Ryzen 7 6800Hのベンチマーク

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ここでは、ノートPC向けのAMD Ryzen 6000シリーズプロセッサーの1つであるRyzen 7 6800Hの各種ベンチマークスコアを掲載します。

 

Ryzen 7 6800Hの仕様

ノートPC向けのAMD Ryzen 6000シリーズは、6nmプロセスの「Zen 3+」のCPUアーキテクチャ、「RDNA 2」のGPUアーキテクチャを搭載したプロセッサーで、CPU性能に関しては最大1.3倍、GPU性能に関しては最大2倍向上すると、AMDはアナウンスしています。特にCPU内蔵グラフィックスに、Radeon 680Mを搭載し、GPU性能が大きくアップしています。

Ryzen 7 6800Hは、ノート向けAMD Ryzen 6000シリーズの中でも、ハイクラスに位置づけられる「Hシリーズ」のプロセッサーで、TDPは45Wと高く、主にゲーミングノートPCやクリエイター向けノートPCに搭載されます。

Ryzen 7 6800Hと従来のRyzen 7 5800Hとの比較
  Ryzen 7 6800H Ryzen 7 5800H
CPUアーキテクチャ Zen 3+ Zen 3
コア / スレッド 8 / 16 8 / 16
基本クロック 3.2GHz 3.2GHz
最大ブーストクロック 4.7GHz 4.4GHz
L3キャッシュ 16MB 16MB
TDP 45W 45W
グラフィックス・モデル Radeon 680M Radeon Graphics
GPUコア数 12 8
グラフィックス周波数 2200MHz 2000 MHz

 

ベンチマークの計測に利用したノートPC

今回、ベンチマークに使用したノートPCは、ASUS TUF Gaming 17です。GeForce RTX 3050 Tiの外部グラフィックを搭載したモデルですが、今回は、CPU内蔵グラフィックスの性能も測りたいため、GeForce RTX 3050 Tiは無効化し、CPU内蔵グラフィックスのみ動作するようにしています。

 

CPU関連のベンチマークスコア

以下、各種ベンチマークソフトのスコアを掲載します。

CINEBENCH R23

まずはCPUレンダリングを行ってCPU性能を評価する定番のベンチマークソフト、CINEBENCH R23のスコアはご覧の通りです。

Ryzen 7 6800Hは、1つ前の世代のRyzen 7 5800Uと比較すると、マルチコアのスコアは約11%、シングルコアのスコアは約6%上がっています。Ryzen 9 5900HXよりも高いスコアが出ており、前の世代よりも着実に性能は上がっています。

ただ、ライバルCPUのインテルのCore i7-12700Hと比較すると、マルチコアおよびシングルコアともに、Ryzen 7 6800Hのほうが、約25%もスコアが低くなっています。2022年に登場したインテルとAMDの同じクラスのCPU(HシリーズのRyzen 7とCore i7)を比べると、インテルのほうが速そうです。

CINEBENCH R23
~ CPU性能の評価 ~
Ryzen 7 6800H
他のCPUとの比較(マルチコア)
Core i9-12900H 19223
Core i9-12900HK 17767
Core i7-12700H 16389
Ryzen 7 6800H 13999
Ryzen 9 5900HX 13382
Core i9-11900H 13266
Ryzen 7 5800H 12604
Apple M1 Max/Pro
10コアCPU
12359
Core i7-11800H 11893
Core i7-1280P 11801
Ryzen 7 5825U 10040
Ryzen 7 5800U 9429
Ryzen 5 5600H 9255
Core i5-11400H 8514
Ryzen 5 5600U 8491
Ryzen 7 5700U 8445
Core i5-1240P 8409
Ryzen 5 5625U 8107
Core i7-1195G7 6594
Ryzen 5 5500U 6250
Core i7-1185G7 6229
Core i7-1165G7 4720
Core i5-1135G7 4424
他のCPUとの比較(シングルコア)
Core i9-12900H 1920
Core i9-12900HK 1918
Core i7-12700H 1823
Core i7-1280P 1664
Core i7-1195G7 1634
Core i9-11900H 1570
Apple M1 Max/Pro
10コアCPU
1531
Ryzen 7 6800H 1522
Core i7-1185G7 1517
Core i7-11800H 1511
Core i5-1240P 1483
Ryzen 9 5900HX 1463
Ryzen 7 5825U 1460
Core i7-1165G7 1447
Core i5-11400H 1442
Ryzen 7 5800H 1435
Ryzen 7 5800U 1429
Ryzen 5 5625U 1383
Ryzen 5 5600U 1369
Ryzen 5 5600H 1354
Core i5-1135G7 1294
Ryzen 7 5700U 1264
Ryzen 5 5500U 1185

 

Geekbench 5

続いて、拡張現実や機械学習などの最先端の処理を取り入れているクロスプラットフォームのベンチマークソフト、Geekbench 5のスコアを掲載します。

Ryzen 7 6800HのGeekbenchのスコアはそこまで高くなく、マルチコアとシングルコアの両方において、Core i7-12700Hはもとより、TDP:28WのCore i7-1280Pよりも低いスコアでした。

Geekbench 5
Ryzen 7 6800H
他CPUとの比較(Multi-Core)
Apple M1 Max/Pro
10コアCPU
12758
Core i7-12700H 11027
Core i7-1280P 11023
Ryzen 7 6800H 9422
Core i5-1240P 9246
Core i9-11900H 7831
Ryzen 9 5900HX 7306
Ryzen 7 5800H 7288
Core i7-11800H 7215
Ryzen 7 5800U 6642
Ryzen 7 5700U 6097
Core i7-1165G7 5491
他CPUとの比較(Single-Core)
Apple M1 Max/Pro
10コアCPU
1784
Core i7-12700H 1763
Core i7-1280P 1652
Core i9-11900H 1576
Core i7-1165G7 1573
Core i7-11800H 1547
Ryzen 7 6800H 1529
Ryzen 9 5900HX 1496
Core i5-1240P 1463
Ryzen 7 5800H 1427
Ryzen 7 5800U 1415
Ryzen 7 5700U 1165

 

PassMark Performance Test 10.0

続いて、圧縮、暗号化、物理シミュレーションなどを含む数学的計算を行うPassMark Performance Test 10.0のスコアを掲載します。

PassMarkについては、Core i7-12700Hに近い高いスコアが出ていました。1世代前のRyzen 9 5900HXよりも高いスコアです。

PassMark Performance Test 10.0(CPU MARK)
Ryzen 7 6800H
他CPUとの比較(CPU MARK)
Core i7-12700H 26616
Ryzen 7 6800H 25804
Ryzen 9 5900HX 24642
Core i7-1280P 23073
Core i7-11900H 21979
Ryzen 7 5800H 21783
Core i7-11800H 21328
Ryzen 7 5800U 19611
Ryzen 7 4800H 19080
Core i5-1240P 17582
Ryzen 7 5700U 17071
Core i7-1165G7 12552

 

グラフィックス関連のベンチマークスコア

次はグラフィックス関連のベンチマークスコアを掲載します。

Ryzen 7 6800Hは、GeForce RTX 30シリーズなどの外部グラフィックスを搭載したゲーミングノートPCやクリエイターPCで使用されることが多いプロセッサーです。

ただ、Ryzen 6000シリーズでは、グラフィック性能が大きく向上しており、CPU内蔵グラフィックスでも、ある程度ゲームができるような性能になっています。今後、一部のモデルでは、外部グラフィックスを搭載しないモデルも登場すると思われます。

今回、テストに使用しているPCは、GeForce RTX 3050 Tiの外部グラフィックスを搭載していますが、今回はこれを無効化し、CPU内蔵グラフィックスのみ動くようにして、各種ベンチマークを計測してみました。

 

3DMark Night Raid

3DMark Night Raidのスコアは以下の通りです。

1世代前のRyzen 7 5800Hは16,440のスコアで、Vega世代のグラフィックスを搭載したプロセッサーはいずれもこのくらいのスコアでしたが、Ryzen 7 6800Hは、30,197ものグラフィックスコアが出ており、約1.8倍も高いスコアでした。また、競合するCore i7-12700Hと比較しても、約1.5倍も高いスコアです。

GeForce MX450と同じくらいのスコアが出ており、このくらいの性能があれば、軽めのゲームなら比較的快適に動かすことが可能です。

3DMark Night Raid
Ryzen 7 6800H(CPU内蔵グラフィックス)
他のグラフィックスとの比較(Graphics score)
GeForce GTX 1650 45149
GeForce MX450 30425
Ryzen 7 6800H
メモリDDR5-4800
30197
Core i7-1280P
メモリDDR4-3200
21606
Core i7-12700H
メモリDDR4-3200
20177
Core i7-1165G7
メモリLPDDR4X-4266
20052
Core i5-1135G7
メモリLPDDR4X-4266
18718
Ryzen 7 5800U
メモリLPDDR4X-4266
17020
Ryzen 7 5800H
メモリDDR4-3200
16440
Core i5-1240P
メモリLPDDR5-4800
16398
Ryzen 7 5700U
メモリDDR4-3200
16272
Core i7-1165G7
メモリDDR4-3200
14247
Core i5-1135G7
メモリDDR4-3200
13316
Ryzen 5 5500U
メモリDDR4-3200
12154
Core i3-1115G4
メモリDDR4-3200
11487

 

ファイナルファンタジー 14 暁月の終焉

続いて、実際のゲームをテストしています。

まずは、ファイナルファンタジー 14 暁月の終焉のベンチマークのスコアを下に掲載します。1920x1080、標準品質(ノートPC)で計測して、スコアで8370、平均フレームレートで59fps出ていました。Ryzen 7 5800Hと比較すると、Ryzen 7 6800Hは約1.7倍のフレームレートが出ています。ライトに遊ぶには十分なフレームレートです。

他のグラフィックスとの比較(1920×1080、標準(ノート))
GeForce GTX 1650 115 fps
GeForce MX450 85 fps
GeForce MX330 61 fps
GeForce MX250 60 fps
Ryzen 7 6800H
メモリDDR5-4800
59 fps
Core i7-1280P
メモリDDR4-3200
49 fps
Core i7-1165G7
メモリLPDDR4X-4266
49 fps
Core i5-1135G7
メモリLPDDR4X-4266
49 fps
Core i7-12700H
メモリDDR4-3200
48 fps
Core i5-1240P
メモリLPDDR5-4800
45 fps
Ryzen 7 5800H
メモリDDR4-3200
35 fps
Ryzen 7 5800U
メモリLPDDR4X-4266
33 fps
Ryzen 7 5700U
メモリDDR4-3200
30 fps
Ryzen 7 4700U
メモリDDR4-3200
30 fps
Ryzen 5 5500U
メモリDDR4-3200
29 fps
Ryzen 5 4500U
メモリDDR4-3200
29 fps

 

フォートナイト

クリエイティブモードでの計測ではありますが、高設定でも60 fps近い平均フレームレートが出ていました。画質は悪くなりますが、中設定なら、安定したフレームレートでゲームができると思います。

中程度の重さのゲーム
フォートナイト
解像度 品質 平均fps
1920x1080 低設定 213 fps
中設定 163 fps
高設定 58 fps
最高設定 39 fps
※クリエイティブモードで計測

 

Apex

テクスチャ―ストリーミングの割り当てを「なし」にするなど、全体的に低めのグラフィック設定にすれば、十分なフレームレートが出ます。ライトに楽しむくらいなら問題なくプレイできるでしょう。ただし、画質を上げると60 fpsを切ってきます。本格的にやるなら、外部グラフィックスを搭載したノートPCのほうがいいです。

軽い部類のゲーム
Apex Legends(DX11)
解像度 品質 平均fps
1920x1080 低設定 97 fps
高設定 48 fps
※トレーニングモードで計測

 

クリエイターソフトの処理時間

最後に、クリエイター向けソフトウェアで計測した各種処理時間を掲載します。主にCPUで処理するものを計測しています。

Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間

Adobe Lightroom Classicで、100枚のRAW画像を、サイズを変更して書き出した時の時間は下表の通りです。Ryzen 5000シリーズは、Lightroomの書き出しがやや遅かったですが、Ryzen 6000シリーズのRyzen 7 6800Hはかなり速くなりました。Lightroomも快適に使えます。

Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間
Core i9-11900H
16GBメモリ
44秒
Core i7-12700H
16GBメモリ
46秒
Core i9-11980HK
64GBメモリ
46秒
Core i7-11800H
16GBメモリ
53秒
Apple M1 Max
10CPU/32GPU
56秒 (MacBook Pro 16)
Apple M1 Pro
10CPU/16GPU
56秒 (MacBook Pro 14)
Ryzen 7 6800H
16GBメモリ
57秒
Apple M1
16GBメモリ
66秒 (MacBook Pro 13)
Core i7-1195G7
16GBメモリ
66秒
Core i7-11370H
16GBメモリ
72秒
Core i7-1185G7
16GBメモリ
74秒
Ryzen 9 5900HX
32GBメモリ
76秒
Core i7-1165G7
16GBメモリ
89秒
Ryzen 7 5800H
16GBメモリ
93秒
Ryzen 7 5800U
16GBメモリ
95秒
Ryzen 7 5700U
16GBメモリ
100秒
※プロファイル補正を適用した100枚のRAWファイル(1枚あたり約45MB)を同じ書き出し設定でjpegに書き出し、所要時間を計測

 

TMPGEnc によるエンコード時間

TMPGEnc Video Mastering Works 7によるソフトウェアエンコードに関しては、高速です。ただ、インテルのCore i7-12700Hよりは遅かったです。

TMPGEnc Video Mastering Works 7によるエンコード時間 (x265)
Core i9-12900HK 7分15秒
Core i7-12700H 7分50秒
Core i9-11900H 8分20秒
Ryzen 9 5900HX 8分26秒
Ryzen 7 6800H 8分42秒
Core i7-1280P 10分59秒
Core i5-1240P 14分19秒
Ryzen 7 5800U 14分35秒
Ryzen 7 5700U 15分05秒
Core i7-1195G7 16分14秒
Core i7-1185G7 16分37秒
Core i7-1165G7 24分17秒
Core i5-1135G7 26分03秒
※XAVC Sの動画(約2分、4K)をH.265/HEVCへ変換したときの時間(x265のエンコーダーを使用)

 

まとめ

今回、Ryzen 7 6800Hのベンチマークスコアを計測しました。

従来のRyzen 7 5800Hと比較すると、CPU性能は大きく変わったわけではありませんが、マルチコア性能、シングルコア性能とも、順当にUPしています。グラフィック性能については、かなり性能がアップしており、Ryzen 5000シリーズよりも、Ryzen 7 6800Hは約1.8倍も性能がアップしていました。また、従来はLightroomといったAdobe系のソフトの処理時間が長くかかっていた傾向がありましたが、今回は十分な速度が出ていました。

インテルの第12世代Core(Hシリーズ)と比べると、CPU性能はやや落ちますが、価格次第では、コスパの高いノートPCになると思います。

Ryzen 7 6800Hは、おそらくGeForce RTXシリーズの外部グラフィックスと一緒に搭載されることが多いと思いますが、一部のエントリーモデルでは、外部グラフィックスを搭載しないモデルも登場すると思います。

 

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