Core i7-1255Uのベンチマーク

更新日:

 

ここでは、15Wクラスの「Uシリーズ」のインテル第12世代Coreプロセッサー、Core i7-1255Uについて、各種ベンチマークスコアを掲載します。

 

プロセッサーの仕様

インテル第12世代Coreプロセッサーは大きく分けると、ハイエンドPCに搭載される「Hシリーズ」、一般ユーザー向けPCに搭載される「Pシリーズ」、薄くて軽いPCに搭載される「Uシリーズ」があります。

この中で、今回テストするCore i7-1255Uは、「Uシリーズ」に位置づけられます。

以前レビューした「Pシリーズ」のCore i7-1260Pと仕様を比較すると、Core i7-1255Uは、PL1に相当するProcessor Base Powerが15Wと低く、Pコア数も半分になっています。

各プロセッサーの仕様
  Core i7-1255U Core i7-1260P
コア数 Pコア 2 4
Eコア 8 8
定格クロック Pコア 1.7GHz 2.1GHz
Eコア 1.2GHz 1.5GHz
最大クロック Pコア 4.7GHz 4.7GHz
Eコア 3.5GHz 3.4GHz
L3キャッシュ 12MB 18MB
Processor Base Power(PL1相当) 15W 28W
Max Turbo Power(PL2相当) 55W 64W
GPU Iris Xe
GPU最大クロック 1.25GHz 1.4GHz
GPU実行ユニット 96 96

 

ベンチマークの計測に利用したノートPC

今回、ベンチマークに使用したノートPCは、デルのInsprion 14 5420です。

 

このノートPCに、Prime95で全CPUコアの使用率が100%になる高い負荷をかけたときのCPU電力の推移は次の通りです。ターボブースト期間は約39Wで推移し、1分後には28W前後で推移していました。Core i7-1255UのMax Turbo Power(PL2相当)は55Wなので、ターボブースト期間のCPU電力はやや低めかなと思います。

ただ、Core i7-1255UのProcessor Base Power(PL1相当)は15Wなので、ターボブースト後の安定動作時のCPU電力は高めかなと思います。そのため、同じCPUを搭載した他のノートPCよりも、高めのベンチマーク結果になっている可能性があります。特に、12~13インチクラスのサイズが小さいモバイルノートPCに搭載される場合、15W程度で動く可能性があり、この記事で掲載したベンチマークスコアは出ない可能性があります。

Core i7-1255U
高負荷時のCore i7-1255UのCPU電力の推移

 

また、今回の記事では、28WクラスのCore i7-1260Pとよく比較しています。このCPUのテストに用いたdynabook CZ/HVにおいて、上と同様にPrime95で高い負荷をかけたときのCPU電力の推移は下のようになっています。ターボブースト期間は約64Wと高く、安定動作時は約28Wとなっていました。

Core i7-1260P
高負荷時のCore i7-1260PのCPU電力の推移

 

ベンチマークスコア

以下、各種ベンチマークソフトのスコアおよび他のプロセッサーと比較したグラフを掲載します。

グラフは、Core i7-1255Uのスコアを緑色にしています。また、今回、特にCore i7-1260Pと比較したかったため、Core i7-1260Pのスコアはオレンジ色にしています。

 

CINEBENCH R23

まずは、CPUレンダリングを行ってCPU性能を評価するベンチマークソフト、CINEBENCH R23のスコアを掲載します。

Core i7-1255Uは、Core i7-1260Pと比較して、10%近くマルチコアスコアが落ちるものの、思ったよりも高めのスコアが出ていました。15WのCore i7-1255Uですが、今回計測した限りでは、CPU電力が28W近く出ていたためだと思います。このくらいのスコアがあれば、一般的なユーザーが使いそうなアプリであれば、快適に動くでしょう。

シングルコアのスコアも高く、Core i7-1260Pとほぼ同等でした。

CINEBENCH R23
~ CPU性能の評価 ~
Core i7-1255U
他のCPUとの比較(マルチコア)
Core i9-12900H 19223
Core i7-12700H 16389
Ryzen 9 5900HX 13382
Ryzen 7 5800H 12604
Apple M1 Max/Pro
10コアCPU
12359
Core i7-1280P 11801
Ryzen 7 5825U 10040
Ryzen 7 5800U 9429
Core i7-1260P 9032
Core i5-11400H 8514
Ryzen 5 5600U 8491
Ryzen 7 5700U 8445
Core i5-1240P 8409
Core i7-1255U 8300
Ryzen 5 5625U 8107
Core i7-1195G7 6594
Ryzen 5 5500U 6250
Core i7-1185G7 6229
Core i7-1165G7 4720
Core i5-1135G7 4424
他のCPUとの比較(シングルコア)
Core i9-12900H 1920
Core i7-12700H 1823
Core i7-1260P 1802
Core i7-1255U 1776
Core i7-1280P 1664
Core i7-1195G7 1634
Apple M1 Max/Pro
10コアCPU
1531
Core i7-1185G7 1517
Core i5-1240P 1483
Ryzen 9 5900HX 1463
Ryzen 7 5825U 1460
Core i7-1165G7 1447
Core i5-11400H 1442
Ryzen 7 5800H 1435
Ryzen 7 5800U 1429
Ryzen 5 5625U 1383
Ryzen 5 5600U 1369
Core i5-1135G7 1294
Ryzen 7 5700U 1264
Ryzen 5 5500U 1185

 

Geekbench 5

続いて、拡張現実や機械学習などの最先端の処理を取り入れているクロスプラットフォームのベンチマークソフト、Geekbench 5のスコアを掲載します。

Geekbenchのマルチコアにおいて、Core i7-1255Uは、Core i7-1260Pよりも、約25%も低いスコアになっていました。これは、Core i7-1255Uのターボブースト期間のCPU電力が、Core i7-1260Pよりも大分低めだったためだと思われます。Geekbenchのベンチマーク実行時間は約2分と短いので、この影響を受けたのではないかと思います。

シングルコアのスコアについては、Core i7-1255UもCore i7-1260Pもほぼ変わりませんでした。

Geekbench 5
Core i7-1255U
他CPUとの比較(Multi-Core)
Apple M1 Max/Pro
10コアCPU
12758
Core i7-12700H 11027
Core i7-1280P 11023
Core i7-1260P 9383
Core i5-1240P 9246
Core i9-11900H 7831
Ryzen 9 5900HX 7306
Core i7-11800H 7215
Core i7-1255U 6911
Ryzen 7 5800U 6642
Ryzen 7 5700U 6097
Core i7-1165G7 5491
他CPUとの比較(Single-Core)
Apple M1 Max/Pro
10コアCPU
1784
Core i7-12700H 1763
Core i7-1260P 1757
Core i7-1255U 1704
Core i7-1280P 1652
Core i9-11900H 1576
Core i7-1165G7 1573
Core i7-11800H 1547
Ryzen 9 5900HX 1496
Core i5-1240P 1463
Ryzen 7 5800U 1415
Ryzen 7 5700U 1165

 

PassMark Performance Test 10.0

続いて、圧縮、暗号化、物理シミュレーションなどを含む数学的計算を行うPassMark Performance Test 10.0のスコアを掲載します。

Core i7-1255Uは、Core i7-1260Pよりもやや低いスコアではあったものの、そこまで大きな差はなく十分なスコアが出ていました。

PassMark Performance Test 10.0(CPU MARK)
Core i7-1255U
他CPUとの比較(CPU MARK)
Core i7-12700H 26616
Ryzen 9 5900HX 24642
Core i7-1280P 23073
Core i7-11900H 21979
Core i7-11800H 21328
Ryzen 7 5800U 19611
Ryzen 7 4800H 19080
Core i7-1260P 18561
Core i5-1240P 17582
Ryzen 7 5700U 17071
Core i7-1255U 16946
Core i7-1165G7 12552

 

グラフィックス関連のベンチマークスコア

次はグラフィックス関連のベンチマークスコアを掲載します。

なお、CPU内蔵のグラフィックスの処理速度は、メインメモリの帯域に大きく左右されます。今回は、DDR4-3200のメモリを搭載しており、帯域の実測値は30.67MB/sで、普通の帯域だと思います。

 

3DMark Night Raid

3DMark Night Raidのスコアは以下の通りです。「グラフィックスのスコア」の部分が、グラフィック性能を評価する指標となります。

Core i7-1255Uは、Core i7-1260Pと比較して、GPU実行ユニットは同じであるものの、GPU最大クロックがやや低めになっていることとや、今回、DDR5やLPDDR4X-4266ではなく、DDR4-3200であったことから、Core i7-1260Pよりは低めのスコアでした。

ただ、第11世代のCore i7-1165G7よりは高いスコアが出ており、CPU内蔵グラフィックスとしては、十分な性能ではないかと思います。

3DMark Night Raid
Core i7-1255U / メモリDDR4-3200
他のグラフィックスとの比較(Graphics score)
GeForce GTX 1650 45149
GeForce MX450 30425
Core i7-1280P
メモリDDR4-3200
21606
Core i7-1260P
メモリDDR5-4800
20478
Core i7-12700H
メモリDDR4-3200
20177
Core i7-1165G7
メモリLPDDR4X-4266
20052
Core i5-1135G7
メモリLPDDR4X-4266
18718
Ryzen 7 5800U
メモリLPDDR4X-4266
17020
Core i5-1240P
メモリLPDDR5-4800
16398
Ryzen 7 5700U
メモリDDR4-3200
16272
Core i7-1255U
メモリDDR4-3200
15893
Core i7-1165G7
メモリDDR4-3200
14247
Core i5-1135G7
メモリDDR4-3200
13316
Ryzen 5 5500U
メモリDDR4-3200
12154
Core i3-1115G4
メモリDDR4-3200
11487

 

ファイナルファンタジー 14 暁月の終焉

次に、「ファイナルファンタジー 14 暁月の終焉」のベンチマークのスコアを掲載します。なお、1920x1080、標準品質(ノートPC)で計測しています。

スコアは4864(普通)、平均フレームレートは33 fpsでした。こちらも、Core i7-1260Pと比べると低めのスコアでした。DDR5のメモリを搭載していたらまた結果は違っていたでしょう。

Core i7-1255U / メモリDDR4-3200
他のグラフィックスとの比較(1920×1080、標準(ノート))
GeForce GTX 1650 115 fps
GeForce MX450 85 fps
GeForce MX330 61 fps
GeForce MX250 60 fps
Core i7-1260P
メモリDDR5-4800
50 fps
Core i7-1280P
メモリDDR4-3200
49 fps
Core i7-1165G7
メモリLPDDR4X-4266
49 fps
Core i5-1135G7
メモリLPDDR4X-4266
49 fps
Core i7-12700H
メモリDDR4-3200
48 fps
Core i5-1240P
メモリLPDDR5-4800
45 fps
Ryzen 7 5800U
メモリLPDDR4X-4266
33 fps
Core i7-1235U
メモリDDR4-3200
33 fps
Ryzen 7 5700U
メモリDDR4-3200
30 fps
Ryzen 7 4700U
メモリDDR4-3200
30 fps
Ryzen 5 5500U
メモリDDR4-3200
29 fps
Ryzen 5 4500U
メモリDDR4-3200
29 fps

 

クリエイターソフトの処理時間

最後に、クリエイター向けソフトで計測した各種処理時間を掲載します。

Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間

Adobe Lightroom Classicで、100枚のRAW画像を、サイズを変更して書き出した時の時間は下表の通りです。

Core i7-1255Uは、Core i7-1260Pと比較すると、約1.5倍も時間がかかっていました。1分前後と短い処理時間なので、ターボブースト時のCPU電力が低めだったことが影響していると思われます。

Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間
Core i9-11900H
16GBメモリ
44秒
Core i7-12700H
16GBメモリ
46秒
Core i9-11980HK
64GBメモリ
46秒
Core i7-1280P
16GBメモリ
47秒
Core i7-11800H
16GBメモリ
53秒
Core i7-1260P
16GBメモリ
56秒
Apple M1 Max
10CPU/32GPU
56秒 (MacBook Pro 16)
Apple M1 Pro
10CPU/16GPU
56秒 (MacBook Pro 14)
Ryzen 7 6800H
16GBメモリ
57秒
Apple M1
16GBメモリ
66秒 (MacBook Pro 13)
Core i7-1195G7
16GBメモリ
66秒
Core i5-1240P
8GBメモリ
72秒
Core i7-11370H
16GBメモリ
72秒
Core i7-1185G7
16GBメモリ
74秒
Ryzen 9 5900HX
32GBメモリ
76秒
Core i7-1255U
16GBメモリ
82秒
Core i7-1165G7
16GBメモリ
89秒
Ryzen 7 5800H
16GBメモリ
93秒
Ryzen 7 5800U
16GBメモリ
95秒
Ryzen 7 5700U
16GBメモリ
100秒
※プロファイル補正を適用した100枚のRAWファイル(1枚あたり約45MB)を同じ書き出し設定でjpegに書き出し、所要時間を計測

 

TMPGEnc によるエンコード時間

TMPGEnc Video Mastering Works 7によるソフトウェアエンコード時間は下表の通りです。

Core i7-1255Uは、Core i7-1260Pよりやや時間がかかってはいるものの、そこまで大きく変わるわけではありませんでした。大分時間のかかる処理なので、ターボブースト期間のCPU電力差の影響を受けにくかったのもあると思います。

TMPGEnc Video Mastering Works 7によるエンコード時間
(ソフトウェアエンコード)
Core i7-12700H 7分50秒
Core i9-11900H 8分20秒
Ryzen 9 5900HX 8分26秒
Core i7-1280P 10分59秒
Core i7-1260P 12分43秒
Core i7-1255U 13分31秒
Core i5-1240P 14分19秒
Ryzen 7 5800U 14分35秒
Ryzen 7 5700U 15分05秒
Core i7-1195G7 16分14秒
Core i7-1185G7 16分37秒
Core i7-1165G7 24分17秒
Core i5-1135G7 26分03秒
※XAVC Sの動画(約2分、4K)をH.265/HEVCへ変換したときの時間(x265のエンコーダーを使用)

 

次に、ハードウェアエンコードの処理時間を掲載します。Core i7-1260Pよりは遅いものの、十分高速だと思います。ただ、TMPGEnc Video Mastering Works 7によるハードウェアエンコードは、AMD Ryzenシリーズのほうが速いのかなと思います。

TMPGEnc Video Mastering Works 7によるエンコード時間
(ハードウェアエンコード)
Core i7-1280P
RTX 3060
1分05秒 (NVENC)
Ryzen 7 5825U 1分07秒 (AMD Media SDK)
Core i7-1260P 1分28秒 (Intel Media SDK Hardware)
Core i7-1280P 1分34秒 (Intel Media SDK Hardware)
Core i7-1255U 1分39秒 (Intel Media SDK Hardware)
Core i5-1240P 1分42秒 (Intel Media SDK Hardware)
※XAVC Sの動画(約2分、4K)をH.265/HEVCへ変換したときの時間

 

まとめ

今回、Core i7-1255Uのベンチマークスコアを掲載しました。

ターボブースト時のCPU電力がそこまで高くなかったので、瞬発力には欠けましたが、ある程度時間のかかる処理を行う場合は、Core i7-1260Pとそこまで大きな違いはありませんでした。一般的なユーザーであれば、Core i7-1255Uでも十分快適にPCを使うことができると思います。

逆に1分前後で終わるようなベンチマークなどは、 Core i7-1255Uは、Core i7-1260Pよりもスコアが低めでした。

今回、メモリがDDR4-3200だったということもあり、グラフィック性能はそこまで高くはありませんでしたが、ゲームや動画編集など、グラフィックスに大きな負荷のかかるアプリを使わなければ、十分な性能でしょう。もし、ライトにゲームや動画編集をするのであれば、DDR5やLPDDR4X-4266のメモリを搭載し、放熱性の良いPC(ボディが高さがあってファンが2つあるなど)がいいと思います。

なお、今回、そこまで小さなPCではないため、安定動作時のCPU電力が28W前後出ていましたが、もっと薄型で小さいモバイルノートPCにCore i7-1255Uを搭載した場合、仕様値通りの15W前後で推移するかもしれません。その場合、ここで掲載したベンチマークスコアよりも大分低くなる可能性があるため、ご了承下さい。

 

関連ページ