Core i7-1280P、Core i7-1260P、Core i5-1240Pのベンチマーク

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ここでは、最新のノートPC向けのインテル第12世代Coreプロセッサー(Alder Lake-P)の中で、Core i7-1280P、Core i7-1260P、Core i5-1240Pの3つについて、各種ベンチマークスコアを掲載します。

 

各プロセッサーの仕様

インテル第12世代Coreプロセッサーは大きく分けると、ハイエンドPCに搭載される「Hシリーズ」、一般ユーザー向けPCに搭載される「Pシリーズ」、特に薄くて軽いPCに搭載される「Uシリーズ」があります。この中で、Core i7-1280P、Core i7-1260P、Core i5-1240Pは、「Pシリーズ」に位置づけられます。

どのプロセッサーも、Pコア(高性能コア)とEコア(高効率コア)の2種類が搭載されたハイブリッド・アーキテクチャを採用しているのが特徴です。

下表に、これらのプロセッサーの仕様を掲載します。PL1に相当するProcessor Base Powerはどちらも28Wですが、Core i7-1280PのPコアは6つであるのに対し、他のプロセッサーのPコアは4つになっているのが特徴です。ただし、定格クロックについては、Core i7-1260Pのほうが高くなっています。GPU実行ユニットについては、Core i7がCore i5よりも多くなっています。

各プロセッサーの仕様
  Core i7-1280P Core i7-1260P Core i5-1240P
コア数 Pコア 6 4 4
Eコア 8 8 8
定格クロック Pコア 1.8GHz 2.1GHz 1.7GHz
Eコア 1.3GHz 1.5GHz 1.2GHz
最大クロック Pコア 4.8GHz 4.7GHz 4.4GHz
Eコア 3.6GHz 3.4GHz 3.3GHz
L3キャッシュ 24MB 18MB 12MB
GPU最大クロック 1.45GHz 1.4GHz 1.3GHz
GPU実行ユニット 96 96 80
Base Power(PL1相当) 28W
Max Turbo Power(PL2相当) 64W

 

ベンチマークの計測に利用したノートPC

今回、ベンチマークに使用したノートPCは、MSI Stealth 15M、Dynabook GZ/HV、Dynabook R6/Vです。MSI Stealth 15MはCore i7-1280P、Dynabook GZ/HVはCore i7-1260P、Dynabook R6/VはCore i5-1240Pを搭載しています。

MSI Stealth 15MはGeForce RTX 3060の外部グラフィックスも搭載していますが、今回は、CPU内蔵グラフィックスの性能を確認したいので、GeForce RTX 3060は無効化し、CPU内蔵グラフィックスのみを動作させてテストしています。

 

ベンチマークスコア

以下、各種ベンチマークソフトのスコアを掲載します。

CINEBENCH R23

まずは、CPUレンダリングを行ってCPU性能を評価するベンチマークソフト、CINEBENCH R23のスコアを掲載します。

Core i7-1280Pのマルチコアのスコアは、旧世代のHシリーズのCore i7-11800Hとほぼ同等の高いスコアでした。10コアのApple M1 Maxには及びませんでしが、それでもApple M1 Maxにかなり近いスコアが出ています。旧世代の28WクラスのCore i7-1195G7と比較すると、約1.8倍ものマルチコアスコアが出ています。シングルコアのスコアについては、Core i7-11800HやApple M1 Maxよりも高かったです。

Core i7-1260Pは、マルチコアのスコアはやや落ちますが、それでもHシリーズのCore i5-11400Hよりも高いスコアでした。さらに、各コアの定格クロックが高いこともあり、シングルコアのスコアが非常に高く、Core i7-1165G7の1.2倍以上ありました。

Core i5-1240Pのマルチコアのスコアは、Ryzen 5 5600Uあたりと同じくらいで、まずまずの性能です。シングルコアのスコアは思ったほどではありませんでしたが、それでも比較的高いです。

CINEBENCH R23
~ CPU性能の評価 ~
Core i7-1280P
Core i7-1260P
Core i5-1240P
他のCPUとの比較(マルチコア)
Core i9-12900H 19223
Core i9-12900HK 17767
Core i7-12700H 16389
Ryzen 9 5900HX 13382
Core i9-11900H 13266
Ryzen 7 5800H 12604
Apple M1 Max/Pro
10コアCPU
12359
Core i7-11800H 11893
Core i7-1280P 11801
Ryzen 7 5825U 10040
Ryzen 7 5800U 9429
Ryzen 5 5600H 9255
Core i7-1260P 9032
Core i5-11400H 8514
Ryzen 5 5600U 8491
Ryzen 7 5700U 8445
Core i5-1240P 8409
Ryzen 5 5625U 8107
Core i7-1195G7 6594
Ryzen 5 5500U 6250
Core i7-1185G7 6229
Core i7-1165G7 4720
Core i5-1135G7 4424
他のCPUとの比較(シングルコア)
Core i9-12900H 1920
Core i9-12900HK 1918
Core i7-12700H 1823
Core i7-1260P 1802
Core i7-1280P 1664
Core i7-1195G7 1634
Core i9-11900H 1570
Apple M1 Max/Pro
10コアCPU
1531
Core i7-1185G7 1517
Core i7-11800H 1511
Core i5-1240P 1483
Ryzen 9 5900HX 1463
Ryzen 7 5825U 1460
Core i7-1165G7 1447
Core i5-11400H 1442
Ryzen 7 5800H 1435
Ryzen 7 5800U 1429
Ryzen 5 5625U 1383
Ryzen 5 5600U 1369
Ryzen 5 5600H 1354
Core i5-1135G7 1294
Ryzen 7 5700U 1264
Ryzen 5 5500U 1185

 

Geekbench 5

続いて、拡張現実や機械学習などの最先端の処理を取り入れているクロスプラットフォームのベンチマークソフト、Geekbench 5のスコアを掲載します。

Core i7-1280Pのマルチコアのスコアは、上位のHシリーズのCore i7-12700Hとほぼ同じくらいの高いスコアでした。シングルコアについても高めです。ただ、Apple M1 Maxほどのスコアは出ませんでした。

Core i7-1260PおよびCore i5-1240Pは、コア数が減る分、Core i7-1280Pよりも劣るマルチコアのスコアですが、それでもCore i9-11900HやRyzen 9 5900HXよりも高いスコアでした。

Core i5-1240Pは、シングルコア性能はそこまで高くはありませんでしたが、それでもRyzen 7 5800Uよりは高かったです。

Geekbench 5
Core i7-1280P
Core i7-1260P
Core i5-1240P
他CPUとの比較(Multi-Core)
Apple M1 Max/Pro
10コアCPU
12758
Core i7-12700H 11027
Core i7-1280P 11023
Core i7-1260P 9383
Core i5-1240P 9246
Core i9-11900H 7831
Ryzen 9 5900HX 7306
Core i7-11800H 7215
Ryzen 7 5800U 6642
Ryzen 7 5700U 6097
Core i7-1165G7 5491
他CPUとの比較(Single-Core)
Apple M1 Max/Pro
10コアCPU
1784
Core i7-12700H 1763
Core i7-1260P 1757
Core i7-1280P 1652
Core i9-11900H 1576
Core i7-1165G7 1573
Core i7-11800H 1547
Ryzen 9 5900HX 1496
Core i5-1240P 1463
Ryzen 7 5800U 1415
Ryzen 7 5700U 1165

 

PassMark Performance Test 10.0

続いて、圧縮、暗号化、物理シミュレーションなどを含む数学的計算を行うPassMark Performance Test 10.0のスコアを掲載します。

Core i7-1280Pは、Core i7-11900Hよりも高いスコアで、非常に高いマルチコア性能です。

Core i7-1260PおよびCore i5-1240Pは、旧世代のCore i7-1165G7よりは高いスコアであるものの、Ryzen 7 5800Uよりは低いスコアでした。

PassMark Performance Test 10.0(CPU MARK)
Core i7-1280P
Core i7-1260P
Core i5-1240P
他CPUとの比較(CPU MARK)
Core i7-12700H 26616
Ryzen 9 5900HX 24642
Core i7-1280P 23073
Core i7-11900H 21979
Core i7-11800H 21328
Ryzen 7 5800U 19611
Ryzen 7 4800H 19080
Core i7-1260P 18561
Core i5-1240P 17582
Ryzen 7 5700U 17071
Core i7-1165G7 12552

 

グラフィックス関連のベンチマークスコア

次はグラフィックス関連のベンチマークスコアを掲載します。

なお、CPU内蔵のグラフィックスの処理速度は、メインメモリの速度に大きく左右されます。今回は、Core i7-1280PのモデルがDDR4-3200、Core i7-1260PのモデルがDDR5-4800、Core i5-1240PのモデルがLPDDR5-4800を搭載していました。速度のいずれもデュアルチャネルです。メモリ帯域の実測値はご覧のようになっています。

各メモリの帯域の実測値
  DDR4-3200
(i7-1280Pモデル)
DDR5-4800
(i7-1260Pモデル)
LPDDR5-4800
(i5-1240Pモデル)
メモリ帯域 38.65GB/s 41.38GB/s 51.5GB/s

 

3DMark Night Raid

3DMark Night Raidのスコアは以下の通りです。グラフィック性能を示す「Graphics score」に注目してください。

DDR4-3200を搭載したCore i7-1280Pは、LPDDR4X-4266を搭載したCore i7-1165G7と比較すると、スコアはそこまで変わっていません。また、Core i7-1260Pもほぼ同等のスコアです。

Core i5-1240Pは、LPDDR5-4800を搭載していますが、LPDDR4X-4266を搭載したCore i5-1135G7よりも低いスコアでした。このあたりの原因は分かりません。引き続き、他のノートPCでもテストしてみようと思います。

3DMark Night Raid
Core i7-1280P / メモリDDR4-3200
Core i7-1260P / メモリDDR5-4800
Core i5-1240P / メモリLPDDR5-4800
他のグラフィックスとの比較(Graphics score)
GeForce GTX 1650 45149
GeForce MX450 30425
Core i7-1280P
メモリDDR4-3200
21606
Core i7-1260P
メモリDDR5-4800
20478
Core i7-12700H
メモリDDR4-3200
20177
Core i7-1165G7
メモリLPDDR4X-4266
20052
Core i5-1135G7
メモリLPDDR4X-4266
18718
Ryzen 7 5800U
メモリLPDDR4X-4266
17020
Core i5-1240P
メモリLPDDR5-4800
16398
Ryzen 7 5700U
メモリDDR4-3200
16272
Core i7-1165G7
メモリDDR4-3200
14247
Core i5-1135G7
メモリDDR4-3200
13316
Ryzen 5 5500U
メモリDDR4-3200
12154
Core i3-1115G4
メモリDDR4-3200
11487

 

ファイナルファンタジー 14 暁月の終焉

次に、「ファイナルファンタジー 14 暁月の終焉」のベンチマークのスコアを掲載します。なお、1920x1080、標準品質(ノートPC)で計測しています。

Core i7-1280Pは、スコアで7065(やや快適)、平均フレームレートで49 fps出ていたので、なんとかプレイできる性能だと思います。Core i7-1260Pも同じくらいのスコアです。

Core i5-1240Pは、スコアで6379(やや快適)、平均フレームレートで45 fps出ていたので、こちらもプレイできなくもないスコアです。

VALORANTやドラクエXなどの軽いゲームであれば、問題なくできると思います。フォートナイトやAPEXは、グラフィック品質を低めにすれば、なんとか出来ると思います。

Core i7-1280P / メモリDDR4-3200
Core i7-1260P / メモリDDR5-4800
Core i5-1240P / メモリLPDDR5-4800
他のグラフィックスとの比較(1920×1080、標準(ノート))
GeForce GTX 1650 115 fps
GeForce MX450 85 fps
GeForce MX330 61 fps
GeForce MX250 60 fps
Core i7-1260P
メモリDDR5-4800
50 fps
Core i7-1280P
メモリDDR4-3200
49 fps
Core i7-1165G7
メモリLPDDR4X-4266
49 fps
Core i5-1135G7
メモリLPDDR4X-4266
49 fps
Core i7-12700H
メモリDDR4-3200
48 fps
Core i5-1240P
メモリLPDDR5-4800
45 fps
Ryzen 7 5800U
メモリLPDDR4X-4266
33 fps
Ryzen 7 5700U
メモリDDR4-3200
30 fps
Ryzen 7 4700U
メモリDDR4-3200
30 fps
Ryzen 5 5500U
メモリDDR4-3200
29 fps
Ryzen 5 4500U
メモリDDR4-3200
29 fps

 

クリエイターソフトの処理時間

以下、実際のソフトウェアで計測した各種処理時間です。

Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間

Adobe Lightroom Classicで、100枚のRAW画像を、サイズを変更して書き出した時の時間は下表の通りです。

Core i7-1280Pは非常に速く、10コアのApple M1 Maxを搭載したMacBook Pro 16よりも速かったです。Core i7-12700Hとほぼ同じくらいの時間でした。

Core i7-1260Pも速く、Apple M1 Maxと同等レベルの書き出し時間でした。

Core i5-1240Pは、今回、メモリが8GBしかなかったので、そこまで速くはありませんでしたが、それでも16GBメモリ搭載のCore i7-1185G7よりも高速でした。十分使えるレベルの書き出し時間です。メモリを16GBにすれば、もっと速くなります。

Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間
Core i9-11900H
16GBメモリ
44秒
Core i7-12700H
16GBメモリ
46秒
Core i9-11980HK
64GBメモリ
46秒
Core i7-1280P
16GBメモリ
47秒
Core i7-11800H
16GBメモリ
53秒
Core i7-1260P
16GBメモリ
56秒
Apple M1 Max
10CPU/32GPU
56秒 (MacBook Pro 16)
Apple M1 Pro
10CPU/16GPU
56秒 (MacBook Pro 14)
Apple M1
16GBメモリ
66秒 (MacBook Pro 13)
Core i7-1195G7
16GBメモリ
66秒
Core i5-1240P
8GBメモリ
72秒
Core i7-11370H
16GBメモリ
72秒
Core i7-1185G7
16GBメモリ
74秒
Ryzen 9 5900HX
32GBメモリ
76秒
Core i7-1165G7
16GBメモリ
89秒
Ryzen 7 5800H
16GBメモリ
93秒
Ryzen 7 5800U
16GBメモリ
95秒
Ryzen 7 5700U
16GBメモリ
100秒
※プロファイル補正を適用した100枚のRAWファイル(1枚あたり約45MB)を同じ書き出し設定でjpegに書き出し、所要時間を計測

 

TMPGEnc によるエンコード時間

TMPGEnc Video Mastering Works 7によるソフトウェアエンコード時間は下表の通りです。

Core i7-1280Pであれば比較的速いです。Core i5-1240Pはやや遅くなりますが、それでもRyzen 7 5800Uと同等レベルの時間です。

TMPGEnc Video Mastering Works 7によるエンコード時間
(ソフトウェアエンコード)
Core i7-12700H 7分50秒
Core i9-11900H 8分20秒
Ryzen 9 5900HX 8分26秒
Core i7-1280P 10分59秒
Core i7-1260P 12分43秒
Core i5-1240P 14分19秒
Ryzen 7 5800U 14分35秒
Ryzen 7 5700U 15分05秒
Core i7-1195G7 16分14秒
Core i7-1185G7 16分37秒
Core i7-1165G7 24分17秒
Core i5-1135G7 26分03秒
※XAVC Sの動画(約2分、4K)をH.265/HEVCへ変換したときの時間(x265のエンコーダーを使用)

 

次に、ハードウェアエンコードの処理時間を掲載します。こちらについては、Ryzenプロセッサーが速いです。

TMPGEnc Video Mastering Works 7によるエンコード時間
(ハードウェアエンコード)
Core i7-1280P
RTX 3060
1分05秒 (NVENC)
Ryzen 7 5825U 1分07秒 (AMD Media SDK)
Core i7-1260P 1分28秒 (Intel Media SDK Hardware)
Core i7-1280P 1分34秒 (Intel Media SDK Hardware)
Core i5-1240P 1分42秒 (Intel Media SDK Hardware)
※XAVC Sの動画(約2分、4K)をH.265/HEVCへ変換したときの時間

 

まとめ

今回、Core i7-1280P、Core i7-1260P、Core i5-1240Pのベンチマークスコアを掲載しました。

Core i7-1280Pであれば、マルチコア性能、シングルコア性能とも速かったです。1世代前のHシリーズのCore i7-11800Hよりもスコアがいいケースが多くありました。

Core i7-1260Pは、コア数が減ることからCore i7-1280Pよりマルチコア性能は落ちますが、シングルコア性能については、Core i7-1280Pよりも高いケースがあり、苦手な処理がない汎用的に使えるCPUだと思います。

Core i5-1240Pも、従来のCore i5と比べると高速ですが、マルチコア性能に関してはRyzen 7 5800Uと同等レベルどまりのスコアであることが多かったです。Core i7-1280Pと比べると見劣りします。一般的なユーザーが使う分においては、Core i5-1240Pで十分以上の性能がありますが、もしAlder Lake-Pの登場を待っていたのであれば、Core i7-1260Pや、Core i7-1280Pを搭載したノートPCを買いたいところです。

 

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