Ryzen 3 4300Uのベンチマーク

更新日:2020年7月6日

 

ここでは薄型ノートPC向けのRyzen 3 4300Uのベンチマークスコアを掲載します。インテルのプロセッサーと比較した場合、第10世代のCore i7とほぼ同等の性能でした。ただし、ソフトによっては思ったほど処理が速くないケースもありました。

 

Ryzen 3 4300Uの仕様

Ryzen 3 4300Uは、7nmプロセスのZen 2アーキテクチャを採用したRyzen Mobile 4000 Uシリーズの1つで、その中でも下表のようにスペックは低めのプロセッサーとなります。先日レビューしたRyzen 7 4700Uと比較すると、コア数やキャッシュは半分になっています。

この仕様で、インテルCoreプロセッサーに、どこまで迫れるかを確認していきます。

Ryzen 4000 Uシリーズ プロセッサー仕様比較
  Ryzen 7 4700U Ryzen 5 4500U Ryzen 3 4300U
CPUコア数 8 6 4
スレッド数 8 6 4
最大ブースト
クロック
4.1 GHz 4.0 GHz 3.7 GHz
基本クロック 2.0 GHz 2.3 GHz 2.7 GHz
L2キャッシュ 4 MB 3 MB 2 MB
L3キャッシュ 8 MB 8 MB 4 MB
TDP 15W

 

なお、今回、ベンチマークの計測では、ThinkPad E14 Gen 2を使用しました。

 

Ryzen 3 4300Uのベンチマークスコア

CINEBENCH R20

まずは、CINEBENCH R20の結果を掲載します。マルチコアのスコアを見ると、Ryzen 3 4300Uは、「1558」というスコアでした。Ryzen 3 4300Uは、Ryzen 4000 Uシリーズの中では最も性能が低いのに、インテルの第10世代Core Uシリーズの中で最も性能が高いCore i7とほぼ同じもしくはそれ以上のスコアです。

Ryzenシリーズは、性能が上がるごとに3⇒5⇒7という数字がプロセッサー名に入り、Ryzen 3 4300Uだと、"3"が付くため低い性能のように感じますが、非常に高い性能で、一般ユーザーが、ブラウザー、Word、Excel、年賀ソフトなどを使うくらいであればストレスなく使うことができます。

CINEBENCH R20
Ryzen 3 4300U
他CPUとの比較(マルチコア)
Ryzen 9 4900HS 4250
Ryzen 7 4800H 3944
Ryzen 5 4600H 3260
Core i7-10750H 2965
Ryzen 7 4700U 2585
Ryzen 5 4500U 1997
Ryzen 3 4300U 1558
Ryzen 7 3700U 1526
Core i7-1065G7 1484
Core i7-10510U 1459
Core i5-1035G1 1424
Ryzen 5 3500U 1421
Core i5-10210U 1418
Core i3-10110U 922
Ryzen 3 3200U 751
他のCPUとの比較(シングルコア)
Core i9-10885H 514
Ryzen 9 4900HS 488
Ryzen 7 4700U 465
Ryzen 7 4800H 457
Ryzen 5 4600H 452
Core i7-10510U 444
Ryzen 3 4300U 430
Core i3-10110U 413
Ryzen 7 3700U 366

 

PassMark Performance Test 10.0

PassMark Performance Test 10.0についても高いスコアです。旧世代のRyzen 7 3700Uよりもスコアが高く大きな進歩を遂げています。

PassMark Performance Test 10.0(CPU MARK)
Ryzen 3 4300U
Ryzen 9 4900HS 20343
Ryzen 7 4800H 19080
Ryzen 7 4700U 14231
Core i7-10750H 12866
Ryzen 5 4500U 11010
Ryzen 3 4300U 8004
Ryzen 7 3700U 7431
Core i7-10510U 7235
Ryzen 5 3500U 7179
Core i5-10210U 6514
Core i3-10110U 4213
Ryzen 3 3200U 4166

 

Geekbench 5

Geekbench 5については思ったほどスコアは伸びず、第8世代のCore i5-8265Uを下回るスコアでした。

Geekbench 5
Ryzen 3 4300U
他CPUとの比較(Multi-Core)
Ryzen 9 4900HS 8129
Core i7-10875H 7447
Core i7-10750H 6030
Core i7-9750H 5784
Ryzen 7 4700U 5696
Core i7-10710U 5602
Core i7-1065G7 4019
Core i5-1035G1 3920
Core i5-10210U 3821
Core i5-8265U 3546
Ryzen 3 4300U 3411

 

クリエイターソフトの処理時間

以下、実際のソフトウェアで計測した各種処理時間です。

Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間

今回テスト使用しているPCのメモリは8GBです。ただし、Lightroom Classicはメモリが8GBだと現像時間が遅くなるので、このテストだけはメモリを換装して、8GBから20GB(オンボード4GB+スロット16GB)にしています。今回、4GBx2を超えるとシングルチャンネルの動作になる影響もあると思いますが、現像時間はあまり速くなかったです。8GBx2のメモリのノートPCを試す機会があれば、こちらは計測しなおしてみようと思います。

Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間
Core i9-10980HK
32GBメモリ
68秒
Core i7-10875H
16GBメモリ
70秒
Core i9-9980HK
16GBメモリ
79秒
Core i7-10750H
16GBメモリ
80秒
Core i7-9750H
16GBメモリ
85秒
Ryzen 9 4900HS
16GBメモリ
87秒
Ryzen 7 4700U
16GBメモリ
91秒
Ryzen 7 4800H
16GBメモリ
94秒
Core i7-10710U
16GBメモリ
96秒
Core i7-10510U
16GBメモリ
109秒
Ryzen 3 4300U
20GBメモリ
143秒
※プロファイル補正を適用した100枚のRAWファイル(1枚あたり約45MB)を同じ書き出し設定でjpegに書き出し、所要時間を計測
※「Lightroomにおすすめノートパソコン」の記事も興味があればご覧ください

 

Adobe Premiere Pro CCによる書き出し時間

Premiere Pro CCについては、FHD動画の書き出しはそこそこ速いですが、4K動画の書き出しについてはなぜか極端に時間がかかっていました。レンダリングバーも、FHDだと黄色ですが4Kだと赤色(レンダリングしないとプレビュー時にコマ落ちするという表示)になります。Premiere Proを使うなら、外部グラフィックスを搭載したノートPCがおすすめです。

Adobe Premiere Pro CCによる書き出し時間
4K動画の書き出し
Core i7-10750H/16GB
GeForce RTX 2060
4分51秒
Ryzen 5 4600H/32GB
GeForce GTX 1650
5分48秒 [レビュー機で計測]
Core i7-1060NG7/16GB
Intel Iris Plus
26分57秒
Core i7-10510U/16GB
Intel UHD
49分32秒
Ryzen 7 4700U/16GB
Radeon Graphics
約1時間30分
Ryzen 3 4300U/8GB
Radeon Graphics
約2時間15分
※ 4K/30p動画(約10分)に、「テキスト」+「露光量」+「自然な彩度」+「トランジション」のエフェクトおよびBGMとなるオーディオを加え、H.264形式、YouTube 2160p 4K Ultra HDのプリセットで書き出したときの時間
FHD動画の書き出し
Ryzen 7 4700U/16GB
Radeon Graphics
5分5秒
Ryzen 3 4300U/8GB
Radeon Graphics
6分44秒
Core i7-10510U/8GB
Intel UHD
16分54秒
※ FHD/30p動画(約10分)に、「テキスト」+「露光量」+「自然な彩度」+「トランジション」のエフェクトおよびBGMとなるオーディオを加え、H.264形式、YouTube 2160p 4K Ultra HDのプリセットで書き出したときの時間

 

TMPGEnc によるエンコード時間

TMPGEnc Video Mastering Works 7によるエンコード時間は、Core i7-10510Uよりも速かったです。

TMPGEnc Video Mastering Works 7によるエンコード時間 (x265)
※XAVC Sの動画(約2分、4K)をH.265/HEVCへ変換したときの時間(x265のエンコーダーを使用)
他CPUとの比較
Ryzen 9 4900HS 10分55秒
Ryzen 5 4600H 13分10秒
Core i7-10750H 13分29秒
Core i7-9750H 15分37秒
Ryzen 7 4700U 15分44秒
Core i7-10710U 19分05秒
Ryzen 3 4300U 25分22秒
Core i7-10510U 28分32秒
Core i5-10210U 28分53秒
Core i3-10110U 42分20秒
Core i3-8130U 45分24秒

 

グラフィックス関連のベンチマークスコア

次はグラフィックス関連のベンチマークスコアを掲載します。

3DMark Night RaidのGraphics scoreを見ると、Core i5-10210Uの内蔵グラフィックスよりも約1.7倍のスコアで、Core i5-1035G4の内蔵グラフィックスよりもやや良いスコアです。Core i7-1065G7のスコアには届きませんでしたが、Ryzen 4000 Uシリーズの中では最も性能の低いRyzen 3としては、健闘しているスコアだと思います。

3DMark Night Raid - Graphics score
AMD Radeon Graphics (Ryzen 3 4300U)
他のグラフィックスとの比較(Graphics score)
GeForce GTX 1050 25325
GeForce MX330 16714
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 9 4900HS)
16322
GeForce MX250 15406
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 7 4700U)
13861
Intel Iris Plus
(Core i7-1065G7)
11084
Radeon Vega 8
(Ryzen 5 3500U)
10014
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 3 4300U)
9800
Intel Iris Plus
(Core i5-1035G4)
9188
Intel UHD
(Core i5-10210U)
5800
Intel UHD 620
(Core i5-8265U)
5274

 

いくつかゲームのフレームレートも計測してみましたが、PUBG LITEやフォートナイトのような軽めのゲームなら、グラフィックス設定を低めにすれば、平均フレームレートが60fpsを超えてきます。ドラクエXのような非常に軽いゲームなら、最高設定でもゲームができるでしょう。

軽い部類のゲーム
PUBG LITE
1920x1080 非常に低い 63 fps
40 fps
ウルトラ 34 fps
他のグラフィックスとの比較(解像度:1920×1080、非常に低い)
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 9 4900HS)
144 fps
GeForce MX250 120 fps
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 7 4700U)
102 fps
AMD Radeon Vega 8 82 fps
Intel Iris Plus
(Core i7-1065G7)
80 fps
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 3 4300U)
63 fps
Intel UHD
(Core i7-10750H)
55 fps
Intel UHD 620
(Core i5-8265U)
45 fps
Intel UHD 615
(Core m3-8100Y)
35 fps
※トレーニングモードで計測
軽い部類のゲーム
フォートナイト
1920x1080 低設定 109 fps
中設定 54 fps
高設定 20 fps
最高設定 12 fps
※バトルラボで計測
軽い部類のゲーム
ドラゴンクエストX
1920x1080 最高品質 6777(快適)
他のグラフィックスとの比較(解像度:1920×1080、最高品質)
GTX 1650 19246
GeForce MX250 11900
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 9 4900HS)
10982
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 7 4700U)
9462
Intel Iris Plus
(Core i7-1065G7)
7968
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 3 4300U)
6777
Intel UHD
(Core i7-10750H)
6120
Intel UHD
(Core i7-10710U)
5984
Intel UHD
(Core i5-1035G1)
5655
Intel UHD
(Core i5-10210U)
5234
Intel UHD 615
(Core m3-8100Y)
2848
※約5500で60fps

 

プロセッサー内蔵GPUによるハードウェアエンコードについてはCore i7-1065G7よりも高速でした。

TMPGEnc 7によるエンコード時間(内蔵GPUによるエンコード)
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 9 4900HS)
56秒
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 7 4700U)
1分10秒
AMD Radeon Graphics
(Ryzen 3 4300U)
1分39秒
Intel Iris Plus
(Core i7-1065G7)
1分43秒
Intel UHD
(Core i5-1035G1)
2分13秒
Intel UHD
(Core i7-10750H)
2分48秒
Intel UHD
(Core i7-10710U)
3分02秒
Intel UHD
(Core i5-10210U)
3分06秒
Intel UHD 615
(Core m3-8100Y)
7分21秒

 

まとめ

Ryzen 3 4300Uは、Ryzen 4000 Uシリーズの中では、最も低い性能のプロセッサーとなりますが、インテル Core Uシリーズの上位プロセッサー「Core i7-10510U」とほぼ同等の性能となっています。内蔵グラフィックスについては「Core i5-1035G4」あたりと同じくらいの性能です。

Web閲覧や、Officeソフトの使用などを利用目的とする一般的なユーザーであれば、十分な性能です。実際に使ってみても、ストレスなく利用できます。

ただし、Lightroom、Premiere Proなどソフトや使う機能によっては、思ったほどのパフォーマンスが出ないケースもあります。そういった場合は、もっと上位のRyzen 4000シリーズや、インテルCoreプロセッサーを搭載したノートPC、または外部グラフィックスを搭載したノートPCなどがいいでしょう。

 

Ryzen 4000シリーズ搭載ノートPCはこちら

Ryzen 4000シリーズのプロセッサーを搭載したノートパソコンの一覧は、こちらをご覧ください。各製品のレビューもあります。

 

関連ページ