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Ryzen 5 5500Uのベンチマーク
■2021.4.29 初稿
■2021.5.01 メモリをcrucial 8GBx2のメモリにしたときのスコアを追記
本記事では、AMDの最新モバイル向けプロセッサーRyzen 5000 Uシリーズの「Ryzen 5 5500U」のベンチマークスコアを掲載します。一般ユーザーには十分な性能でありながら、このプロセッサーを搭載したノートPCは、価格が比較的安いものが多いです。
Ryzen 5 5500Uの仕様
Ryzen 5 5500Uは、コードネーム「Lucienne」と呼ばれるZen 2 + Vega GPUの構成のプロセッサーです。従来のRyzen 5 4500Uと比較すると、コア数は同じであるものの、スレッド数が2倍になっている点が大きな特徴です。
その他は、下表の赤字で書かれた部分が従来よりもスペックアップしています。
Ryzen 5 5500U | Ryzen 5 4500U | |
アーキテクチャ | Zen 2 | Zen 2 |
CPUコア数 | 6 | 6 |
スレッド数 | 12 | 6 |
基本クロック | 2.1GHz | 2.3GHz |
最大ブースト クロック | 4.0GHz | 4.0GHz |
L2キャッシュ | 3MB | 3MB |
L3キャッシュ | 8MB | 8MB |
TDP / cTDP | 15W / 10-25W | |
メモリータイプ | 最大DDR4-3200 / LPDDR4-4266 | |
GPUコア数 | 7 | 6 |
グラフィックス周波数 | 1800MHz | 1500 MHz |
ただし、モバイル向けRyzen 5000シリーズには、Zen 3アーキテクチャを採用した「Cezanne」というプロセッサーも投入されており、Zen 3のRyzen 5 5600Uと比較すると、Zen 2のRyzen 5 5500Uは、下図のようにL3キャッシュやクロック数が見劣りします。
Ryzen 7 5800U |
Ryzen 7 5700U |
Ryzen 5 5600U |
Ryzen 5 5500U |
Ryzen 3 5400U |
Ryzen 3 5300U |
|
アーキテクチャ | Zen 3 | Zen 2 | Zen 3 | Zen 2 | Zen 3 | Zen 2 |
CPUコア数 | 8 | 6 | 4 | |||
スレッド数 | 16 | 12 | 8 | |||
基本クロック | 1.9GHz | 1.8GHz | 2.3GHz | 2.1GHz | 2.6GHz | 2.6GHz |
最大ブースト クロック |
4.4GHz | 4.3GHz | 4.2GHz | 4.0GHz | 4.0GHz | 3.8GHz |
L2キャッシュ | 4MB | 3MB | 2MB | |||
L3キャッシュ | 16MB | 8MB | 16MB | 8MB | 8MB | 4MB |
TDP / cTDP | 15W / 10-25W | |||||
メモリータイプ | 最大DDR4-3200 / LPDDR4-4266 | |||||
GPUコア数 | 8 | 7 | 6 | |||
グラフィックス 周波数 [MHz] |
2000 | 1900 | 1800 | 1800 | 1600 | 1500 |
ベンチマークの計測に利用したノートPC
今回は、以下のPCで検証を行いました。
最新のRyzen 5000シリーズを搭載した 2 in 1 PC。質量は1.56kgとそこまで軽くはないものの、7万円台からと高コスパ。ペンもオプションで付けることが可能。
Ryzen 5 5500Uのベンチマークスコア
以下、ベンチマークソフトで計測したスコアを掲載します。
CINEBENCH R23
Ryzen 5 5500UのCINEBENCH R23のスコアは下図の通りです。スレッド数が旧世代のRyzen 5 4500Uの2倍になったことで、マルチコアのスコアは約30%増加しています。ライバルのCore i5-1135G7の約1.5倍ものスコアです。
しかし、シングルコアのスコアはRyzen 5 4500Uとほとんど変わっておらず、インテルのCore i5-1135G7よりもスコアが低くなっています。
上位のRyzen 7 5700UとRyzen 5 5500Uとを比べると、マルチコア性能には大きな開きがあり、Ryzen 7 5700Uのほうが35%もスコアが高いです。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
PassMark Performance Test 10.0
続いて、圧縮、暗号化、物理シミュレーションなどを含む数学的計算を行うPassMark Performance Test 10.0のスコアを掲載します。
Ryzen 5 5500UはRyzen 5 4500Uよりは高いスコアであるものの、約10%増のスコアに留まりました。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
Geekbench 5
続いて、拡張現実や機械学習などの最先端の処理を取り入れているクロスプラットフォームのベンチマークソフト、Geekbench 5のスコアを掲載します。
Ryzen 5 5500Uは、Ryzen 5 4500Uよりも、スコアが約10%高かったですが、CINEBENCH R23では大きな差をつけていたCore i5-1135G7とほぼ同等のスコアでした。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
リアル作業の快適性の指標となるベンチマーク
上で掲載したベンチマークは、CPUの性能を最大限引き出したときのテストで、CPUの優劣を見るのに最適でした。ただし、日常的に、レンダリングのような大きな負荷のかかる処理を行っているユーザーはあまり多くありません。そこで、次では、一般的なユーザーが利用することの多い作業を処理を実行し、快適度を数値化するベンチマークソフトのスコアを掲載します。
なお、メモリやストレージの速度などによってもスコアが変わってくるため、目安としてご覧いただければと思います。
PCMark 10
PCMark 10は、Webページ閲覧、動画視聴といった日常的な操作の快適性の指標となる「Essentials」、文書作成、表計算の使用といった仕事の快適性の指標となる「Productivity」、画像編集、3D CG制作、動画編集といったクリエイティブ作業の快適性の指標となる「Digital Content Creation」の3つについて数値化するベンチマークソフトです。
「Essentials」については、Ryzen 5 5500Uは、旧世代のRyzen 5 4500Uよりは高いスコアであるものの、Core i5-1135G7のインテルプロセッサーよりは劣るスコアでした。ただし、この程度のスコア差なら、日常的に使うアプリの快適度が著しく低下するということはありません。十分ストレスなく使用できます。
「Productivity」については、高いスコアが出ていました。文書作成、表計算といった作業は快適でしょう。
「Digital Content Creation」については、Ryzen 5 5500Uは、Ryzen 7 5700Uほどではないにしても、非常に高いスコアでした。ただし、後述しますが、Adobe系ソフトは、インテルのCore i5-1135G7などより遅いケースが多かったです。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
WebXPRT 3
WebXPRT 3は、HTML5およびJavaScriptを使って、オンラインで、画像補正、AIを使用した画像の整理、株式ポートフォリオの計算・表示、文書の暗号化とOCR、セールデータのグラフ作成、オンラインホームワークといった処理をブラウザ上で実行します。PCへの負荷は軽めになります。
Ryzen 5 5500Uのスコアは、そこまで高くありません。インテルプロセッサーのほうが高いスコアでした。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
※Chromeブラウザで実行
グラフィックス関連のベンチマークスコア
次はグラフィックス関連のベンチマークスコアを掲載します。
なお、グラフィックス関連のスコアは、メインメモリの速度に大きく左右されます。異なるメモリが搭載されていた場合、以下に掲載するスコアとは大きく変わることもあるでしょう。今回のスコアは参考値としてご覧ください。
2021年5月21日、メモリを市販のcrucial製8GBx2へ換装したときのスコアも追記しました。
3DMark Night Raid
今回の検証に使用したノートPCのメモリは、DDR4-3200のデュアルチャネルです。
同じ規格のメモリを搭載した機種と比較すると、Ryzen 5 5500Uは、Ryzen 5 4500Uとほとんどスコアは変わらず、Core i5-1135G7よりも低いスコアでした。Ryzen 7 5700Uと比べると、大分スコアが低いです。
LPDDR4X-4266のメモリを搭載したパソコンなら、同じRyzen 5 5500Uのプロセッサーでも、もっとスコアが伸びるでしょう。ただ、昨年の傾向を見ると、LPDDR4X-4266の高速メモリを搭載したRyzen 4000 Uシリーズのモデルはほとんどなかったため、今年も、LPDDR4X-4266を搭載したRyzen 5000 Uシリーズのモデルは少ないのではないかと思います。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
参考:メモリ交換で速くなる
Inspiron 14 2-in-1に搭載されているメモリはそこまで速くなく、市販のcrucialのDDR4-3200のメモリへ交換すると、以下のようにスコアがやや上がります(15%スコアアップ)。
なお、SiSoftware Sandraでメモリ帯域を計測してみると、標準搭載されていたメモリは26.34GB/s、市販のcrucialのメモリは31GB/sでした。
次の項目ではゲームのフレームレートを掲載しますが、標準搭載されていたメモリがそれほど速くない場合、このようにメモリを交換すると、フレームレートがやや上がるケースもあると思います。
各ゲームのフレームレート
次に、ゲームのフレームレートを計測した結果を掲載します。
なお、ドラゴンクエストXとファイナルファンタジー14以外は、トレーニングモード等で動かしているときのフレームレートをMSIアフターバーナーで計測しています。まったく同じ状況で再現できるわけではありませんし、シーンが変わればフレームレートは変わってきます。
また、いずれのCPUも、計測した時期が異なります。ゲームのバージョンアップにより、グラフィック品質の設定項目がやや変わっており、完全に同じ条件で計測できていません。
以上のことから、フレームレートについては、参考程度にご覧いただければと思います。
Apex Legends
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Inspiron 14 2-in-1 | ||
1920x1080 | 低設定 | 38 fps [39 fps] |
Ryzen 5 5500Uは、1世代前のRyzen 5 4500Uよりもスコアが10%ほど高いものの、Ryzen 7 5700Uの7割くらいのスコアしか出ていません。
グラフィック設定を最も低く設定しても、38 fpsの平均フレームレートしか出ていなかったため、Apexをやるならあまりおすすめしません。
VALORANT
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Inspiron 14 2-in-1 | ||
1920x1080 | 低設定 | 136 fps [159 fps] |
高設定 | 46 fps [51 fps] |
今回の計測では、1世代前のRyzen 5 4500Uのスコアを下回っていました。グラフィック品質設定の項目が昔と変わっており、同じ条件でテスト出来ていないということも関係していると思います。
ただ、低設定なら136 fpsと高い平均フレームレートが出ており、十分ゲームができるでしょう。もう少し設定を変更し、高めのグラフィックスにしてもいいと思います。
フォートナイト
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Inspiron 14 2-in-1 | ||
1920x1080 | 低設定 | 201 fps [219 fps] |
中設定 | 80 fps [89 fps] | |
高設定 | 27 fps [29 fps] |
フォートナイトは、仕様が変わっていつも計測している場所で計測できなくなったので、いつもとは別の場所で計測しています。そのため、他のPCでの計測結果は掲載しておりません。
中設定でも80 fps出ているので、快適にプレイできるでしょう。
PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS
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Inspiron 14 2-in-1 | ||
1920x1080 | 非常に低い | 37 fps [41 fps] |
中型 | 24 fps [26 fps] |
PUBGは、「非常に低い」グラフィック品質設定でも 低めのフレームレートです。
ドラゴンクエストX
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Inspiron 14 2-in-1 | ||
1920x1080 | 最高品質 | 8293(とても快適) [9426(とても快適)] |
ドラクエXは「とても快適」の評価でした。軽いゲームなので、快適にゲームが出来ると思います。
ファイナルファンタジー 14 漆黒のヴィランズ
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Inspiron 14 2-in-1 | ||
1920x1080 | 標準(ノート) | 29 fps [34 fps] |
ファイナルファンタジー14は、30 fps前後の平均フレームレートしか出ませんでした。バトルロワイヤルゲームなどとは違い、そこまで高いフレームレートが出なくても大丈夫ではありますが、ファイナルファンタジー14をするなら、もう少し高めの性能のPCのほうがいいかなと思います。
クリエイターソフトの処理時間
以下、実際のソフトウェアで計測した各種処理時間です。PC Mark 10の「Digital Content Creation」の項目でもクリエイティブ作業の快適度は掲載しましたが、PC Mark 10は主にフリーソフトでテストを行っており、実際のクリエイターが使用していないソフトも多いです。
以下は、利用者の多いシェアウェアのAdobeソフトを中心に、クリエイティブ作業時の快適性をテストします。
Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間
Adobe Lightroom Classic CCは、メモリが8GBしかないと極端に遅くなるため、Inspiron 14 2-in-1の8GBメモリを、crucialの16GBメモリへ換装して書き出しの時間を計測しています。
結果は下グラフの通りで、16GBにしても書き出し時間は遅いです。ちなみに8GBのままだと2分25秒かかっていました。Lightroomをよく使うなら第11世代インテルCoreプロセッサーのほうがいいと思います。
:Ryzen 5 5500Uのスコア
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
Adobe Premiere Pro CCによる書き出し時間
何か月か前までは、モバイル向けAMD Ryzenプロセッサー搭載PCで、Premiere Proで4K動画の書き出しを行うと異常に遅い現象がありましたが、最近ではそれが改善されています。ただ、10分の4K動画の書き出しに20分以上も時間がかかっているため、4K動画の編集はあまりおすすめしません。
FHD動画の編集であれば、10分の動画に対して約7分で書き出せているので、趣味でたまに動画編集をする程度なら待てる範囲です。メモリを16GBにすると、5分36秒まで短くなります。ただ、YouTubeに頻繁に動画投稿する方などは、1つの動画に対して何度か書き出しをやり直すことがあることも考慮すると、もう少し高いスペックのPCのほうがいいかなと思います。カット編集、簡単なエフェクトの追加といった作業は、そこまでストレスは感じません。
:Ryzen 5 5500Uのスコア
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
:Ryzen 5 5500Uのスコア
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
TMPGEnc によるエンコード時間
TMPGEnc Video Mastering Works 7によるx265エンコード時間は、Ryzen 5 5500Uは非常に速いです。このような全コアの使用率が100%近くになるような処理は、Ryzenプロセッサーが得意です。
:Ryzen 5 5500Uのスコア
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
まとめ
今回、モバイル向けプロセッサー、Ryzen 5 5500Uのベンチマークスコアを計測しました。
Ryzen 5 5500Uは、従来のRyzen 5 4500Uと比較すると、シングルコア性能はほとんど上がっていませんが、マルチコア性能は約30%向上しています。グラフィック性能に関しては、メモリの速度によって大きく変わりますが、CPU以外がほぼ同構成なら10%ほど向上していると思われます。
ゲームについては、今回、あまり速度が速くないDDR4-3200のメモリが搭載されていたため、そこまでフレームレートは高くありませんでした。なお、思ったほどフレームレートが出ない場合は、市販のDDR4-3200のメモリに交換してみたり、LPDDR4X-4266メモリを搭載したノートPCを選んだりするといいと思います。そうすれば、軽めのゲームなら、グラフィック品質を落とすことで、ある程度高めのフレームレートが出るでしょう。
Adobe系のソフトについては、処理にもよると思いますが、今回試した限りでは、あまり速くありませんでした。Adobe系のソフトを使う場合は、Core i5-1135G7やCore i7-1165G7を搭載したノートPCのほうがいいと思います。
1975年生まれ。電子・情報系の大学院を修了。
2000年にシステムインテグレーターの企業へ就職し、主にサーバーの設計・構築を担当。2006年に「the比較」のサイトを立ち上げて運営を開始し、2010年に独立。
毎年、50台前後のパソコンを購入して検証。メーカーさんからお借りしているパソコンを合わせると、毎年合計約150台のパソコンの実機をテストしレビュー記事を執筆。
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約15年間にわたり、年間100機種以上、パソコンを細かくチェックしている筆者がおすすめするノートパソコン。