時間を掲載します。
Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間
Adobe Lightroom Classicを使い、100枚のRAW画像について、露光量、シャドウなどのパラメーターを変更し、書き出した時の時間は下表の通りです。
Core 5 120Uは、Core i5-1340Pよりも現像にやや時間がかかっていましたが、Core i5-1335Uよりは速かったです。実際に画像を1枚表示して、各種パラメーターを変更してみると、若干もたつきを感じるときはありますが、趣味程度に使うなら問題無いでしょう。
Adobe Premiere Pro CCによる書き出し時間
Adobe Premiere Proで、FHD/30pの動画を簡単に編集して書き出した時の時間は下表の通りです。
どちらのPCのCore 5 120Uも、Core i5-1340Pとほぼ同等の書き出し時間でした。FHD動画の簡単な編集程度ならできると思います。
Adobe Photoshopの処理時間
PhotoshopのAIを使ったニューラルフィルターを実行しました。「スーパーズーム(x2)」のフィルターに関しては、IdeaPad Slim 5iのCore 5 120Uであれば、Core i5-1340Pと同じくらいの処理時間でした。「JPEGのノイズを削除」のフィルターに関しては、Core i5-1340Pよりも短い時間で処理できていました。
実際に画像を開いて編集作業をしてみると、外部GPUを搭載していないので、多少もっさりと感じる処理もありますが、趣味程度なら、問題なく使えると思います。
TMPGEnc によるエンコード時間
TMPGEnc Video Mastering Works 7によるソフトウェアエンコードにかかった時間は次の通りです。なおこの処理は、CPUで処理します。
Inspiron 14は、時間が経つにつれてCPU電力が下がる傾向があるので、エンコードのような処理は時間がかかっていましたが、IdeaPad Slim 5iのほうは割と短い時間で処理が終わっていました。
(ソフトウェアエンコード)
次に、ハードウェアエンコードの処理時間ですが、こちらはCore i5-1340Pと同じくらいの処理時間でした。ただ、Core Ultra 7 155Hなどと比べると差があります。
(ハードウェアエンコード)
まとめ
今回、Raptor Lake Refreshことインテル Core プロセッサー(シリーズ1)の「Core 5 120U」のベンチマークスコアなどを計測しました。
第13世代Coreのリフレッシュ版なので、大きく性能が向上したわけではありませんが、PBP:15Wのプロセッサーでも、十分な性能が出ていました。一般的なユーザーにとっては申し分のない性能でしょう。
Core 5 120Uと比べて、インテル Core Ultra プロセッサーは、グラフィック性能が高いのと、NPUを搭載している点がメリットです。そのため、ゲームやクリエイティブワークをするならCore Ultraのほうがおすすめですが、簡単な画像編集や動画編集をする程度なら、Core 5 120Uでも問題ないでしょう。
今後、家庭および仕事向けのノートPCに、このプロセッサーがたくさん採用されてくると思いますが、それほど負荷の高い作業をしないのであれば、必要十分な性能のCPUだと思います。
1975年生まれ。電子・情報系の大学院を修了。
2000年にシステムインテグレーターの企業へ就職し、主にサーバーの設計・構築を担当。2006年に「the比較」のサイトを立ち上げて運営を開始し、2010年に独立。
毎年、50台前後のパソコンを購入して検証。メーカーさんからお借りしているパソコンを合わせると、毎年合計約150台のパソコンの実機をテストしレビュー記事を執筆。
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