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Snapdragon X搭載のCopilot+ PCで何ができるか試してみた!

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ここでは、Snapdragon X Elite X1E-78-100を搭載したAMR版WindowsのCopilot+ PCで、現状、どんなことができるのか?どんなアプリが動くのか?を検証していきます。

これらのアプリや機能が魅力的に感じたら購入してもいいですし、そうでなければ、インテル版やAMD版のCopilot+ PCが発売されるまで待ったり、NPUを搭載していない安いPCにしたりしてもいいでしょう。

なお、今回は、ASUS様からお借りしたVivobook S 15でテストしています。

 

Copilot+ PCだけで使えるアプリや機能

まずは、マイクロソフトの発表会で取り上げていた、Copilot+ PCだけで使える機能・アプリを試しました。

ペイントのコクリエイターで「イラスト生成」

ペイントのアプリでは新機能が追加され、「コクリエイター」という機能が使えるようになりました。この機能は、幼稚園生レベルの絵とその説明を入力するだけで、画像を生成するものです。

資料やウェブ記事に、ちょっとした挿絵を挿入したいとき、自分でイラストを描くには下手くそだし、イラスト素材を購入するのはお金がかかるし飽きらめていた方も多いでしょう。この機能を使えば、だれでも簡単に、イラストを生成することが可能です。しかもクラウド上ではなくローカルパソコンで実行されるので、会社などで使用する場合でも、セキュリティ面や著作権の面で安心です。

※[追記] ただし、インターネットに接続していないとこの機能は使えません

 

フォトのイメージクリエイターで「画像生成」

フォトのアプリでは新機能が追加され、「イメージクリエイター」という機能が使えるようになりました。この機能は、キーワードを入力すると画像を生成してくれるものです。

Windows標準のフォトアプリに搭載されているので、別途何かインストールする必要がなく、何かのサービスに加入する必要もありません。枚数が無制限なのも嬉しいです。

※[追記] ただし、インターネットに接続していないとこの機能は使えません

 

ライブキャプションによる「リアルタイム翻訳」

Windowsのライブキャプションの機能を使えば、パソコンから出力される音声を自動でリアルタイム翻訳し、字幕で表示することができます。

今回、日本語の音声を、英語の字幕にリアルタイムで翻訳して表示するテストを行いましたが、問題なく出来ました。

ただ、英語の音声を、日本語の字幕に翻訳して表示することは出来ませんでした。現状では、英語字幕への翻訳しか対応していないようです。今後のアップデートで期待です。これができるようになれば、洋画や英語のスポーツ中継などを、リアルタイムで字幕にできるので、とても便利でしょう。

 

Windows Studio エフェクトによる「カメラ特殊効果」

Windows Studio エフェクトという機能を使えば、ウェブカメラを使用しているときに、各種エフェクトをかけることができます。

この機能は、NPUを搭載しているノートPCには従来から備わっている機能ですが、ここでは新たに追加されたクリエイティブフィルターとテプロンプターを使ってみました。ウェブ会議や配信を行うときに、一味違う演出を加えたいときにいいでしょう。

 

リコールによる「思い出せない以前見たものを検索」

Copilot+ PCの目玉機能である「リコール」は、まだリリースされておらず、今後のアップデートで提供されるそうです。

「リコール」とは、以前パソコンで見たことのあるものを見つけることが出来る機能です。漠然と覚えていることを入力して検索したり、タイムラインをスクロールして、過去に画面で見たドキュメント、Webサイトなどを探し出すことができます。

Windows公式チャンネルより

 

 

一部機能がNPUに対応したアプリ

続いて、一部の機能がNPUに対応しているアプリを試しました。

DaVinci Resolve Studioで「動画にマスク」

DaVinci Resolve Studioは、ARM64(x64互換)で動作していました。なお、ARM64(x64互換)とは、ARM64ECの部分はネイティブ動作するにもかかわらず、x64のコードの部分はエミュレーションで動かしている動作方法です。

Davinci Resolve Studioは、動画のオブジェクトにマスクをし、トラッキングする(動画の動きに追従してマスクをする)「Magic Mask」という機能を持っており、この処理を主にNPUで行うことができます。

トラッキングの処理は割と時間がかかりますが、CPUとGPUの負荷はそれほど高くないので、トラッキング中に他の作業を行うことも可能なので便利だと思います。

 

なお、書き出し時間については、Core Ultra 155HやMacBook AirのM3よりも遅かったです。

DaVinci Resolve Studio 19 Betaによる書き出し時間
Apple M3
8CPU/10GPU
6分7秒 (MacBook Air)
Core Ultra 7 155H 6分7秒
Snapdragon X Elite X1E-78-100 8分43秒
※ 4K/30p動画(約10分)に、「テキスト」+「明るさ(カーブ)の変更」+「彩度の変更」+「トランジション」のエフェクトおよびBGMとなるオーディオを加え、MP4、H.264、2160p 4K Ultra HD、29.97 fpsで書き出したときの時間

 

CapCutで「背景削除」

CapCutは、Tiktokerに有名な動画編集アプリのWindows版で、ARM64(x64互換)で動作していました。 

このソフトは、背景を削除する「オートカット」機能がNPUで実行されます。実際に試してみましたが、処理が非常に速いです。

 

まだNPUに対応してないがARMでも動くアプリ

Adobe Photoshop (ARM64)

AIを使った処理を色々試してみましたが、NPUを使っている感じはありませんでした。ただし、Adobe Photoshopは、ARM64で動作しており、非常に高速でした。

例えば、ニューラルフィルターの「スーパーズーム(x2)」や「JPEGのノイズを削除」の処理は、インテルのCore Ultra 7 155Hの半分近い時間で終わっていました。

ARM64にネイティブ対応しているだけあって、非常に処理が速いです。NPUはまだ使っていないようでしたが、Adobe Photoshopが主な利用用途であるならば、ARM版WindowsのCopilot+PCはアリかもしれません。

Apple M3を搭載したMacBook Airと比較した場合、これらの処理については、MacBook Airのほうが速かったです。ただ、Microsoftの発表会では、Photoshopの画像処理のデモで、MacBook Airよりもかなり速いことをアピールしていたので、他の処理についてはSnapdragon X搭載のCopilot+ PCのほうが速いものもあるのかもしれません。

Adobe Photoshop CCによる各種処理時間
ニューラルフィルター(スーパーズーム(x2))
Apple M3
8CPU/10GPU
49秒 (MacBook Air)
Core i5-13500H
RTX 3050
1分03秒
Ryzen 7 8845HS
Radeon 780M
1分18秒
Ryzen 7 8840U
Radeon 780M
1分19秒
Snapdragon X Elite X1E-78-100 2分21秒
Core Ultra 7 155H
Intel Arc
4分06秒
Core Ultra 5 125U
Intel Graphics
5分34秒
ニューラルフィルター(JPEGのノイズを削除)
Apple M3
8CPU/10GPU
1分05秒 (MacBook Air)
Snapdragon X Elite X1E-78-100 1分40秒
Core i5-13500H 2分35秒
Core Ultra 7 155H 3分13秒
Ryzen 7 8845HS 4分08秒
Core Ultra 5 125U 4分31秒
Ryzen 7 8840U 4分44秒
※ 6000x4000のRAWデータを編集

 

Adobe Lightroom (ARM64)

Adobe Lightroomも、ARM64で動作しておりこちらも快適に動きました。Photoshopと同様に、NPUを使っている感じはありませんでしたが、Lightroomを使う方も、ARM版WindowsのCopilot+PCはおすすめです。

ただし、デスクトップ版のLightroom Classicは、ARM版Windowsにはインストールすることが出来なかったので、ご注意下さい。

 

Adobe Premiere Pro (x64)

Adobe Premiere Proは、残念ながらまだx64での動作(エミュレーターでの動作)でした。ただし、「Illustrator や Premiere Pro などは、今夏に提供開始予定です」と書かれているので、もうじきARM64で動作すると思われます。

下表は、フルHD動画の書き出し時間を比較したものです。エミュレーターでの動作ということで、インテル第11世代のCore i7-1165G7よりも遅い書き出し時間でした。

Adobe Premiere Pro CCによるFHD動画の書き出し時間
Core Ultra 7 155H
Intel Arc
2分29秒
Ryzen 7 8845HS
Radeon 780M
2分34秒
Core i7-1360P
Intel Iris Xe
2分49秒
Ryzen 7 8840U
Radeon 780M
2分58秒
Core i7-1165G7
Intel Iris Xe
14分12秒
Snapdragon X Elite X1E-78-100 14分31秒
※ FHD/30p動画(約10分)に、「テキスト」+「露光量」+「自然な彩度」+「トランジション」のエフェクトおよびBGMとなるオーディオを加え、H.264形式、YouTube 2160p 4K Ultra HDのプリセットで書き出したときの時間

 

TMPGEnc Video Mastering Works 7 (x64)

TMPGEnc Video Mastering Works 7は、x64での動作だったので、あまり速くありません。x265によるソフトウェアエンコード時間を見ると、インテル第11世代のCore i7-1165G7よりは速いですが、第13世代のCore i7-1360Pよりは遅かったです。

また、Snapdragon XのSoCなので、QSVなどのハードウェアエンコードが使えません。

TMPGEnc Video Mastering Works 7 によるx265エンコード時間
ソフトウェアエンコード
Core i7-13700H 6分39秒
Ryzen 7 8845HS 7分03秒
Core Ultra 7 155H 8分32秒
Ryzen 7 8840U 10分57秒
Core i7-1360P 12分03秒
Snapdragon X Elite X1E-78-100 14分31秒
Core i7-1165G7 24分17秒
XAVC Sの動画(約2分、4K)をH.265/HEVCへ変換したときの時間
 :レビュー機で計測したスコア(他のスコアは別のPCで計測した代表値)

 

原神(x64)

原神のゲームも動作しました。

ただし、エミュレーターで動いていたこともあり、Core Ultra 7 155HやRyzen 7 8845HSほどは高いフレームレートは出ませんでした。

原神
解像度 グラフィック品質 平均fps
1920x1200 最低 60 fps(上限)
58 fps
45 fps
38 fps
他のGPUとの比較(1920x1200、中)
Ryzen 7 8845HS
(1920x1200)
59 fps
Core Ultra 7 155H
(1920x1200)
58 fps
Ryzen 7 8840HS
(1920x1200)
57 fps
Snapdragon X Elite X1E-78-100
(1920x1200)
45 fps
Ryzen 7 8840U
(1920x1200)
43 fps
Core 5 120U
(1920x1200)
41 fps
Core Ultra 5 125U
(1920x1200)
36 fps
Ryzen 5 8540U
(1920x1200)
35 fps

 

その他動いたアプリ

その他、動作が確認できたアプリを列挙します。

ゲームはは起動できないことが多いので、クラウドから実行するXBox Cloud Gamingで動かすといいと思います。

・Bandicam(x64で動作)

・MSI Afterburner(x86で動作)

・Steam > シャドウオブザトゥームレイダー(FHD、低設定で平均29fps)

・Steam > パルワールド(ただし重くてプレイ不可)

・XBox Cloud Gaming(ただし、インストールして使うGame Passは利用不可)

・[追記] VLCプレイヤー

・[追記] エプソンプリンター(ただし制限あり。詳細はこちら) 

 

動かなかったアプリ

最後に動かなかった、もしくはインストールできなかったアプリを、以下に掲載します。ただ、AdobeのPremiere ProやIllustratorは後日対応予定です。

・i1Profiler

・VALORANT

・Steam > ARK:Survival Evolved

・Adobe Premiere Pro、Illustrator(以下、執筆時点でインストールできる主なアプリ)

 

 

まとめ

以上が、Snapdragon X Elite X1E-78-100のSoCを搭載したCopilot+ PC「ASUS Vivobook S 15」で、各アプリを使ったときの結果です。

まず、Copilot+ PCの注目機能の「リコール」がまだ使えなかったのは残念でしたが、この機能が使えるようになれば面白そうです。筆者はよく「あのファイルどこいったっけな・・・」と1時間くらい探すときもあるので重宝しそうです。ペイントのコクリエイター機能や、ライブキャプション機能、Windows Studio エフェクト機能も、使う人は限定されるかもしれませんが、便利に感じる方もいるでしょう。こういた機能に魅力を感じたら、Copilot+ PCおすすめです。

Copilot+ PCだけで動くアプリだけが魅力なわけではなく、PhotoshopやLightroomのように、ARM64にネイティブ対応したアプリであれば、インテルのCore Ultra Hシリーズや、Ryzen 8040シリーズよりも高速に動くものもあり、その点も魅力的でした。そういった方にもCopilot+ PCはおすすめです。

ARM版Windowsの場合、エミュレーションでしか動かないアプリは、Snapdragon X Eliteでもそこまで速くはありませんでした。1~2世代前のプロセッサーくらいの速度です。そこまで重いアプリでなければ全然使えると思いますが、そういった他のノートPCでもいいです。

アプリがNPUに対応していれば、処理が速い、もしくはCPUおよびGPUの負荷が減りますが、まだまだNPUに対応したアプリは少ないです。対応していたとしても、ごく一部の機能に限られます。

今年の年末あたりには、インテル版またはAMD版のCopilot+ PCが登場する予定です。ARM版Windowsだと動作しないアプリもまだありますし、NPUが使えるアプリもまだそう多くはないので、インテル版またはAMD版のCopilot+ PCが登場してから乗り換えを検討するのもいいでしょう。

また、生成AIにそもそも興味のない方や、生成AIはウェブを通して使えれば十分という方は、NPUを搭載していない安価なノートPCで十分でしょう。

なお、今回試したノートPCは以下となります。

 

 

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