レノボ ThinkPad P52sの実機レビュー

更新日:2018年7月5日
CPU Uシリーズ第8世代CPU
GPU Quadro P500
メモリ 4~32GB
ストレージ SATA/PCIe M.2 SSD
HDD
液晶サイズ 15.6型
液晶種類 FHD 非光沢
FHD タッチ
UHD(4K) 非光沢
質量 約1.99kg
価格 16万円台(税別)~
Quadro搭載のモバイルワークステーション

ThinkPad P52sは、Quadro P500を搭載したモバイルワークステーションです。

CPUには、第8世代Coreプロセッサー(Uシリーズ)を搭載しています。

CPUもグラフィックスも、「ワークステーション」と名の付くPCとしては、それほど高い性能ではありませんが、2kg前後の質量で、持ち運びがしやすい点がメリットです。

バッテリーも2つ搭載可能で、かなり長い駆動時間です。

液晶は、フルHDの他に4K液晶も選択可能です。

公式サイトはこちら

 

レビュー機は、メーカーからの貸出機です。今回は次の構成でレビューをしています。

レビュー機の構成

Core i7-8650U、16GBメモリ、Quadro P500、256GB SSD

目次

お忙しい方は、「ThinkPad P52sの特徴」のみお読みください。

 

ThinkPad P52sの特徴

Quadro P500を搭載

ThinkPad P52sは、グラフィックスにQuadro P500を搭載しています。3D CADなどのソフトを、外出先や、普段ととは違う部屋でもやりたいという方に適しています。

なお、同じボディを採用した兄弟機種「ThinkPad T580」はGeForce MX150を選択可能です。GeForce MX150は、ゲームや、CUDAコアによるGPU計算に対応したソフトなどに適している一方、Quadro P500はOpenGLを使用した3D CG、CADなどに適しています。仕様の違いは次のようになっています。

P52sのQuadro P500 と T580のGeForce MX150の仕様
  Quadro P500 GeForce MX150
アーキテクチャ Pascal Pascal
CUDAコア 256 384
ベースクロック 1455MHz 1469MHz
ブーストクロック 1519MHz 1532MHz
メモリ GDDR 2GB GDDR 2GB

Quadroグラフィックス搭載PCとしては軽量

ThinkPad P52sは、Quadroグラフィックスを搭載したノートPCとしては薄型・軽量で、持ち運びに便利です。質量は約1.99kgあり、専用グラフィックスを搭載していないノートPCと比べるとかなり重いですが、Quadro P500に15.6型液晶を搭載していることを考慮すれば軽量だと思います。


薄型・軽量

 

 

UHD(4K)液晶を選択可能

ThinkPad P52sは、UHD(4K)液晶を選択することが可能です。CG系の作業をする方が多いと思うため、UHD液晶を選択できるのは嬉しいです。ただ、残念ながら、今回お借りした製品は、フルHD液晶となっており試すことはできませんでした。

 

最大で32Wh+72Whのバッテリーを搭載可能

ThinkPad P52sは、フロント・バッテリーとリア・バッテリーの2つを搭載することが可能です。

フロント・バッテリーは32Whとなっており、搭載するかしないかを選択できます。

リア・バッテリーは、24Wh、48Wh、72Whの3種類が用意されており、自分で交換可能です。

フロントに32Wh、リアに72Whのバッテリーを搭載すれば、合計104Whものバッテリーを搭載できることになり、通常のモバイルノートPCの2倍以上となります。


フロント・バッテリー + リア・バッテリーを搭載

 

ただし、72Whのバッテリーを搭載すると、底面から出っ張るためご注意下さい(48Whバッテリーは未確認ですがおそらく出っ張ります)。


72Whのバッテリー(おそらく48Whも)出っ張りがある

 

光学ドライブはなし

ThinkPad P52sには光学ドライブが搭載されていません。必要な場合は、外付け光学ドライブをご活用下さい。


光学ドライブはなし

 

液晶ディスプレイのチェック

液晶ディスプレイのチェックです。

今回はフルHD液晶の特性について紹介します。

搭載されていた液晶の型番は「N156HCA-EAA」でした。ただし、他の型番の液晶が搭載される可能性もあります。

視野角は良いです。


視野角(斜めから見たときの見やすさ)

 

カラーマネージメントツールによるガンマ補正曲線を確認すると、どの色も揃っており、自然な発色であることが分かります。


 

色域はやや狭いです。モバイルワークステーションと名付けられているのであれば、もう少し広い色域の液晶が良かったです。


ガモット図
※ i1 Display PROでICCプロファイルを作成後、MacのColorSyncユーティリティでグラフを作成

 

画素形状は下図の通りです。ギラつきは感じません。


画素の拡大図

 

非光沢液晶であるため、画面への映り込みは低減されています。


画面への映り込み

キーボードおよびタッチパッドのチェック

キーボードとタッチパッドのチェックです。

当サイトの計測では、キーピッチが19x19mm、キーストロークが約2.0mm弱です。キートップは湾曲しており、底付きの衝撃も少なく押しやすいです。「@」や「*」など一部小さいキーもありますが、打ちやすいキーボードです。

タッチパッドの操作性も良く、トラックポイントによる操作も快適です。


キーボード全体図

 

パフォーマンスのチェック

パフォーマンスのチェックです。

ThinkPad P52sは、Quadro P500を搭載している点が最大の特徴ですが、次のような方に最適です。もし、ゲームをしたい方、CUDAによるGPU演算に対応したアプリを使う方などはGeForceを搭載したPCがいいでしょう。

Quadro P500を選択するといい人

3D CG、CADなどのOpen GLを使ったアプリケーションを使う方

10bitカラー表示を行い、画像編集やRAW現像を行いたい方

 

本製品で計測したベンチマーク

それでは、各種ベンチマークスコアを下に掲載します。

ここでは、グラフィックス以外ほぼ同じであるThinkPad T580で計測したベンチマークスコアも掲載します。CPUが異なるので正確な比較はできませんが、参考にはなると思います。

CINEBENCH R15
CPU性能の評価 ~

P52sのCPU性能は、XeonやHシリーズのCoreプロセッサーに比べると見劣りしますが、なんとかクリエイティブな作業もこなせる性能です。

P52s(Core i7-8650U、Quadro P500)
T580(Core i5-8350U、GeForce MX150)

SPECviewperf 13
グラフィック(プロフェッショナル向け)性能の評価 ~

グラフィックスの性能は、3dsmax-06やmaya-05などのテストはMX150のほうがスコアが高かかったですが、catia-05やsnx-03(Siemens NX)、sw-04(Solidworks)などの多くのテストに関してはQuadro P500のほうが高いです。ただ、それほど高いスコアではないため、負荷の高い作業は難しいと思います。

P52s(Quadro P500)
T580(GeForce MX150)

3DMark
~ グラフィックス(ゲーム向け)の評価

DirectXを用いたゲームについては、やはりGeForce MX150のほうが高いスコアでした。Quadro P500はゲームをするにはスペック不足です。

P52s(Quadro P500)
T580(GeForce MX150)

Adobe Premiere Proによる書き出し時間

Adobe Premiere Proの書き出しはCUDAを用いて高速化できるため、CUDAコア数の多いGeForce MX150の方が高速でした。

  P52s
Core i7-8650U
Quadro P500
T580
Core i5-8350U
GeForce MX150
書き出し時間 4分27秒 3分25秒
※ 4K動画(約2分)に、「テキスト(ブラー付)」+「RGBカーブ補正」+「シャープ」+「自然な彩度」のエフェクトおよびBGMとなるオーディオを加え、H.264形式、YouTube 1080p HDのプリセットで書き出したときの時間

TMPGEnc Video Mastering Works 6によるエンコード時間

P52sに搭載されているCore i7-8650Uでのx265によるエンコード時間が、Core i5-8350Uより遅かったです。

  P52s
Core i7-8650U
Quadro P500
T580
Core i5-8350U
GeForce MX150
x265でエンコード (※1) 31分05秒 25分42秒
NVENCでエンコード (※2)
QSVでエンコード (※3) 3分16秒 3分17秒
XAVC Sの動画(約2分、4K)をH.265/HEVCへ変換
※1 "4K"や"8K"にも対応したx264の後継のエンコーダー。エンコードは遅いが画質が綺麗
※2 NVIDIAのKeplerコア以降のGPUに搭載されるハードウェアエンコーダー
※3 CPU内蔵のハードウェアエンコーダー

 

エンコード中のCPUクロックを確認してみると、4分後あたりから、Core i7-8650Uの割にはやや低めのクロックで動作していました。長時間負荷のかかる処理は苦手のようです。

エンコード中のCPUクロック

CrystalDiskMark 6(SSD)
~ 内蔵ストレージ性能の評価 ~

今回、PCIe SSDを搭載していたため高速です。ただし、シーケンシャルリードが3,000MB/sも出るようなSSDではありませんでした。

256GB SSD

CrystalDiskMark 6(SDカード)
~ SDカードスロット性能の評価 ~

カメラユーザーは、SDカードスロットの速度も気にするかと思いますが、速度は普通です。なお、UHS-Ⅱには対応していません。

UHS-Ⅰ対応カード

 

グラフィックスの仕様

ThinkPad P52sのQuadro P500の仕様です。


Quadro P500の仕様

質量のチェック

ThinkPad P52sの質量のチェックです。

本製品は、フロント・バッテリーの有無と、リア・バッテリーの種類によって大きく質量が変わります。当サイトにて計測した結果は、下表の通りです。Quadroを搭載したPCとしては、重くはないと思います。

当サイトによる質量の計測値
フロント・バッテリー リア・バッテリー 質量
なし 24Wh
48Wh
72Wh
あり(32Wh) 24Wh 2.009kg
48Wh
72Wh 2.206kg

 

バッテリー駆動時間のチェック

バッテリー駆動時間をチェックします。

本製品は、フロント・バッテリーの有無と、リア・バッテリーの種類によって大きく質量が変わります。

当サイトによる実測値は下表の通りです。72Whのリア・バッテリーを搭載しているときは、非常に長い駆動時間です。

バッテリー駆動時間
フロント リア テスト内容 バッテリー駆動時間
32Wh 24Wh PCMark 8 Home※1
PCMark 8 Work※2 6時間07分
動画再生時 ※3
72Wh PCMark 8 Home※1
PCMark 8 Work※2 9時間23分
動画再生時 ※3 13時間31分
※画面輝度は約120cd/m2、電源モードは高パフォーマンス
※1 ブラウザでのショッピング/大量の画像閲覧、文書作成、画像編集、ビデオチャット、軽いゲームなどを実行

※2 ブラウザでのショッピング/大量の画像閲覧、文書作成、表計算、ビデオチャットなどを実行
※3 ローカルディスクに保存した動画(解像度:720x480)を連続再生

 


 

以下、静音性、パーツの温度、表面温度、消費電力を計測していますが、搭載するパーツの種類によって結果は変わります。

静音性のチェック

動作音(静音性)のチェック結果です。

動作音は低めです。


騒音値の計測結果
計測機器:リオン NL-42K
部屋を極力無音にしたときの騒音値:20.0dB

※無響室で測定したわけではないので、数値は不正確です
※選択したCPUやGPUが異なると騒音値は変わってきます
【PCの状態】
左から1番目:アイドル時(何も操作していない状態)
左から2番目:Premiere Proで、4K動画にエフェクトをいくつかかけてプレビューした時
左から3番目:TMPGEnc Video Mastering Works でエンコード時(x265)

 

参考までに、当サイトで使用している騒音計が表示する騒音値の目安を掲載します。

使用計器の騒音値の目安
20dB
ほぼ無音
21~25dB
PCに近づかないと音が聞こえないレベル
26~30dB PCから少し離れても音が聞こえるレベル
31~35dB 静かな扇風機くらいの音
36~40dB PCの近くにいると、ややうるさく感じるレベル
41~45dB 風量を上げた扇風機くらいの音。一般的なデスクトップPC音
46~50dB 一般的なエアコン音くらい。うるさい
50dB以上 エアコンをハイパワー運転にしたような音。とてもうるさい
※筆者の感覚です。感じ方には個人差があります

パーツの温度のチェック

温度のチェック結果です。もし、あまりにも温度が高いと、パーツの寿命や動作の安定性に影響します。

今回、温度を計測しているHWMonitorのソフトを起動すると、CPU使用率がかなり上がってしまったため、アイドル時などの温度は計測していません。CPU使用率がほぼ100%になるエンコード時のみ温度を計測しましたが、"やや低め~普通"の温度です。


 

表面温度のチェック

表面温度のチェック結果です。もし、表面温度が高すぎると、作業中に手のひらが熱くなり、不快になります。

普通の温度です。


消費電力のチェック

消費電力のチェック結果です。数値は変動しますが、確認できた最も高い数値を掲載しています。

Quadro P500を搭載していますが、高い消費電力ではありません。


 

外観のチェック

外観のチェックです。

ボディは、ThinkPad T580とほぼ同じです。

 

天板です。

 

スピーカーは底面に配置されています。ややこもった感じはありますが、最大音量は大きいです。勝手に点数をつけると、10点満点で5~6点の音質です(普通が5点で、筆者の独断の評価です)。

 

液晶は約180度開きます。

 

その他のインターフェースは下図のようになっています。光学ドライブはありませんが、主要なポートは揃っています。“Slide-to-connect switch”を搭載した新しいドッキングステーション(ThinkPad Ultra Docking Station)などにも対応しています。

 

65WのACアダプターで、USB Type-Cポートに接続します。

 

まとめ

以上が、ThinkPad P52sのレビューです。

Quadro P500を搭載したモバイルワークステーションです。3D CAD、3D CG制作を、外出先や別の部屋でも行いたいような方に適した製品です。

ただし、Quadro P500はそれほど高い性能ではないため、あまり負荷の高い作業は難しいでしょう。

大容量バッテリーを積めば、バッテリー駆動時間も非常に長いです。

今回、フルHDの液晶でしたが、色域があまり広くありませんでした。せっかく色の表現力の高いQuadroを搭載しているのに勿体ないです。4K液晶も試してみたかったですが、今回は未テストです。

詳細・購入はこちら

【公式サイトはこちら】
レノボ(ThinkPad P52s)

 

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