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Core i5-1135G7のベンチマーク
今回は、開発コードネーム「Tiger Lake」ことインテル第11世代Coreプロセッサーの「Core i5-1135G7」のベンチマークスコアを掲載します。
なお、Tiger Lakeは、TDP(熱設計電力)をメーカー側で調整できるため、ベンチマークスコアは1つの目安としてご覧いただけたらと思います。
Core i5-1135G7の仕様
Core i5-1135G7は、10nm製造プロセスを改良した「10nm SuperFin」を採用したインテル第11世代Coreプロセッサーの1つで、この中ではスタンダードな性能となります。Core i7と比べると、キャッシュ容量やグラフィックスの実行ユニット数などが劣りますが、Intel Iris Xeのグラフィックスを搭載しており、Core i7にも劣らない十分高い性能です。CPUクロックも劣るものの、製品の熱設計等によって動作周波数は変わってくるので、Core i7よりも高い動作周波数で推移するものもあると思います。
メモリはDDR4-3200/LPDDR4x-4267に対応し、将来的にはLPDDR5-5400まで対応予定です。また、PCI Express 4.0、Wi-Fi 6、Thunderbolt 4に対応している点も特徴です。
Core i7-1185G7 | Core i7-1165G7 | Core i5-1135G7 | Core i3-1115G4 | |
製造プロセス | 10nm SuperFin | |||
コア / スレッド数 | 4 / 8 | 2 / 4 | ||
cTDP-up周波数 | 3.0 GHz | 2.8 GHz | 2.4 GHz | 3.0 GHz |
cTDP-down周波数 | 1.2 GHz | 1.2 GHz | 900 MHz | 1.7 GHz |
ターボブースト時 | 4.8 GHz | 4.7 GHz | 4.2 GHz | 4.1 GHz |
キャッシュ | 12MB | 8MB | 6MB | |
Operating Range | 12W~28W | |||
グラフィックス | Intel Iris Xe | Intel UHD | ||
グラフィックス 最大動的周波数 |
1.35 GHz | 1.3 GHz | 1.3 GHz | 1.25 GHz |
グラフィックス 実行ユニット |
96 | 80 | 48 |
ただし、今回の検証機のグラフィックスの詳細を確認したところ、グラフィックスの実行ユニットは、80ではなく96でした。こういったケースもあるのか、GPU-Zの表示がおかしいのかは分かりません。後日、他のCore i5-1135G7を搭載したノートPCでも確認してみたいと思います。
Tiger Lakeについての詳細については、以下のようなメディアサイトをご覧ください。
ベンチマークの計測に利用したノートPC
今回は、以下のノートPCで検証を行いました。
検証機:XPS 13 2-in-1
Tiger Lakeのプロセッサーを搭載した高級 2 in 1 PC。コンパクトで高質感のボディ、ロングバッテリー、アスペクト比16:10で広色域の液晶、UHD液晶も選択可能。
DELL独自のサーマル管理によるCPU電力の違い
DELLは独自のサーマル管理で熱設定を変更できます。デフォルトの「最適化」ではPL1が25Wでしたが、「超高 パフォーマンス」にすると51Wでした。なお、cTDP-downは12W、cTDP-upは15Wでした。
最適化 (デフォルト) |
低音 | 静音 | 超高 パフォーマンス |
|
PL1 | 25W | 17W | 17W | 51W |
PL2 | 51W | |||
cTDP-down | 12W | |||
cTDP-up | 15W |
CPU電力の推移
次に、Prime95で全CPUコアの使用率が100%になる高い負荷をかけ、CPU電力の推移を確認します。サーマル管理をデフォルトの「最適化」にしたときと「超高パフォーマンス」にしたときのCPU電力の推移は次のようになります。
サーマル管理を「最適化」にした場合、一瞬だけPL2の約51Wになった後は、約28Wで推移し、処理開始から約80秒後からは徐々に電力が下がっていき、最終的には15Wになっていました。
サーマル管理を「超高パフォーマンス」にした場合、一瞬だけPL2の約51Wになった後は、35W前後で推移し、処理開始から約120秒後からは急激に電力が落ち、その後は上がったり下がったりを繰り返していました。
Core i5-1135G7のベンチマークスコア
以下、各種ベンチマークソフトを使ったスコアを掲載します。今回は、サーマル管理を「最適化」にしたときと「超高パフォーマンス」にしたときとで計測しています。
上位のCore i7-1165G7や、1世代前のCore i5-1035G4、ライバルとなるRyzen 5 4500Uとスコアを比較しながら、スコアを確認していきたいと思います。Core i7-1165G7については、XPS 13 2-in-1と兄弟機種のXPS 13のスコアを掲載しています。
CINEBENCH R20
まずは、レンダリングを行ってスコアを出す定番ベンチマークソフト、CINEBENCH R20の結果を掲載します。マルチコアのスコアを確認すると、今回の検証機については、XPS 13で確認したCore i7-1165G7よりも高いスコアが出ていました。また、Ryzen 5 4500Uと同等以上のスコアでした。従来のCore i5-1035G4と比較すると、約50%向上していました。
シングルコアのスコアについては、Core i7-1165G7ほどではなかったものの、非常に高いスコアでした。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
PassMark Performance Test 10.0
続いて、圧縮、暗号化、物理シミュレーションなどを含む数学的計算を行うPassMark Performance Test 10.0のスコアを掲載します。Core i5-1135G7は上位のCore i7-1165G7とほぼ同じスコアで、Ryzen 5 4500Uより高いスコアでした。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
Geekbench 5
続いて、拡張現実や機械学習などの最先端の処理を取り入れているクロスプラットフォームのベンチマークソフト、Geekbench 5のスコアを掲載します。こちらもPassmarkと同様の結果でした。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
リアル作業の快適性の指標となるベンチマーク
上で掲載したベンチマークは、CPUの性能を最大限引き出したときのテストで、CPUの優劣を見るのに最適でした。ただし、日常的に、レンダリングのような大きな負荷のかかる処理を行っているユーザーはあまり多くありません。そこで、次では、一般的なユーザーが利用することの多い作業を処理を実行し、快適度を数値化するベンチマークソフトのスコアを掲載します。
なお、メモリやストレージの速度などによってもスコアが変わってくるため、目安としてご覧いただければと思います。
PCMark 10
PCMark 10は、Webページ閲覧、動画視聴といった日常的な操作の快適性の指標となる「Essentials」、文書作成、表計算の使用といった仕事の快適性の指標となる「Productivity」、画像編集、3D CG制作、動画編集といったクリエイティブ作業の快適性の指標となる「Digital Content Creation」の3つについて数値化するベンチマークソフトです。
「Essentials」について、Core i5-1135G7は、Core i7-1165G7ほどではないにしろ高いスコアでした。日常的な操作はとても快適でしょう。「Productivity」については、Ryzen 5 4500Uよりはスコアが低かったものの、Core i5-1035G4よりは約30%もスコアが向上していました。「Digital Content Creation」については、Ryzen 5 4500Uと同等程度のスコアでした。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
※サーマル管理は「最適化」で実行
WebXPRT 3
WebXPRT 3は、HTML5およびJavaScriptを使って、オンラインで、画像補正、AIを使用した画像の整理、株式ポートフォリオの計算・表示、文書の暗号化とOCR、セールデータのグラフ作成、オンラインホームワークといった処理をブラウザ上で実行します。PCへの負荷は軽めになります。
Core i5-1135G7のスコアは、Core i7-1165G7のスコアよりは下回りましたが、Ryzen 5 4500UおよびRyzen 7 4700Uよりも高いスコアとなっていました。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
※Chromeブラウザで実行
グラフィックス関連のベンチマークスコア
次はグラフィックス関連のベンチマークスコアを掲載します。
3DMark Night Raid
今回、Core i5-1135G7の3DMark Night RaidのGraphics scoreは非常に高い数値で、GeForce MX330を超えるスコアが出ていました。従来のCore i5-1035G4と比較すると2倍もスコアが向上していました。Ryzen 5 4500UはもとよりRyzen 7 4700Uよりも高いスコアです。
なお、今回、XPS 13で計測したCore i7-1165G7のスコアはそこまで高くありませんが、他の機種で計測したCore i7-1165G7のスコアは、Core i5-1135G7と同じくらいのスコアが出ていました。
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
各ゲームのフレームレート
いくつかゲームのフレームレートも計測してみました。
なお、ドラクエXとFF14以外は、トレーニングモード等で動かしているときのフレームレートをMSIアフターバーナーで計測しています。まったく同じ状況で再現できるわけではありませんし、シーンが変わればフレームレートは変わってきます。また外部グラフィックスと違って、CPU内蔵グラフィックスは、時間が経つとフレームレートが下がりやすい傾向があるので、1つの参考値としてご覧ください。
総合的に見て、従来のCore i5-1035G4と比較すると、20~100%もフレームレートが伸びていました。Ryzen 7 4700Uと比較した場合は、ゲームによって優劣が変わってきていました。
Apex Legends
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PL1:25W | PL1:51W | ||
1920x1080 | 低設定 | 46 fps | 50 fps |
ApexでのCore i7-1165G7のスコアは、Ryzen 5やRyzen 7よりも高いスコアが出ていました。ただし、最も低いグラフィック設定でも、平均フレームレートが60 fpsを超えることはなく、Apexをやるなら、GeForce GTX 1650などの外部グラフィックスを搭載したPCのほうが無難だと思います。
VALORANT
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---|---|---|---|
PL1:25W | PL1:51W | ||
1920x1080 | 低設定 | 94 fps | 98 fps |
高設定 | 56 fps | 58 fps |
高設定でも60fpsに近いフレームレートが出ていました。低設定なら100fpsに近いフレームレートが出ており快適にゲームができると思います。
フォートナイト
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PL1:25W | PL1:51W | ||
1920x1080 | 低設定 | 67 fps | 71 fps |
中設定 | 42 fps | 50 fps | |
高設定 | 26 fps | 27 fps |
低設定なら60fpsを超えています。ただし、フォートナイトの「低設定」は画質がかなり落ちるため、中設定辺りでゲームをしたいところですが、そうすると60fpsを結構下回ります。フォートナイトをするなら、スコアの高かったRyzen 7 4700Uや、外部グラフィックスを搭載したノートPCや、外部グラフィックスを搭載したノートPCがおすすめです。
PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS
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PL1:25W | PL1:51W | ||
1920x1080 | 非常に低い | 30 fps | 31 fps |
中 | 22 fps | 28 fps |
グラフィック設定を最も低くしても、30 fpsしか出ず、カクつくことも多いので、PUBGをするにはちょっと厳しいかなと思います。
ドラゴンクエストX
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PL1:25W | PL1:51W | ||
1920x1080 | 最高品質 | 11102 | 10992 |
ドラクエXは高いスコアが出ており、「すごく快適」の評価でした。快適にゲームができるでしょう。
ファイナルファンタジー 14 漆黒のヴィランズ
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PL1:25W | PL1:51W | ||
1920x1080 | 標準(ノート) | 47 fps | 49 fps |
FF14について、Core i5-1135G7のスコアは、Ryzen 5 4500Uのスコアと比較すると、非常に高い数値が出ていました。従来のCore i5-1035G4と比較すると、約2倍のスコアでした。
TMPGEnc 7によるハードウェアエンコード
プロセッサー内蔵GPUによるハードウェアエンコードは、今回計測したプロセッサーの中では、どれよりも高速でした。
:Core i5-1135G7のスコア
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
クリエイターソフトの処理時間
以下、実際のソフトウェアで計測した各種処理時間です。PC Mark 10の「Digital Content Creation」の項目でもクリエイティブ作業の快適度は掲載しましたが、PC Mark 10は主にフリーソフトでテストを行っており、実際のクリエイターが使用していないソフトも多いです。
以下は、利用者の多いシェアウェアのAdobeソフトを中心に、クリエイティブ作業時の快適性をテストします。
Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間
Adobe Lightroom Classic CCの現像時間は、メモリ容量によって大きく変わってきます。今回、8GBのメモリ(オンボード)しか搭載していないため、この処理時間については省略いたします。16GBのメモリを搭載したPCを入手したときに、再度計測してみます。
なお、Core i7-1165G7の結果を見ると、Core i5-1135G7も速いのではないかと思われます。
Adobe Premiere Pro CCによる書き出し時間
Premiere Pro CCの書き出しは速かったです。Ryzen 5 4500Uは4Kの書き出し時間が極端に遅く約2時間もかかっていましたが、Core i5-1135G7は17分~20分で終わりました。ただし、10分の動画に対して17分もかかっており、待つには長い時間です。動画に修正が入って何度も書き出したりしているとストレスです。4K動画を編集するなら、GeForce GTX 1650でもいいので、外部グラフィックスを搭載したPCをおすすめします。
FHDの書き出しについても、Core i5-1135G7はRyzen 7やRyzen 5より速いです。10分の動画に対して4分台の書き出し時間なので、こちらなら待てる範囲の時間かなと思います。
:Core i5-1135G7のスコア
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
:Core i5-1135G7のスコア
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
TMPGEnc によるエンコード時間
TMPGEnc Video Mastering Works 7によるエンコード時間は、Ryzen 5 4500Uが非常に速かったです。Core i5-1135G7は、数分間は高いCPUクロックで推移しますが、時間が経つとCPUクロックの落ち幅が大きくなり、Ryzen 5 4500Uよりも遅い結果となっています。
:Core i5-1135G7のスコア
:今回特に比較したいプロセッサーのスコア
まとめ
今回、Core i5-1135G7のベンチマークスコアを計測しました。
従来のCore i5-1035G4と比較すると、Core i5-1135G7は、CPU性能が20~60%、グラフィックス性能が20%から100%も向上しており、かなり性能UPしたのではないかと思います。
上位のCore i7-1165G7と比較すると、Core i5-1135G7は、それほど大きな差はありませんでした。この2つのCPUを選択できるノートPCの場合、価格差が大きければCore i5-1135G7のほうがコストパフォーマンスは高いかなと思います。
Ryzen 5 4500UとCore i5-1135G7は、ほぼ同等もしくはCore i5-1135G7のほうがややスコアが高いケースが多かったです。TMPGEnc によるエンコードのように、高負荷状態が長く続く場合はRyzen 5 4500Uのほうが有利かなと思いますが、Premiere Proの書き出しなど、Ryzen 5 4500Uは極端に遅くなるケースもあり、Core i5-1135G7のほうが扱いやすいかなという気もします。
なお、メーカーおよび機種によって、CPUの熱設計が変わっており、いずれもこのくらいのベンチマークスコアが出るわけではありません。特に今回、検証に使ったXPS 13 2-in-1は、スコアが出やすい機種なので、他の製品ではもう少しベンチマークスコアが落ちることが多いのではないかと思われます。
1975年生まれ。電子・情報系の大学院を修了。
2000年にシステムインテグレーターの企業へ就職し、主にサーバーの設計・構築を担当。2006年に「the比較」のサイトを立ち上げて運営を開始し、2010年に独立。
毎年、50台前後のパソコンを購入して検証。メーカーさんからお借りしているパソコンを合わせると、毎年合計約150台のパソコンの実機をテストしレビュー記事を執筆。
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約15年間にわたり、年間100機種以上、パソコンを細かくチェックしている筆者がおすすめするノートパソコン。