※当サイトはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。
Ryzen 7 7735Uのベンチマーク
ここでは、ノートPC向けのAMD Ryzen 7000シリーズの1つ「Ryzen 7 7735U」の各種ベンチマークスコアを掲載します。
プロセッサーの仕様
下表のように、ノートPC向けプロセッサーのAMD Ryzen 7000シリーズは、大きく分けると5つに分類されます。デスクトップCPUを置き換えたRyzen 7045シリーズ、主にゲーミングノートPCに採用されるRyzen 7040シリーズ、プレミアムノートPCに採用されるRyzen 7035シリーズ、主にモバイルノートに採用されるRyzen 7030シリーズ、低価格ノートPCに採用されるRyzen 7020シリーズです。
「Ryzen 7 7735U」は、この中のRyzen 7035シリーズの1つで、CPU世代はZen 3+、デフォルトTDPは28Wとなっています。末尾に「U」が付くプロセッサーの中では、高い性能です。
CPU世代 | 開発コードネーム | 製造プロセス | 末尾 | デフォルトTDP | |
Ryzen 7045シリーズ | Zen 4 | Dragon Range | 5nm | HX | 55W |
Ryzen 7040シリーズ | Zen 4 | Phoenix | 4nm | HS | 35-54W |
Ryzen 7035シリーズ | Zen 3+ | Rembrandt-R | 6nm | HS/U | 35-54W/28W |
Ryzen 7030シリーズ | Zen 3 | Barcelo-R | 7nm | U | 15W |
Ryzen 7020シリーズ | Zen 2 | Mendocino | 6nm | U | 15W |
Ryzen 7035シリーズは、現時点で次の3つがありますが、「Ryzen 7 7735U」は8コア16スレッドの高い性能です。グラフィックスについても、Radeon 680Mを内蔵し、GPUコア数も12と多く、CPUだけでなくグラフィックスの性能も高いです。
Ryzen 7 7735U | Ryzen 5 7535U | Ryzen 3 7335U | |
コア / スレッド数 | 8 / 16 | 6 / 12 | 4 / 8 |
最大クロック | 4.75GHz | 4.55GHz | 4.3GHz |
基本クロック | 2.7GHz | 2.9GHz | 3.0GHz |
デフォルトTDP | 28W | ||
グラフィックス・モデル | Radeon 680M | Radeon 660M | |
GPUコア数 | 12 | 6 | 4 |
なお、Ryzen 6000シリーズに「Ryzen 7 6800U」というプロセッサーもありますが、Ryzen 7 7735Uは、最大ブーストクロックがわずかに高いだけで、それ以外の主要な仕様は一緒となっています。この2つのプロセッサーは、ほぼ一緒の性能だと思ってかまいません。
Ryzen 7 7735U | Ryzen 7 6800U | |
CPUアーキテクチャ | Zen 3+ | Zen 3+ |
製造プロセス | 6nm | 6nm |
コア / スレッド | 8 / 16 | 8 / 16 |
基本クロック | 2.7GHz | 2.7GHz |
最大ブーストクロック | 4.75GHz | 4.7GHz |
L3キャッシュ | 16MB | 16MB |
TDP (cTDP) | 28W | 15-28W |
グラフィックス・モデル | Radeon 680M | Radeon 680M |
GPUコア数 | 12 | 12 |
グラフィックス周波数 | 2200MHz | 2200MHz |
メモリ | DDR5-4800 LPDDR5-6400 |
DDR5-4800 LPDDR5-6400 |
ベンチマークの計測に利用したノートPC
今回、ベンチマークに使用したノートPCは、次のモバイルノートPCです。モバイルノートPCは、TDPが15Wのプロセッサーが搭載されることが多いですが、この機種は28Wのプロセッサーを搭載し、モバイルノートPCの中では高い性能です。
1kgを切る軽さが魅力のモバイルノートパソコン。さらに、価格も安い。プロセッサーは28WのRyzen 7035 シリーズを搭載し高い性能。
このノートPCに、Prime95で全CPUコアの使用率が100%になる高い負荷をかけたときのCPU電力の推移は、次の図の通りです。
安定動作時のCPU電力は25Wでした。モバイルノートPCということもあり、デフォルトTDPの28Wでは動作していなかったため、Ryzen 7 7735Uとしてはやや低めのベンチマークスコアになると思われます。大きく性能が変わるわけではありませんが、そのあたりを考慮して、記事を読んでいただければと思います。
ベンチマークスコア
以下、各種ベンチマークソフトのスコアおよび他のプロセッサーと比較したグラフを掲載します。
グラフは、Ryzen 7 7735Uのスコアを緑色にしています。また、特に比較したいライバルのインテルプロセッサー、Core i7-1360P(PBP:28W)をオレンジ色にしています。
CINEBENCH R23
まずは、CPUレンダリングを行いCPU性能を評価するベンチマークソフト、CINEBENCH R23のスコアを掲載します。
Ryzen 7 7735Uは、マルチコアに関しては比較的スコアが高く、Core i7-1360Pよりも高いスコアとなっています。一方でシングルコアに関しては、Core i7-1360Pよりも大分低くなっています。
なお、Ryzen 7 6800Uとはほぼ一緒のスコアです。
~ CPU性能の評価 ~
Geekbench 6
続いて、拡張現実や機械学習などの最先端の処理を取り入れているクロスプラットフォームのベンチマークソフト、Geekbench 5のスコアを掲載します。
こちらも、CINEBENCHと同様に、マルチコアのスコアは高めですが、シングルコアのスコアはそうでもありません。
PassMark Performance Test 10.0
続いて、圧縮、暗号化、物理シミュレーションなどを含む数学的計算を行うPassMark Performance Test 10.0のスコアを掲載します。
Passmarkに関しても、Ryzen 7 7735Uは高めのスコアでした。
グラフィックス関連のベンチマークスコア
次はグラフィックス関連のベンチマークスコアを掲載します。
なお、今回のPCに搭載されていたメモリは、LPDDR5-6400です。ただ、帯域の実測値は35.33GB/sと、この規格のメモリの割には、そこまで広い帯域ではありませんでした。普通の帯域だと思います。
3DMark Night Raid
3DMark Night Raidのスコアは以下の通りです。「グラフィックスのスコア」の部分が、グラフィック性能を評価する指標となります。
Ryzen 7 7735Uは、CPU内蔵のグラフィックスとしては、非常に性能が高く、GeForce MX450の外部グラフィックスとほぼ一緒のスコアが出ています。
また、Core i7-1360Pと比較すると、約30%も高いスコアになっています。
ファイナルファンタジー 14 暁月の終焉
次に、「ファイナルファンタジー 14 暁月の終焉」のベンチマークのスコアを掲載します。なお、1920x1080、標準品質(ノートPC)で計測しています。
Ryzen 7 7735Uのスコアは8003、平均フレームレートは58 fpsでした。今回、そこまで放熱性の高いPCではないので、長時間ゲームをしていくと、フレームレートが下がっていく可能性もありますが、十分プレイ出来るフレームレートが出ていると思います。
フォートナイト
フォートナイトについては、レンダリングモードを「パフォーマンス - 低グラフィック忠実度」にして計測しました。バトルロワイヤル ソロで、数分間プレイしてみましたが、平均フレームレートは68 fpsでした。悪くないフレームレートではありますが、戦闘をしたり、メガシティのような場所へ行くと、30fpsくらいに落ち込んでカクつくこともあり、あまり快適とは言えませんでした。3D解像度や描画距離などの設定をもっと下げるとフレームレートは安定してきますが、フォートナイトをするなら、外部グラフィックスを搭載したPCがおすすめです。
中程度の重さのゲーム
フォートナイト [チャプター4 シーズン2]
|
||
---|---|---|
解像度 | その他設定 | 平均fps |
1920x1200 | 3D解像度:100% メッシュ:高 描画距離:最高 |
68 fps |
原神
原神は、デフォルトの中設定だと、たまにカクつくときがありますが、バトルロワイヤルゲームのように少しのフレームレートの低下が致命的になるゲームでもないので、そこそこプレイできると思います。また、低設定に下げれば、フレームレートが安定して、割と快適にプレイできていました。
軽い部類のゲーム
原神
|
||
---|---|---|
解像度 | グラフィック品質 | 平均fps |
1920x1200 | 最低 | 60 fps(最大) |
低 | 58 fps | |
中 | 43 fps |
VALORANT
VALORANTについては、プラクティスモードでの計測になりますが、高い平均フレームレートが出ていました。カジュアルにゲームをするなら、問題ないと思います。
軽い部類のゲーム
VALORANT
|
||
---|---|---|
解像度 | 品質 | 平均fps |
1920x1200 | 低設定 | 175 fps |
ドラゴンクエストX
ドラゴンクエストXについても、高いスコアでした。こちらも問題なくできるでしょう。
軽い部類のゲーム
ドラゴンクエストX
|
||
---|---|---|
解像度 | 品質 | スコア |
1920x1080 | 最高品質 | 10641(すごく快適) |
クリエイターソフトの処理時間
次に、クリエイター向けソフトで計測した各種処理時間を掲載します。
Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間
Adobe Lightroom Classicを使い、100枚のRAW画像について、露光量、シャドウなどのパラメーターを変更し、書き出した時の時間は下表の通りです。
実用上十分な速度ではありますが、Core i7-1360Pと比較するとやや遅いです。
※プロファイル補正、露光量+1、シャドウ+10、自然な彩度+10、ノイズ軽減+10を適用した100枚のRAWファイル(1枚あたり約45MB)を同じ書き出し設定でjpegに書き出し、所要時間を計測
:レビュー機で計測したスコア(他のスコアは別のPCで計測した代表値)
Adobe Premiere Pro CCによる書き出し時間
Adobe Premiere Proで、FHD/30pの動画を簡単に編集して書き出した時の時間は下表の通りです。
十分待てる書き出し時間ではありますが、こちらもCore i7-1360Pほどは速くありませんでした。
Adobe Photoshopの処理時間
Photoshopの中では重い処理であるニューラルフィルターを実行しました。グラフィックス性能が高めなので、GPU支援を使って処理する「スーパーズーム(x2)」の処理が速かったです。ただ、JPEGのノイズを削除の処理いついてはそれほど速くありませんでした。
Ryzen 7 7735U | Core i7-1260P | |
ニューラルフィルター(肌をスムーズに) | 約3秒 | 約3秒 |
ニューラルフィルター(スーパーズーム(x2)) | 約2分42秒 | 約4分28秒 |
ニューラルフィルター(JPEGのノイズを削除) | 約4分15秒 | 約2分48秒 |
TMPGEnc によるエンコード時間
TMPGEnc Video Mastering Works 7によるソフトウェアエンコードにかかった時間は次の通りです。なおこの処理は、グラフィックスは使用せず、CPUで処理します。
マルチコア性能が高いだけあって、Ryzen 7 7735Uは速い書き出しでした。
(ソフトウェアエンコード)
次に、ハードウェアエンコードの処理時間を掲載します。こちらの速度も速く、Core i7-1360Pよりもかなり短い時間で処理が終わっていました。
(ハードウェアエンコード)
まとめ
今回、Ryzen 7 7735Uのベンチマークスコアなどを計測しました。
マルチコア性能は非常に高く、ソフトウェアエンコードなどは非常に高速です。ただし、シングルコア性能はそれほどでもないので、処理によってはそこまで速くないケースもあると思います。
グラフィック性能については、CPU内蔵グラフィックスとしては非常に高く、軽いゲームであれば、割と快適にプレイできるフレームレートが出ていました。
Core i7-1360Pと比較した場合、Ryzen 7 7735Uはマルチコア性能が高い分、速く終わる処理が多かったですが、クリエイター向けソフトについてはCore i7-1360Pのほうが速いケースもありました。グラフィック性能については、Ryzen 7 7735Uのほうが高いので、ゲームなどをするのであれば、Ryzen 7 7735Uのほうがいいでしょう。また、Core i7-1360P搭載PCと比べて、Ryzen 7 7735U搭載PCのほうが安い傾向があるので、コストパフォーマンスを考えたら、Ryzen 7 7735Uのほうがいいと思います。
1975年生まれ。電子・情報系の大学院を修了。
2000年にシステムインテグレーターの企業へ就職し、主にサーバーの設計・構築を担当。2006年に「the比較」のサイトを立ち上げて運営を開始し、2010年に独立。
毎年、50台前後のパソコンを購入して検証。メーカーさんからお借りしているパソコンを合わせると、毎年合計約150台のパソコンの実機をテストしレビュー記事を執筆。
関連ページ