ナナオ EIZO FlexScan EV2336W-FSの実機レビュー
ちらつき低減で眼に優しい
EIZO FlexScan EV2336W-FS(以下、EV2336W-FS)は、"ちらつき"を感じない23型液晶ディスプレイです(中~高輝度のみ)。
従来製品では「PWM調光」を採用していましたが、この方法は、バックライトが周期的にオン/オフを繰り返すため、稀にちらつきを感じる方がいました。
一方、本機は、低輝度時に「PWM調光」を、中~高輝度時に「DC調光」を使用しています。「DC調光」はバックライトがオンのままであるため、"ちらつき"が発生しません。当サイト調べでは、最大輝度から約55cd/m2の低めの輝度までDC調光が使用されていました。
ちらつきがないことに加え、ギラつきも少なく視野角も広い画面です。また、昇降やピボット可能なスタンドを搭載し、見やすい位置にモニターを調節できます。仕事で長時間使用する方に適した製品だと思います。
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EIZOダイレクト
※レビュー機は当サイトでの購入製品です
基本スペックのチェック
基本スペックのチェックです。
特徴は、IPS液晶であるという点と、昇降・ピボット可能なスタンドを搭載している点です。超解像技術やダイナミックコントラスト機能など、動画やゲーム向けの機能は搭載していません。
製品名 | ナナオ EIZO EV2336W-FS |
---|---|
サイズ | 23.0型ワイド |
解像度 | 1920x1080 |
表面処理 | 非光沢 |
パネル方式 | IPS |
応答速度 | 中間階調域:6ms |
コントラスト比 | 1000:1 |
入力端子 | DVI-D×1 D-sub×1 DisplayPort×1 |
スピーカー | 1.0W+1.0W(ステレオ) |
位置調節 | 昇降:195mm チルト:30° スウィーベル:右172°、左172° |
消費電力 | 最大:47W 標準:16W |
最大輝度 | 250cd/m2 |
重量 | 6.3kg |
特徴 - チラつきを低減
従来製品(EV2335W)は、周期的にバックライトのオン/オフを繰り返し、この長さの割合を変えることで明るさを変化させる「PWM調光」を採用しています。オン/オフの周期は約200Hz(1秒間にオン/オフを200回繰り返す)と高速であるため、通常の人は常時点灯しているように見えます。しかし、このオン/オフの繰り返しが"ちらついている"と感じる人も稀にいるそうです。特にLEDバックライトの液晶は、残光時間が短い(オフにすると光がすぐに消えやすい)ため、ちらつきを感じる方が多いようです。また、ちらついているとは感じなくても、目が疲れやすく感じたり、体に違和感を感じる方もいるそうです。
一方、素子に流す電流を増減させることで、明るさを変える「DC調光」という方式もあります。こちらは、バックライトを常時オンのまま明るさのみを変えるため、ちらつきは発生しません。しかし、あまり低輝度にできないという欠点があります。
そこで、新製品のEV2336W-FSは、「PWM調光」と「DC調光」を組み合わせたハイブリッド方式の「EyeCare調光」を初めて採用しました。
以上の詳しい説明は、他メディア様の記事をご参照ください。
PC Watch - ナナオ、ちらつきを低減したスタンダード液晶5機種
ITmedia - ブルーライト対策だけでは不十分?――ナナオが「PC画面と疲れ目の関係」を調査 (1/2)
本記事では、ナナオが行っていたのと同じテスト方法で、ちらつき具合を確認してみました。テストは、液晶ディスプレイの前に、一定周期で回転する扇風機を設置し、モアレ(干渉縞)の発生を確認します。液晶ディスプレイのバックライトがオン/オフを繰り返す「PWM調光」の場合、扇風機の羽の回転周期とのズレによってモアレが発生します。逆に液晶ディスプレイのバックライトが常時オンの場合、モアレは発生しません。
新製品のEV2336W-FSと、従来製品のEV2335Wおよび、売れ筋のFS2333、そして他社の売れ筋の三菱 RDT234WXで、輝度を中間値にしてテストしてみたところ、EV2336W-FSのみモアレが発生しませんでした。
EV2336W-FSおよび他製品のちらつき確認
次に、輝度設定をいくつまで下げると「PWM調光」に切り替わるかをテストしました。またそのときの輝度(cd/m2)をi1 BASIC PROで計測しました。輝度設定100からどんどん下げていったところ、輝度設定18(約55cd/m2)でモアレが発生しているように感じました。ネットを検索しても、最大輝度の20%以下で「PWM調光」になるという記述があります。
通常の場合、約120cd/m2の輝度で使われることが多く、やや暗めの画面が好きな方でも、約80cd/m2で使用する方が多いです。輝度設定18のときの明るさ:約55cd/m2という数値はわりと低い輝度であるため、通常の方は「DC調光」が使われる場合が多いと思います。
ただし、輝度をかなり低く設定するのが好みの方も割といます。そういった方には本機能は役立ちません。
いくつの輝度までDC調光かを確認
画質のチェック
EV2336W-FSの画質をチェックします。見た感じでは、EV2335Wと同じパネルだと思います。
ギラつきが少なく、視野角も広く、さらにちらつきも低減されているということで、かなり見やすい液晶だと思います。
正面の画像
ガンマ補正曲線のチェック
若干、青色が下げ気味の調整です。初期状態では、かなりわずかですが青っぽいと感じました。なお、EIZOの液晶ディスプレイはガンマ値などを個別に調整して出荷されています。ただし、それでも若干の個体差がありますので、ご了承ください。
ガンマ補正曲線
※ i1 BASIC PROで計測。目標値は輝度:120、白色点:CIEイルミナントD65、ガンマ値:2.2
色域のチェック
広域を謳っていない一般向けの液晶ディスプレイの中では、色域は広いほうです。
ガモット図(a*b*平面)
左図はsRGBとの比較で、右図はadobe RGBとの比較
※ i1 BASIC PROでICCプロファイルを作成後、ICCViewでグラフを作成
画素のチェック
次は、画面をマイクロスコープで拡大した図です。画面を確認してもギラツキを感じません。
画素の拡大図 ※マイクロスコープ(FS-SST240 )で撮影
視野角のチェック
IPS液晶であるため視野角は良いです。
視野角
アプリによって画面設定を変更可能
EV2336W-FSは、「Movieモード、sRGBモード、Paperモード」という3つの表示モードと、自由に設定できる「User1モード、User2モード」が用意されています。「Movieモード、sRGBモード、Paperモード」は色温度やコントラストが用途に合うように適切に調整されています。
また、「ScreenManager Pro for LCD」のソフトを使用すれば、アプリケーション毎に表示モードを変更できます。設定したアプリケーションをマウスで触ってアクティブにすると、表示モードが自動で切り替わります。
詳細は、EV2335Wのレビューをご覧ください。
外観のチェック
EV2336W-FSの外観のチェックです。
正面画像
背面画像です。
背面画像
昇降やチルトが可能で、自分の好きな位置・向きに画面を調正できます。
昇降
昇降スタンド
チルト
スウィーベルも可能で、左右それぞれ、172°回転します。ほぼ360°回転できることになります。
スウィーベル
ピボット(縦回転)機能も搭載しています。縦長にした本機を並べて、デュアルやトリプルディスプレイにして作業をすることが可能です。
ピボット(縦回転)
入出力端子は、DVI-D、 D-sub、 DisplayPortの3つです。HDMIポートは搭載していないのでご注意ください。
入出力端子
側面にはUSBポートがあります。
入出力端子(側面)
スタンドの背面で、ケーブルをまとめられるようになっています。
ケーブルをまとめられる
従来製品よりもベゼルが薄くなっています。
ベゼルは薄くなった
まとめ
以上が、ナナオ EIZO FlexScan EV2336W-FSのレビューでした。
従来製品のときから、ギラつきが少なく、視野角も広く、昇降やピボットなども可能なスタンドを搭載し、目に優しく作業をしやすい液晶ディスプレイでしたが、今回の新製品では、さらに(DC調光のときは)ちらつきがなくなり、より眼に優しい液晶ディスプレイになったと思います。
筆者は、従来製品でも"ちらつき"は感じませんが、新製品は(DC調光のときは)バックライトの周期的なオン/オフがなくなるというのを知ると、健康に良い気がしてしまい、やはり新製品のほうに惹かれてしまいます。長時間使うことによる眼や体への負担を考えると、新製品は非常に魅力的です。
ただし、カラーマッチングツール(EIZO EasyPIX)に対応していませんので、もしも色調整したいなら、別途「i1シリーズ」などの装置が必要です。
本機は、仕事向けの液晶ディスプレイであるため、HDMIポートを搭載していませんのでご注意ください。ゲームをしたり動画を鑑賞したりするのがメインなら、FORIS FS2333のほうが良いと思います。
EIZOダイレクト - EV2336W-FS |
また、解像度が1920x1200の EV2436W-FS も「EyeCare調光」を採用しておりおすすめです。