Ryzen 7 Pro 4750Uのベンチマーク
更新日:2020年7月12日
ここでは薄型ノートPC向けのRyzen 7 Pro 4750Uのベンチマークスコアを掲載 します。TPD 15Wのプロセッサーですが、インテルのTDP 45WのCore i7-10750Hとほぼ同等のスコアでした。ただし、ソフトによっては思ったほど処理が速くないケースもありました。
Ryzen 7 Pro 4750U の仕様
Ryzen 7 PRO 4750U は、7nmプロセスのZen 2アーキテクチャを採用したRyzen Pro 4000シリーズの1つです。シリーズラインナップの中では最高クラスの位置づけとなっており、基本クロックは低いものの最大ブーストクロックは4.1GHzと高く、CPUコア数は8つ、スレッド数は16もあります。TDP 15Wのモバイル向けプロセッサーとしては、かなり高性能です。
GPUコアは7つと多く、メモリタイプはDDR4-3200に対応しています。
Ryzen Pro 4000シリーズとRyzen 4000シリーズの比較
Ryzen 7
PRO 4750U
Ryzen 7
4700U
Ryzen 5
PRO 4650U
Ryzen 5
4600U
CPUコア数
8
8
6
6
スレッド数
16
8
12
12
最大ブースト
クロック
4.1 GHz
4.1 GHz
4.0 GHz
4.0 GHz
基本クロック
1.7GHz
2.0 GHz
2.1GHz
2.1 GHz
GPUコア数
7
7
6
6
メモリタイプ
DDR4-3200 / LPDDR4-4266
TDP
15W
CPU-ZとGPU-Zの詳細は下図の通りです。内蔵グラフィックスは、512MBがメインメモリから割り当てられていました。
CPU-Z
GPU-Z
計測したPCと注意点
今回、ベンチマークの計測では、ThinkPad T14 Gen 1を使用しました。
ThinkPad T14 Gen 1
TDP 15Wの中では最強クラスのRyzen 7 PRO 4750Uを選択できるノートPC。Intelモデルもあり、こちらは4K液晶を選択可能。
最近のThinkPadは、インテリジェント・クーリングという温度やファン速度を制御する機能が、Windowsの電源モードに統合されています。ThinkPad T14については、電源モードによるパフォーマンスの差が大きかったので、「高パフォーマンス(バランス・モード)」と「最も高いパフォーマンス(パフォーマンス・モード)」の2つのモードで計測した結果を掲載します。
インテリジェント・クーリング
電源モード
Ryzen 7 Pro 4750Uのベンチマークスコア
CINEBENCH R20
まずは、CINEBENCH R20の結果を掲載します。マルチコアのスコアでは、「最も高いパフォーマンス」モードにすると、現在ゲーミングノートでよく使われているTDP 45WのCore i7-10750Hよりも高いスコアになりました。Core i7-10510Uと比較すると、約2倍ものスコアです。
また、シングルコアのスコアも意外に高く、Core i7-10750Hとそれほど変わらないスコアです。
CINEBENCH R20
Ryzen 7 Pro 4750U(高パフォーマンス)
Ryzen 7 Pro 4750U(最も高いパフォーマンス)
他CPUとの比較(マルチコア)
Ryzen 9 4900HS
4250
Ryzen 7 4800H
3944
Ryzen 5 4600H
3260
Ryzen 7 Pro 4750U
3197 [最も高いパフォーマンス]
2687 [高パフォーマンス]
Core i7-10750H
2965
Ryzen 7 4700U
2585
Core i7-10710U
2211
Ryzen 5 4500U
2180
Ryzen 3 4300U
1558
Ryzen 7 3700U
1526
Core i7-1065G7
1484
Core i7-10510U
1459
Core i5-1035G1
1424
Ryzen 5 3500U
1421
Core i5-10210U
1418
Core i3-10110U
922
Ryzen 3 3200U
751
他のCPUとの比較(シングルコア)
Core i9-10885H
514
Ryzen 9 4900HS
488
Core i7-10750H
478
Ryzen 7 Pro 4750U
467
Ryzen 7 4700U
465
Ryzen 7 4800H
457
Ryzen 5 4600H
452
Core i7-10510U
444
Ryzen 3 4300U
430
Core i3-10110U
413
Ryzen 7 3700U
366
PassMark Performance Test 10.0
PassMark Performance Test 10.0のスコアについては、「高パフォーマンス」モードでもCore i7-10750Hより高いスコアでした。
PassMark Performance Test 10.0(CPU MARK)
Ryzen 7 Pro 4750U(高パフォーマンス)
Ryzen 7 Pro 4750U(最も高いパフォーマンス)
Ryzen 9 4900HS
20343
Ryzen 7 4800H
19080
Ryzen 7 Pro 4750U
16988 [最も高いパフォーマンス]
15477 [高パフォーマンス]
Ryzen 7 4700U
14231
Core i7-10750H
12866
Ryzen 5 4500U
11010
Ryzen 3 4300U
8004
Ryzen 7 3700U
7431
Core i7-10510U
7235
Ryzen 5 3500U
7179
Core i5-10210U
6514
Core i3-10110U
4213
Ryzen 3 3200U
4166
Geekbench 5
Geekbench 5についても、CINEBENCH R20と似たような傾向で、「最も高いパフォーマンス」にするとCore i7-10750Hよりやや高く、「高パフォーマンス」モードにするとCore i7-10750Hよりやや低いスコアでした。
Geekbench 5
Ryzen 7 Pro 4750U(高パフォーマンス)
Ryzen 7 Pro 4750U(最も高いパフォーマンス)
他CPUとの比較(Multi-Core)
Ryzen 9 4900HS
8129
Core i7-10875H
7447
Ryzen 7 Pro 4750U
6272 [最も高いパフォーマンス]
5726 [高パフォーマンス]
Core i7-10750H
6030
Core i7-9750H
5784
Ryzen 7 4700U
5696
Core i7-10710U
5602
Core i7-1065G7
4019
Core i5-1035G1
3920
Core i5-10210U
3821
Core i5-8265U
3546
Ryzen 3 4300U
3411
クリエイターソフトの処理時間
以下、実際のソフトウェアで計測した各種処理時間です。
Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間
Adobe Lightroom Classic CC において、100枚のRAWデータを一度に現像したときの時間は次の通りです。Lightroom はマルチスレッド処理が苦手なのか、Ryzenプロセッサー全般の現像時間はそれほど速くありません。Core i7-10750HなどのインテルCoreプロセッサーのほうが高速です。ただし、Lightroom以外にも、PhotoshopやDreamweaverなど重めのソフトを並行して使っていくなら、8コア16スレッドの効果が出てくるのではないかと思われます。
Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間
Core i9-10980HK
32GBメモリ
68秒
Core i7-10875H
16GBメモリ
70秒
Core i9-9980HK
16GBメモリ
79秒
Core i7-10750H
16GBメモリ
80秒
Core i7-9750H
16GBメモリ
85秒
Ryzen 9 4900HS
16GBメモリ
87秒
Ryzen 7 4700U
16GBメモリ
91秒
Ryzen 7 4800H
16GBメモリ
94秒
Core i7-10710U
16GBメモリ
96秒
Ryzen 7 Pro 4750U
16GBメモリ
101秒 [最も高いパフォーマンス]
104秒 [高パフォーマンス]
Core i7-10510U
16GBメモリ
109秒
Ryzen 3 4300U
20GBメモリ
143秒
※プロファイル補正を適用した100枚のRAWファイル(1枚あたり約45MB)を同じ書き出し設定でjpegに書き出し、所要時間を計測。画質:100、サイズ調整:長辺100pixcel。
※「Lightroomにおすすめノートパソコン 」の記事も興味があればご覧ください
Adobe Premiere Pro CCによる書き出し時間
Premiere Pro CC については、FHD動画の書き出しは、外部グラフィックスを搭載していない割にはそこそこ速いですが、4K動画の書き出しについては極端に時間がかかっていました。なお、これはRyzen 4000 Uシリーズ全般に言えることです。レンダリングバーも、FHDだと黄色ですが4Kだと赤色(レンダリングしないとプレビュー時にコマ落ちするという表示)になります。Premiere Proを使うなら、外部グラフィックスを搭載したノートPCがおすすめです。
Adobe Premiere Pro CCによる書き出し時間
4K動画の書き出し
Core i7-10750H/16GB
GeForce RTX 2060
4分51秒
Ryzen 5 4600H/32GB
GeForce GTX 1650
5分48秒
Core i7-1065G7/16GB
Intel Iris Plus
27分23秒
Core i7-10510U/16GB
Intel UHD
49分32秒
Ryzen 7 Pro 4750U /16GB
Radeon Graphics
約1時間30分
Ryzen 7 4700U/16GB
Radeon Graphics
約1時間30分
Ryzen 3 4300U/8GB
Radeon Graphics
約2時間15分
※ 4K/30p動画(約10分)に、「テキスト」+「露光量」+「自然な彩度」+「トランジション」のエフェクトおよびBGMとなるオーディオを加え、H.264形式、YouTube 2160p 4K Ultra HDのプリセットで書き出したときの時間
FHD動画の書き出し
Ryzen 7 4700U/16GB
Radeon Graphics
5分5秒
Ryzen 7 Pro 4750U /16GB
Radeon Graphics
5分8秒 [最も高いパフォーマンス]
5分24秒 [高パフォーマンス]
Ryzen 3 4300U/8GB
Radeon Graphics
6分44秒
Core i7-10510U/8GB
Intel UHD
16分54秒
※ FHD/30p動画(約10分)に、「テキスト」+「露光量」+「自然な彩度」+「トランジション」のエフェクトおよびBGMとなるオーディオを加え、書き出したときの時間
TMPGEnc によるエンコード時間
TMPGEnc Video Mastering Works 7によるエンコード時間 は、Core i7-10750Hよりはやや遅かったものの、ほとんど差は無く高速です。
TMPGEnc Video Mastering Works 7によるエンコード時間 (x265)
Ryzen 9 4900HS
10分55秒
Ryzen 5 4600H
13分10秒
Core i7-10750H
13分29秒
Ryzen 7 Pro 4750U
13分53秒 [最も高いパフォーマンス]
17分04秒 [高パフォーマンス]
Core i7-9750H
15分37秒
Ryzen 7 4700U
15分44秒
Core i7-10710U
19分05秒
Ryzen 3 4300U
25分22秒
Core i7-10510U
28分32秒
Core i5-10210U
28分53秒
Core i3-10110U
42分20秒
Core i3-8130U
45分24秒
※XAVC Sの動画(約2分、4K)をH.265/HEVCへ変換したときの時間(x265のエンコーダーを使用)
グラフィックス関連のベンチマークスコア
次はグラフィックス関連のベンチマークスコアを掲載します。
また、3DMark Night RaidのGraphics scoreを見ると、GPUコア数やグラフィックス周波数が同じRyzen 7 4700Uとほぼ同じスコアです。内蔵グラフィックスとしては高いスコアで、Core i7-1065G7のIris Plus グラフィックスよりも高スコアでした。
3DMark Night Raid - Graphics score
Ryzen 7 Pro 4750U(高パフォーマンス)
Ryzen 7 Pro 4750U(最も高いパフォーマンス)
他のグラフィックスとの比較(Graphics score)
GeForce GTX 1050
25325
GeForce MX330
16714
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 9 4900HS)
16322
GeForce MX250
15406
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 7 Pro 4750U)
14302 [最も高いパフォーマンス]
13144 [高パフォーマンス]
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 7 4700U)
13861
Intel Iris Plus
(Core i7-1065G7)
11084
Radeon Vega 8
(Ryzen 5 3500U)
10014
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 3 4300U)
9800
Intel Iris Plus
(Core i5-1035G4)
9188
Intel UHD
(Core i5-10210U)
5800
Intel UHD 620
(Core i5-8265U)
5274
いくつかゲームのフレームレートも計測してみましたが、PUBG LITEやフォートナイトのような軽めのゲームなら、グラフィックス設定を中程度にすれば、平均フレームレートが60fpsを超えてきます。最も低いグラフィックス設定だと画質が悪すぎてプレイする気になれませんが、中程度のグラフィック設定であれば、なんとか見るに堪える画質だと思います。ドラクエXのような非常に軽いゲームなら、最高設定でもゲームができるでしょう。
高パフォーマンス
最も高いパフォーマンス
1920x1080
非常に低い
104 fps
108 fps
中
62 fps
62 fps
ウルトラ
45 fps
46 fps
他のグラフィックスとの比較(解像度:1920×1080、非常に低い)
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 9 4900HS)
144 fps
GeForce MX250
120 fps
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 7 Pro 4750U)
108 fps [最も高いパフォーマンス]
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 7 4700U)
102 fps
AMD Radeon Vega 8
82 fps
Intel Iris Plus
(Core i7-1065G7)
80 fps
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 3 4300U)
63 fps
Intel UHD
(Core i7-10750H)
55 fps
Intel UHD 620
(Core i5-8265U)
45 fps
Intel UHD 615
(Core m3-8100Y)
35 fps
※トレーニングモードで計測
高パフォーマンス
最も高いパフォーマンス
1920x1080
低設定
135 fps
137 fps
中設定
73 fps
75 fps
高設定
30 fps
30 fps
最高設定
17 fps
18 fps
※バトルラボで計測
高パフォーマンス
最も高いパフォーマンス
1920x1080
最高品質
9212(とても快適)
9426(とても快適)
他のグラフィックスとの比較(解像度:1920×1080、最高品質)
GTX 1650
19246
GeForce MX250
11900
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 9 4900HS)
10982
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 7 4700U)
9462
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 7 Pro 4750U)
9426 [最も高いパフォーマンス]
Intel Iris Plus
(Core i7-1065G7)
7968
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 3 4300U)
6777
Intel UHD
(Core i7-10750H)
6120
Intel UHD
(Core i7-10710U)
5984
Intel UHD
(Core i5-1035G1)
5655
Intel UHD
(Core i5-10210U)
5234
Intel UHD 615
(Core m3-8100Y)
2848
※約5500で60fps
プロセッサー内蔵GPUによるハードウェアエンコードについては非常に高速でした。ハードウェアエンコードといってもCPUのパワーも使うので、CPU性能も高いRyzen 7 Pro 4750Uは非常に高速でした。
TMPGEnc 7によるエンコード時間(内蔵GPUによるエンコード)
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 9 4900HS)
56秒
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 7 Pro 4750U)
1分4秒 [最も高いパフォーマンス]
1分11秒 [高パフォーマンス]
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 7 4700U)
1分10秒
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 3 4300U)
1分39秒
Intel Iris Plus
(Core i7-1065G7)
1分43秒
Intel UHD
(Core i5-1035G1)
2分13秒
Intel UHD
(Core i7-10750H)
2分48秒
Intel UHD
(Core i7-10710U)
3分02秒
Intel UHD
(Core i5-10210U)
3分06秒
Intel UHD 615
(Core m3-8100Y)
7分21秒
まとめ
Ryzen 7 PRO 4750Uは、8コア16スレッドを搭載し、TDP 15Wの薄型ノートPC向けとしては、最高クラスの性能のプロセッサーです。インテルプロセッサーと比較すると、TDP 45WのCore i7-10750Hと同じくらいのベンチマークスコアが出ています。
プロセッサー内蔵グラフィックスの中では、GPU性能も高く、軽めのゲームなら、グラフィック設定を落とすことで、60fps前後のフレームレートが出ています。
LightroomやPremiere Proとは相性が悪そうで、あまり書き出し時間は速くありませんでした。ただし、Premiere Proについては外部グラフィックスを搭載していれば、また結果は変わってくると思います。
このTDP 15Wのプロセッサーに、GeForceグラフィックスを搭載したモバイル向けゲーミングノートPCや、クリエイター向けノートPCが出てくれば面白いかなと思いました。
Ryzen 4000シリーズ搭載ノートPCはこちら
Ryzen 4000シリーズのプロセッサーを搭載したノートパソコンの一覧は、こちらをご覧ください。各製品のレビューもあります。
著者
櫻庭 尚良 (the比較 管理人)
1975年生まれ。電子・情報系の大学院を修了。
2000年にシステムインテグレーターの企業へ就職し、主にサーバーの設計・構築を担当。2006年に「the比較」のサイトを立ち上げて運営を開始し、2010年に独立。 毎年、50台前後のパソコンを購入して検証。メーカーさんからお借りしているパソコンを合わせると、毎年合計約150台のパソコンの実機をテストしレビュー記事を執筆。
関連ページ
ThinkPad T14 Gen 1
TDP 15Wとしては最強クラスのRyzen 7 PRO 4750Uを選択できるノートPC。Intelモデルもあり、こちらは4K液晶を選択可能。