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Zen 3のRyzen 7 5800Uのベンチマーク
AMDの最新モバイル向けプロセッサーで、Zen 3アーキテクチャを採用した7nmプロセス製造の「Ryzen 7 5800U」の各種ベンチマークスコアを掲載します。
Ryzen 7 5800Uの仕様
AMDのモバイル向け最新プロセッサー「Ryzen 5000」シリーズは、コードネーム「Lucienne」と呼ばれるZen 2と、「Cezanne」と呼ばれるZen 3が混在していますが、Ryzen 7 5800Uは新しいアーキテクチャのZen 3を採用したプロセッサーです。
Ryzen 7 5800Uは、Ryzen 7 5700Uと比較して、クロック数にそれほど違いはないものの、L3キャッシュの容量が倍増し、キャッシュへのアクセス方法も改善され、パフォーマンスの向上が見込まれます。
グラフィック性能は、クロックがやや向上していますが、Zen 2と同じVega GPUですので、大きな性能向上は期待できません。
メモリは、最大で、DDR4-3200およびLPDDR4-4266をサポートしています。メモリ速度が速ければ、グラフィック性能も大きく向上します。
Ryzen 7 5800U | Ryzen 7 5700U | |
アーキテクチャ | Zen 3 | Zen 2 |
CPUコア数 | 8 | 8 |
スレッド数 | 16 | 16 |
基本クロック | 1.9GHz | 1.8GHz |
最大ブースト クロック |
4.4GHz | 4.3GHz |
L2キャッシュ | 4MB | 4MB |
L3キャッシュ | 16MB | 8MB |
TDP / cTDP | 15W / 10-25W | |
メモリータイプ | 最大DDR4-3200 / LPDDR4-4266 | |
GPUコア数 | 8 | 8 |
グラフィックス 周波数 [MHz] |
2000 | 1900 |
ベンチマークの計測に利用したノートPC
今回は、モバイルノートのThinkBook 13s Gen 3でテストを行いました。ダブルファンを搭載していますが、ボディが小型なので放熱性能はそこまで高いわけではありません。そのため、15インチクラスでもっと放熱性の高いノートPCの場合、今回計測したベンチマークスコアより、もっと良い結果が出る可能性もあります。今回の結果は、参考値としてご覧ください。
Zen 3 Ryzen 5000シリーズを搭載したモバイルノートPC。16:10の画面比の液晶を搭載しているのも特徴。質量は約1.26kg。
Ryzen 7 5800Uのベンチマークスコア
以下、各種ベンチマークソフトのスコアを掲載します。
CINEBENCH R23
Ryzen 7 5800UのCINEBENCH R23のスコアはご覧の通りです。
モバイル向けのプロセッサーとしては、非常に高いマルチコアのスコアで、Core i7-1165G7の約1.7倍のスコアが出ています。ただ、Zen 2のRyzen 7 5700Uと比較すると微増といったところです。
一方、シングルコアのスコアに関しては、Ryzen 7 5700Uよりも約10%も伸びています。Core i7-1165G7よりは低いスコアであるものの、その差は大分縮まっており、多くの作業が快適になると思われます。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
PassMark Performance Test 10.0
続いて、圧縮、暗号化、物理シミュレーションなどを含む数学的計算を行うPassMark Performance Test 10.0のスコアを掲載します。こちらは、Ryzen 7 5700Uより約15%高いスコアでした。Core i7-1165G7と比較しても大きな差があります。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
Geekbench 5
続いて、拡張現実や機械学習などの最先端の処理を取り入れているクロスプラットフォームのベンチマークソフト、Geekbench 5のスコアを掲載します。Geekbench 5のマルチコアのスコアについては、Ryzen 7 5700Uよりも約9%スコアが伸びていました。
また、下のグラフには掲載していませんが、シングルコアのスコアについては、Ryzen 7 5800Uは、Ryzen 7 5700Uよりも約20%もスコアが伸びていました。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
リアル作業の快適性の指標となるベンチマーク
CINEBENCHなどは、CPUの性能を最大限引き出したときのテストで、最大のパワーを発揮しているときのCPUの優劣を見るのに最適でした。ただし、日常的に、このような大きな負荷のかかる処理を行っているユーザーはあまり多くありません。そこで、次では、一般的なユーザーが利用することの多い処理を実行し、快適度を数値化するベンチマークソフトをテストしてみます。
なお、メモリやストレージの速度などによってもスコアが変わってくるため、目安としてご覧いただければと思います。
PCMark 10
PCMark 10は、Webページ閲覧、動画視聴といった日常的な操作の快適性の指標となる「Essentials」、文書作成、表計算の使用といった仕事の快適性の指標となる「Productivity」、画像編集、3D CG制作、動画編集といったクリエイティブ作業の快適性の指標となる「Digital Content Creation」の3つについて数値化するベンチマークソフトです。
「Essentials」のスコアについて、Zen 2ベースのRyzen 7 5700Uは、Core i7-1165G7よりも低いスコアでしたが、Zen 3ベースのRyzen 7 5800Uは、Core i7-1165G7とほぼ同等のスコアが出ていました。日常的な操作はインテルのCore i7-1165G7と、ほぼ変わらない快適さになっと言えます。
「Productivity」については、Ryzen 7 5800UはCore i7-1165G7よりも高いスコアです。文書作成や表計算ソフトを頻繁に使う方に適しています。ただし、ソフトによっても変わってくるためご了承下さい。
「Digital Content Creation」については、思ったほどスコアが伸びず、Ryzen 7 5800UはRyzen 7 5700Uよりも低いスコアだったものの、Core i7-1165G7よりは高いスコアでした。ただし、後述しますが、代表的なクリエイターソフトであるAdobe LightroomやPremiere Proの書き出し時間は、Ryzen 7 5800UはCore i7-1165G7より遅かったです。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
WebXPRT 3
WebXPRT 3は、HTML5およびJavaScriptを使って、オンラインで、画像補正、AIを使用した画像の整理、株式ポートフォリオの計算・表示、文書の暗号化とOCR、セールデータのグラフ作成、オンラインホームワークといった処理をブラウザ上で実行します。PCへの負荷は軽めになります。
Zen 2のRyzen 7 5700Uは、Core i7-1165G7よりも劣るスコアでしたが、Zen 3のRyzen 7 5800Uは、Core i7-1165G7を超えるスコアが出ていました。ブラウザで動くアプリも快適になることでしょう。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
※Chromeブラウザで実行
グラフィックス関連のベンチマークスコア
次はグラフィックス関連のベンチマークスコアを掲載します。
3DMark Night Raid
グラフィックス関連のスコアは、メインメモリの速度に大きく左右されます。
今回テストに使用しているThinkBook 13s Gen 3は、LPDDR4X-4266のデュアルメモリを搭載していますが、このメモリにしては速度が遅いです。DDR4-3200程度の速度しか出ていません。
3DMark Night Raidのスコアを見ると、Ryzen 7 5800Uは、DDR4-3200搭載のRyzen 7 5700Uよりはやや高いスコアです。ただし、メモリの速度が影響してか、Ryzen 7 5800Uは、LPDDR4X-4266搭載のCore i7-1165G7よりもスコアが大分低くなっています。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
各ゲームのフレームレート
次に、ゲームのフレームレートを計測した結果を掲載します。
なお、多くのゲームは、トレーニングモード等で動かしているときのフレームレートを計測しています。なるべく同じ動きをしているものの、まったく同じ動作を再現できているわけではありません。
また、いずれのCPUも、計測した日時が異なります。ゲームのバージョンアップにより、グラフィック品質の設定項目がやや変わっており、完全に同じ条件で計測できていません。
また、外部GPUを搭載していないノートパソコンの場合、温度によってパフォーマンスが変わりやすいことから、ゲーム開始直後は高いフレームレートが出やすく、しばらくすると、徐々にフレームレートが下がることが多いです。下の計測結果は、比較的よい結果を掲載しているため、ゲームをしているともう少しフレームレートが落ちるケースも多いと思います。
以上のことから、平均フレームレートについては、参考程度にご覧いただければと思います。
Apex Legends
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ThinkBook 13s | ||
1920x1080 | 低設定 | 41 fps |
グラフィック関連の設定をかなり低めにしても、平均フレームレートは41 fpsしか出ていません。Apexをするなら、もう少しグラフィック性能の高いノートPCがおすすめです。
VALORANT
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ThinkBook 13s | ||
1920x1080 | 低設定 | 172 fps |
高設定 | 53 fps |
VALORANTは軽めのゲームなので、高めのフレームレートが出ます。グラフィック品質設定を調整することで、60 fps以上の平均フレームレートでゲームができるでしょう。
フォートナイト
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ThinkBook 13s | ||
1920x1200 | 低設定 | 133 fps |
中設定 | 80 fps | |
高設定 | 26 fps |
ThinkBook 13sは1920x1200の画面解像度ということが関係し、フォートナイトでは1920x1080の解像度に設定できなかったため、1920x1200の解像度でテストをしています。他のグラフィックスとは異なる解像度でテストしているため、比較するときはご注意下さい。
フォートナイトも軽めのゲームなので、グラフィック設定次第では、高めのフレームレートが出ます。また、フォートナイトは、今回の計測方法では、インテルCPUよりも高めのフレームレートが出やすかったです。
PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS
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ThinkBook 13s | ||
1920x1080 | 非常に低い | 49 fps |
中型 | 31 fps |
「非常に低い」グラフィック品質設定なら49 fpsの平均フレームレートが出ていますが、時々カクつくことがあるかなと思います。我慢すれば出来なくもないといった印象です。
ドラゴンクエストX
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ThinkBook 13s | ||
1920x1080 | 最高品質 | 9154(とても快適) |
ドラクエXは、「とても快適」の評価でした。平均フレームレートだと89 fpsも出ています。快適にゲームができるでしょう。
ファイナルファンタジー 14 漆黒のヴィランズ
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ThinkBook 13s | ||
1920x1080 | 標準(ノート) | 33 fps |
最も低いグラフィック品質の設定で33 fpsの低めの平均フレームレートです。FF14をするならもう少し高めのグラフィックスを搭載したPCのほうがいいかと思います。
クリエイターソフトの処理時間
以下、実際のソフトウェアで計測した各種処理時間です。PC Mark 10の「Digital Content Creation」の項目でもクリエイティブ作業の快適度は掲載しましたが、PC Mark 10はフリーソフトでテストを行っており、実際のクリエイターが使用していないソフトも多いです。
以下は、利用者の多いシェアウェアのAdobeソフトを中心に、クリエイティブ作業時の快適性をテストします。
Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間
シングルコア性能の上がったRyzen 7 5800Uなので、Lightroom Classicの現像時間には期待したのですが、Core i7-1165G7などのインテルCPUと比べると、やや遅かったです。モバイル向けのプロセッサーは、AMDよりインテルのプロセッサーのほうがLightroomの書き出しが速い傾向があるのは変わりませんでした(デスクトップ向けのプロセッサーの警告はまた異なります)。ただし、Zen 2のRyzen 7 5700Uよりは速かったです。
:Ryzen 7 5800Uのスコア
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
Adobe Premiere Pro CCによる書き出し時間
こちらも、Ryzen 7 5700Uよりは速かったですが、インテルのCore i7-1165G7よりは遅い書き出し時間です。ノートPCでPremiere Proを使う場合は、Ryzen 7 5800UなどのAMDプロセッサーより、インテルプロセッサーのほうが無難だと思います。
:Ryzen 7 5800Uのスコア
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
:Ryzen 7 5800Uのスコア
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
TMPGEnc によるエンコード時間
TMPGEnc Video Mastering Works 7によるソフトウェアエンコード時間は、Ryzen 7 5800UはCore i7-1165G7よりもかなり非常に速いです。こういった全コアをフルに使うような処理は得意です。
:Ryzen 7 5800Uのスコア
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
まとめ
今回、Zen 3のRyzen 7 5800Uのベンチマークスコアを計測しました。
Ryzen 7 5800Uは、Zen 2のRyzen 7 5700Uと比べると、マルチコア性能は微増といったところですが、シングルコア性能は結構伸びており、PCMark 10やWebXPRT 3といった一般ユーザーがリアルでよく行う作業に関するベンチマークのスコアが大きく改善されています。得意不得意の少ないプロセッサーに仕上がったという印象です。
ゲームの平均フレームレートは、Core i7-1165G7よりもやや劣ることが多かったですが、これはメモリの速度にも大きく左右されます。もう少し速度の速いLPDDR4X-4266のメモリであれば、もっとフレームレートは伸びたのではないかと思います。
Adobe系のソフトについては、Ryzen 7 5800UよりCore i7-1165G7のほうが速く処理が終わることが多いです。ノートPCでAdobe系のソフトを使うなら、インテルCoreプロセッサーを搭載した製品のほうがいいかなと思います。
1975年生まれ。電子・情報系の大学院を修了。
2000年にシステムインテグレーターの企業へ就職し、主にサーバーの設計・構築を担当。2006年に「the比較」のサイトを立ち上げて運営を開始し、2010年に独立。
毎年、50台前後のパソコンを購入して検証。メーカーさんからお借りしているパソコンを合わせると、毎年合計約150台のパソコンの実機をテストしレビュー記事を執筆。
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