ナナオ EIZO FORIS FS2331のレビュー
なんでもできる優等生
品質の高さをウリにするナナオ(EIZO)の一般向け低価格な液晶ディスプレイFORIS FS2331のレビューです。価格は4万円台です。
VAパネルを採用し、カラーマッチングも可能で、デザイナーの入門機としても使える製品です。表示遅延が1フレーム以下とゲームにも向いており、またHDMI端子を2つ搭載している点や、オーバードライブや超解像技術により動画にも耐えうる液晶です。要はなんでも、そつなくこなせる優等生的な製品です。
仕様がEV2334W-Tと似ているので、この製品との比較もします。
見やすさ、綺麗さのチェック
まずは、画面の見やすさや、綺麗をさチェックします。
FS2331のパネルはVAですが、綺麗さを比較するにあたって、TNパネルと比較してみました。
ギラツキはほとんど感じない
FS2331を実際に使ってみた感想ですが、ノングレアというこもとあり、よ~く近くで見るとややギラツキはありますが、20~30cm離して普通に使っている分にはほとんど分かりません。ギラツキは4万円台以下という価格帯では少ないほうです。少なくとも私は全く気になりません(ただし、個人差があるのでできれば実機で確認してください)。
視野角はTN以上IPS以下
視野角については、IPSよりは悪いですが、TNよりは全然良いです。参考までに、手持ちの一般的なTNパネルの液晶ディスプレイと視野角を比較してみました。
TN液晶(右)は、左端が黒(というより黄色)くなって見づらいですが、FS2331(左)はほとんど黒くなっていません。
※FS2331は23.0型、TN液晶は21.5型であるため、FS2331のほうがやや左に長く見えます。
静止画は非常に綺麗
FS2331はVAパネルを使用していることで、特性上、黒色が非常にきれいです。FS2331と、TNパネルの液晶ディスプレイと、夜景の画像を表示させたときの画面を下に掲載します。一般的なTNパネルの液晶は、光が漏れているのに対し、VAパネルのFS2331は、より黒に近いことがわかります。
FS2331のほうが黒が引き締まって見えます。
他にも幾つかデジカメで撮影した画像を掲載します。尚、ディスプレイの設定は、両者とも輝度最大、sRGBモードにしています。デジカメで撮影し画像圧縮している上に、閲覧者の液晶の特性によって画質は変わるため、分かりづらいかもしれませんが、FS2331のほうが階調が滑らかで、色再現性も良いです。
色々設定できて眼は疲れにくい
とりあえず1日12時間、主にPC作業で使用してみましたが、眼は特に疲れを感じませんでした(設定:Paperモード+色温度5000)。2万円程度のTNパネルの液晶ディスプレイも持っていますが、こちらは30分作業すると疲れてきます。
眼の疲れやすさは、部屋の照明と、液晶ディスプレイの輝度と色温度が合っているかで大分変ってきます。輝度は大抵の液晶ディスプレイで調整できますが、安いTNパネルの液晶ディスプレイだと、色温度を調整できないものもあります。そうなるとかなり眼にはきついです。FS2331は色温度を500K刻みで自由に設定できるため、環境にあった値に設定することができます。
FS2331の色温度の設定例です。色温度は4000K~10000Kまで500K刻みで調節可能です。
また、輝度を下げることができても、画面が見にくくなってしまうような液晶ディスプレイもありますが、FS2331は輝度を下げても比較的見やすいです。
選べる表示モード
FS2331は、パソコン、ゲーム、映画などの用途に合わせて表示モードを切り替えることができます。用意されている表示モードは、「Game」、「Cinema」、「Paper」、「sRGB」、「User1」、「User2」です。
Userモードが2つあるのは、カラーマッチング用と、手動調節です。
最近、「Paper」というのが追加され、EV2334W-Tにあった「Text」がなくなったようです。「Paper」は電子書籍用ということで、色温度がかなり低めに設定されています。普段のWeb閲覧はPaperにし、環境によって色温度を変えると良いと思います。
ナナオ(EIZO)の品質が高いワケ
あまり正確性はない話ですし、うろ覚えですが、以前某メーカーのセミナーでこんな話を聞いたことがあります。
「安価な液晶ディスプレイは、どこもパネルは海外製で、品質にそれほど差はない。価格に差がでるのは、製品個体ごとに、ガンマ、色温度などの調整を行っているかどうかだ。2万円以下の激安液晶ディスプレイは何も調整していないので製品個体ごとの品質に差がでるが、優良なメーカーは製品個体ごとに調整し品質がある程度一定である」
どこまで本当かはわかりませんが、少なくともEIZOは製品個体ごとに、ガンマ、色温度、ホワイトバランス、輝度の調整を行い出荷しています。そのため、カラーマッチングをしなくてもある程度の品質は確保されています。
ちなみに、ColorEdgeなどの高級機は、この調整をさらに追い込み、製品完成後の目視検査や、画面の色ムラを均一にするDUE工程なども行っているようです。
見やすさ、綺麗さのまとめ
以上が、画面の見やすさ、静止画の綺麗さのレビューでした。普段、10、20万円もするデザイナー等プロ向けの液晶を使用している人にとっては物足りないと思うかもしれませんが、4万円台の液晶ディスプレイとしてみると非常に画質は綺麗です。特に2万円台で販売しているようなTNパネルと比較すると、その差は歴然です。
また、輝度や色温度をリモコンで簡単に調整できますし、オプション製品のカラーマッチングツール:EIZO EasyPIX を使用すれば、用途に応じで最適な色調整を行うことも可能です。カラーマッチングツールはデザイナーなどのみが色調整に使うものと思っている方が多いと思いますが、「写真鑑賞」、「Webなど一般用途」といった調整も可能で、一般の方にもメリットがあります。
カラーマッチングでは、「写真鑑賞」、「Webなどの一般用途」といった調整も可能
尚、私がFS2331を購入した動機は、すでに持っているEIZO EV2334W-Tと合わせてデュアルディスプレイにしたかったからです。本当は同じ機種が良かったのですが、11月12日にEIZOから新製品のFS2331が発売されるということで、同じVAパネルということもあり購入しました。このとき、カラーマッチングツール:EIZO EasyPIX とセットで買うと1万円位やすくなるので、こちらを購入したのですが、カラーマッチングツールはデュアルディスプレイにするときも便利です。1枚の紙を基準に色調節すれば、ほぼ同じ色で2台の液晶ディスプレイを見ることができるので、眼が疲れにくいです。
ただし、後で気づいたのですが、EIZO EasyPIXによるカラーマッチングはHDMI接続に対応していませんでした。私はDVIとHDMIのデュアルのカードしか持っていないのです。後で購入したいと思います。とりあえず、今はカラーマッチングなしでDVIとHDMIのデュアルで使っています。
EIZO FS2331と、EV2334W-Tとのデュアルディスプレイ。カラーマッチングツールを使えば色を合わせられるので便利。
ただし、本来なら、同じ機種が良いです。画面を横回転させられるEV2333W-Hでもいいかも(HDMI非対応ですが・・)。
動画のチェック - 残像感は普通
FS2331の応答速度は、黒→白→黒が25ms、中間階調域が7msと、スペックだけ見ると、それほど速くはありません。ただしオーバードライブを搭載していることにより、それほど残像感はありません。サッカーの試合や、横に流れるテロップを見てみましたが、特に気になることはありませんでした。TNパネルの液晶とも比較しましたが、特に変わりありません。
ただし、倍速補間機能を持つ液晶ディスプレイやAV用液晶テレビと比較すると、残像感はあります。以前、他社ですが倍速補間機能を持つ液晶ディスプレイを見たことがあります。あれは恐ろしいくらい本当に滑らかでした。動いている物が止まって見えるような、映画のマトリクス状態でした。FS2331はそこまでの滑らかさはありませんが、通常の動画を観るには問題ないレベルです。
尚、EIZOにも倍速補間機能を持つ製品があります。FORIS FX2301TVです。こちらの映像は観たことがありませんが、多分滑らかだと思います。そのうちチェックしたいと思います。
ゲームのチェック
表示遅延が1フレーム以下
ゲームと液晶ディスプレイに詳しい方の記事を引用すると、
引用:http://www.z-z-z.jp/BLOG/log/eid650.html
最近、ゲーム対応に真剣なモニターメーカーとしてはナナオ、テレビメーカーとしては東芝があり、それぞれ表示遅延の少なさをアピールしていますが、今回、ナナオはFS2331の表示遅延を業界最速、約0.13フレームと(消極的に)アピールしています。
ということらしいです。消極的な理由は、「回路的には約0.13フレーム遅延なのですが、VA型液晶の特性で応答速度が描画内容によって幅が出てきてしまうから」とも記載されています。
私は、コンマ何秒が気になるくらいまでゲームが上手くないので、ゲームで遅延を感じたことはあまりないのですが、FS2331は相当遅延が少ないようです。
ちょっとゲームをしてみましたが、体感で遅延は感じませんでした。
超解像技術はちょっときつい
Gameモードにすると、デフォルトだと超解像技術(Power Resolution)が3段階の「2」になっています。超解像技術は映像をくっきり見せる技術ですが、初期設定だとちょっときついです。個人的には設定を「1」にして弱めたほうが好きです。
Gameモードの初期設定は、個人的に強調が強すぎです。
PowerResolutionの設定をデフォルトの2から1へ下げると、控えめな強調になり個人的に好みです。
さらに、暗い映像が多く眼が疲れるゲームは、ガンマをPower2へすると暗い部分が見やすくなります。
EIZO FlexScan EV2334W-Tとの比較
FS2331は、VAパネルを採用しています。おそらく、FlexScan EV2334W-T と同じパネルです。大きな違いは次の表のようになります。
画面 | FS2331 | EV2334W-T |
---|---|---|
ダイナミックコントラスト比 |
10000:1 | なし |
入出力端子 | DVI-D×1 HDMI×2 D-Sub×1 |
DVI-D×1 HDMI×1 D-Sub×1 |
スピーカー | 0.5W+0.5W (ステレオ) |
0.35W (モノラル) |
スタンド | チルト:上20°、下5° | チルト:上25° スウィーベル:左右172° 昇降:60mm |
リモコン | 有 | 無 |
価格(直販点) 2010年11月13日現在 |
44,800円 | 49,800円 |
HDMI端子が2つある
これらの違いの中で注目したいのは、入出力端子と、スタンドです。入力端子について、FS2331はHDMIが2つ接続できます。ゲーム機や、デジタルビデオカメラ、RockTubeのような機器など、HDMIで接続したいものはたくさんあるので、1つでも多いほうがよいです。
機器をたくさん接続すると、切り替えが面倒ですが、FS2331 はリモコンが付属しており、「PC」や「HDMI」のボタンを押せば簡単に切り替えられます。Gameモードや、Cinemaモードの切り替えもこのリモコンから行えます。
MODE(GameやPager、Cinemaなど)や、PC/HDMIの切り替えなど簡単におこなえる
スタンドの高さ調節はできない
FS2331で非常に残念なのは、スタンドの昇降ができない点です。私は座高が高いので、普段EV2334W-Tスタンドを高い位置に上げて使っています。一方、FS2331は高さ調節が全くできません。オプションで良いので高さ調節できるスタンドを用意して欲しかったです。
ただし、このスタンドの分だけ標準価格はEV2334W-Tより安いです。
スピーカーは期待しないほうがいい
FS2331は、EV2334W-Tと比べて、スピーカーがステレオになり、ワット数も0.35Wから0.5Wへ上がりました。と言っても0.5Wというのは少ないほうで、マルチメディア向けの液晶ディスプレイなら3Wは欲しいところでした。
実際に音を確認してみても、一般的なノートパソコンと大差ありません。いっそのことスピーカーを無くして本体価格を下げてくれれば良かったと思います。
外観のチェック
最後に外観のチェックです。
4万円台以下という価格帯の液晶ディスプレイの中では、高級感あるデザインです。枠に触ってみてもズッシリとして、揺れがすくないです。ただし重いです。
前面の横一直線のカラーはシールで、変更可能です。私は青を選択しました。
裏面です。ちょっと素っ気ないです。
裏面の下向きに端子が出ています。
まとめ
まとめると、EIZO FORIS FS2331は、次のようなメリットがります。
こんなあなたにおすすめです。
購入はEIZOダイレクトから可能です。