※当サイトはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。
Core Ultra 5 125Uのベンチマーク
ここでは、ノートPC向けのインテル Core Ultra プロセッサーの1つの「Core Ultra 5 125U」の各種ベンチマークスコアを掲載します。
このCPUは、末尾に「U」がついているCore Ultraプロセッサーで、末尾が「H」のプロセッサーと比べると、性能がやや落ちます。ただ、末尾が「H」のプロセッサーと同様に、NPUを搭載しているので、アプリがNPUに対応していけばAI関連の処理が高速化するでしょう。また、低消費電力版Eコアを搭載しているので、低負荷時は省電力で、バッテリー駆動時間も長めになるというメリットがあります。
プロセッサーの仕様
まず、第13世代Coreの後に発表された「シリーズ1」世代のプロセッサーを下表に掲載します(2024年3月現在)。最も性能が高いのはCore UltraのHシリーズで、次がCore UltraのUシリーズ、そしてその次が、Ultraが付かないCoreプロセッサーとなっています。
今回テストした「Core Ultra 5 125U」は、真ん中のCore Ultra Uシリーズで、Core Ultra Hシリーズと比べると、Processor Base Power(PBP)が15Wもしくは9Wと低くなっており、GPUも、Intel ArcではなくIntel Graphicsとなっています。ただし、低消費電力版Eコア(LP-Eコア)とNPUは搭載しており、ここはCoreプロセッサーとは差別化されています。
Core Ultra H | Core Ultra U | Core | |
Processor Base Power | 28W | 9W 15W |
15W |
Maximum Turbo Power | 64W or 115W | 30W 57W |
55W |
LP-Eコア | あり | あり | なし |
NPU | あり | あり | なし |
GPU | Intel Arc | Intel Graphics (Xe-LPG) |
Intel Graphics (Xe-LP) |
Core Ultra Uシリーズのプロセッサーはいくつかありますが、代表的なものを以下に掲載します。今回テストする「Core Ultra 5 125U」は、最大クロックなどはそこまで高くありませんが、Processor Base Power(PBP)は15Wあります。一般的なユーザーであれば、十分な性能でしょう。
グラフィックスについては、第13世代Coreでは「Xe-LP」アーキテクチャの内蔵GPUでしたが、Core Ultra 5 125Uは「Xe-LPG」アーキテクチャの内蔵GPUを搭載しており、性能がやや上がっています。
Core Ultra 7 165U | Core Ultra 7 155U | Core Ultra 7 164U | Core Ultra 5 135U | Core Ultra 5 125U | Core Ultra 5 134U | |
Pコア | 2 | |||||
Eコア | 8 | |||||
LP Eコア | 2 | |||||
Pコア最大クロック | 4.9GHz | 4.8GHz | 4.4GHz | 4.3GHz | 4.4GHz | |
Eコア最大クロック | 3.8GHz | 3.6GHz | ||||
L3キャッシュ | 12MB | |||||
GPU | Intel Graphics(Xe-LPG) | |||||
GPU最大クロック | 2.0GHz | 1.95GHz | 1.8GHz | 1.9GHz | 1.85GHz | 1.75GHz |
GPU Xe コア | 4 | |||||
NPU | Intel AI Boost | |||||
PBP ※1 | 15W | 9W | 15W | 9W | ||
MTP ※2 | 57W | 30W | 57W | 30W |
※2 MTP:Maximum Turbo Power
ベンチマークの計測に利用したノートPC
今回、ベンチマークに使用したノートPCは、次の機種です。
このノートPCに、CPU使用率が100%になる高い負荷をかけたときのCPU電力は、次の図の通りです。なお、高いパフォーマンスが出る「エクストリーム・パフォーマンス」で計測しています。
PBPが15Wのプロセッサーですが、安定動作時のCPU電力は約30Wで推移しています。Core Ultra 5 125Uの中では比較的高いパフォーマンスが出る機種だと思います。
CPU関連のベンチマークスコア
以下、各種ベンチマークソフトのスコアおよび他のプロセッサーと比較したグラフを掲載します。
なお、棒グラフについて、Core Ultra 5 125Uのスコアは緑色にしています。また、今回特に比較したいインテル Core(シリーズ1)のCore 5 120Uのスコアはオレンジ色にしています。
CINEBENCH R23
以下に、CPUレンダリングを行いCPU性能を評価するベンチマークソフト、CINEBENCH R23のスコアを掲載します。
マルチコアのスコアを見ると、PBPが28Wと高いCore i7-1360Pに近いスコアが出ています。一般的な用途であれば十分な性能です。Core 5 120Uと比較した場合は、ほぼ同等のスコアでした。
ただし、シングルコアのスコアに関しては、Core 5 120Uよりも低めでした。
CINEBENCH 2024
次は、CINEBENCHの最新版、CINEBENCH 2024のスコアです。
こちらも、Core Ultra 5 125Uは、マルチコアスコアはCore 5 120Uとほぼ同等でしたが、シングルコアスコアはCore 5 120Uよりも低めでした。
Geekbench 6
続いて、拡張現実や機械学習などの最先端の処理を取り入れているクロスプラットフォームのベンチマークソフト、Geekbench 6のスコアを掲載します。先のCINEBENCHは、処理を開始してから10分経過後にスコアを計測するのに対し、Geekbenchはすぐにスコアを計測し始めるので、最初のブースト時のCPU電力が高めのプロセッサーのほうがスコアが出やすくなっています。
こちらも、マルチコアのスコアは高めですが、シングルコアのスコアは低めでした。それでも、Zen3+のRyzen 7 7730U以上のスコアはありました。
PassMark Performance Test 11
続いて、圧縮、暗号化、物理シミュレーションなどを含む数学的計算を行うPassMark Performance Test 11のスコアを掲載します。
Core Ultra 5 125Uは、Core 5 120UやCore i5-1340Pとほぼ同等のスコアで、比較的高いです。
グラフィックス関連のベンチマークスコア
次はグラフィックス関連のベンチマークスコアを掲載します。
なお、グラフィックス性能はメインメモリの速度にも影響され、メモリの帯域が広いとグラフィックス性能も高くなります。今回のPCに搭載されていたメモリは、DDR5-5600で十分な帯域があります。
3DMark Night Raid
3DMark Night Raidのスコアは以下の通りです。「グラフィックスのスコア」の部分が、グラフィック性能を評価する指標となります。
2024.3.28 追記:スコアに間違いがありましたので修正させていただきました。申し訳ございません。
Core Ultra 5 125Uの内蔵グラフィックスはIntel Graphicsです。スコアを見ると、Core 5 120Uよりやや高い程度の数値です。Core i7-1360Pとそこまで変わりありません。
Core UltraのHシリーズのCore Ultra 7 155Hに内蔵されているIntel Arc GPUと比較すると、6割程度のスコアしかありません。
~ グラフィックス性能の評価 ~
ゲーミング性能
以下、ゲームをしたときのフレームレートを掲載します。比較的軽めのゲームを選んで検証しています。
今回、テストに用いたPCの画面比が16:10だったので、解像度は1920x1080ではなく1920x1200で計測しています。また、CPU内蔵グラフィックスでゲームをする場合、数分経つとフレームレートが大きく落ちるケースがあります。そのため、10分くらい普通にゲームをしたりベンチを回したりした後、実際にフレームレートを計測しています。
ファイナルファンタジー 14 暁月の終焉
「ファイナルファンタジー 14 暁月の終焉」のベンチマークのスコアは下の通りです。
標準品質で、47 fpsの平均フレームレートが出ています。ゲームを快適に行うには、もう少しフレームレートが欲しいところです。Intel Arc Graphicsを内蔵したCore Ultra Hプロセッサーであれば、60 fpsを大きく超えるフレームレートが出ていたので、FF14をするならこちらのCPUのほうがおすすめです。
ファイナルファンタジー 14 暁月のフィナーレ(DX11)
|
||
---|---|---|
解像度 | 品質 | 平均 fps |
1920x1200 | 標準品質 | 47 fps / 6937 |
ブループロトコル
ブループロトコルについては、55 fpsの平均フレームレートでした。Core 5 120Uを搭載したPCは35 fpsしか出なかったので、想定よりもかなり高いフレームレートが出ていました。計測間違いかと思い、どちらのPCも何度か計測しましたが、結果はほぼ変わりませんでした。どちらも名称は同じIntel Graphicsですが、Core 5 120Uは、「Xe-LP」アーキテクチャの内蔵GPUであるのに対し、Core Ultra 5 125Uは、「Xe-LPG」アーキテクチャの内蔵GPUなので、ゲームによっては高いフレームレートが出るケースもあります。
ブループロトコル
|
||
---|---|---|
解像度 | 品質 | 平均 fps |
1920x1200 | 低画質 | 55 fps / 7617 |
原神
原神は、グラフィック品質設定を「最低」にすると60 fpsが出ていました。画質の悪さを気にしなければプレイできると思います。ただし、「中」に上げると36 fpsまで下がり、Core 5 120Uよりも低い平均フレームレートでした。
原神
|
||
---|---|---|
解像度 | グラフィック品質 | 平均 fps |
1920x1200 | 最低 | 60 fps |
低 | 45 fps | |
中 | 36 fps |
ドラゴンクエストX
ドラゴンクエストXについても、Core Ultra 5 125Uは、Core 5 120Uを大きく上回るスコアが出ていました。快適にゲームができるでしょう。
ドラゴンクエストX
|
||
---|---|---|
解像度 | 品質 | 平均 fps |
1920x1080 | 最高品質 | 14258(すごく快適) |
クリエイターソフトの処理時間
次に、クリエイター向けソフトで計測した各種処理時間を掲載します。
Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間
Adobe Lightroom Classicにおいて、100枚のRAW画像について、露光量、シャドウなどのパラメーターを変更し、書き出した時の時間が下表の通りです。
そこまで速くはありませんが、十分待てる時間です。Core 5 120Uと比較しても同じくらいの現像時間でした。
実際の現像作業については、重い処理だとややもたつきを感じるときもありますが、趣味で使う分には問題ない性能です。
Adobe Premiere Pro CCによる書き出し時間
Adobe Premiere Proで、FHD/30pの動画を簡単に編集して書き出した時の時間は下表の通りです。
Core 5 120Uよりも遅かったですが、待てない時間ではありません。FHD/30pのカット編集くらいならできるでしょう。ただ、頻繁に動画編集をするなら、もっと上位のCPUまたは外部グラフィックスを搭載したPCのほうがいいと思います。
Adobe Photoshopの処理時間
PhotoshopのAIを使ったニューラルフィルターを実行してみましたが、他のCPUと比べて時間がかかっていました。ただ、PhotoshopはまだNPUに対応していないので、AIに関する処理をNPUとGPUが協調して行うようになれば、もっと高速化すると思います。
TMPGEnc によるエンコード時間
TMPGEnc Video Mastering Works 7によるソフトウェアエンコードにかかった時間は次の通りです。なおこの処理は、CPUで処理します。
Core i7-1360Pとほぼ同じ書き出し時間だったので、十分高速です。
(ソフトウェアエンコード)
次に、ハードウェアエンコードの処理時間ですが、こちらは、Core 5 120Uなどと比べるとかなり高速でした。
(ハードウェアエンコード)
省電力性能
ここでは、Core Ultra 5 125U搭載PCと、Core 5 120U搭載PCについて、動画再生時のバッテリー駆動時間を計測し、それぞれ搭載されているバッテリー容量で割り、単位バッテリー容量当たりのバッテリー駆動時間を求めました。
下表の通り、低消費電力版Eコア(LP-Eコア)を搭載しているCore Ultra 5 125UのPCのほうが、単位バッテリー容量当たりのバッテリー駆動時間が長かったです。
バッテリー駆動時間重視なら、Core Ultra 5 125Uはおすすめです。
Core Ultra 5 125U搭載PC (ThinkBook 14 Gen 7) |
Core 5 120U搭載PC ( Inspiron 14 5440) |
|
動画再生時のバッテリー駆動時間 ※ | 14時間17分 | 14時間10分 |
バッテリー容量 | 45W | 54W |
単位バッテリー容量当たりの バッテリー駆動時間 |
19.0分 | 15.7分 |
※ 画面輝度は約120cd/m2でテスト
NPUの性能について
NPUの性能を確認するにあたっては、こちらで公開されているOpenVINO AI Pluginsを使った、GIMPでのStable DiffusionによるAI画像生成を試しました。
ここでは、「SD1.5 Squre Int8」のモデルで、以下のような設定で画像を生成しました。なお、以前は、各プロセスについて、CPU、GPU、NPUを指定できましたが、現在は指定できないようです。
ログを見ると、NPUが搭載されているPCは、unet-neg Device(どんな画像を作らないかの計算処理を行うデバイス)にNPUが指定されていました。また、NPUが搭載されていないPCは、ここにGPUが指定されていました。
結果はご覧のとおりです。Core Ultra 5 125UにはNPUが搭載されていることで、Core 5 120Uの約半分の時間で終わっていました。
今後、色々なアプリのAI処理が、NPUに対応していけば、高速化するものが増えていくと思われます。
Text Device: CPU
unet Device: GPU
unet-neg Device: NPU
VAE Device: GPU
※2 各プロセスにおいて使用されたデバイスは以下の通り
Text Device: CPU
unet Device: GPU
unet-neg Device: GPU
VAE Device: GPU
まとめ
今回、インテル Core Ultra プロセッサーのUシリーズの1つ「Core Ultra 5 125U」のベンチマークスコアなどを計測しました。
CPU性能については、マルチコア性能はまずまずでしたが、シングルコア性能はやや低めでした。
グラフィックには、Xe-LPGの内蔵グラフィックスを搭載しています。3DMarkを見るとCore 5 120Uより若干良い程度のスコアでしたが、各ゲームのフレームレートを確認すると、Core Ultra 5 125Uのほうが大きく高いケースがありました。
Core Ultra 5 125Uは、LP-Eコアが搭載されているため、単位バッテリー容量当たりのバッテリー駆動時間が長かったです。Core Ultra Hシリーズほどの処理性能は必要無いけれど、できるだけバッテリー駆動時間の長いモバイルノートPCが欲しい場合におすすめです。
また、NPUを搭載していることで、AI生成も高速でした。まだNPUに対応したアプリは少ないですが、これから増えていけば、AIを使った処理が省電力かつ高速化していくことでしょう。
1975年生まれ。電子・情報系の大学院を修了。
2000年にシステムインテグレーターの企業へ就職し、主にサーバーの設計・構築を担当。2006年に「the比較」のサイトを立ち上げて運営を開始し、2010年に独立。
毎年、50台前後のパソコンを購入して検証。メーカーさんからお借りしているパソコンを合わせると、毎年合計約150台のパソコンの実機をテストしレビュー記事を執筆。
関連ページ